もうひとりの君を置き去りに

Me-ya

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(………もう少し……後、少しで………)

俺は小さな手を必死で伸ばす。

(…あと、少し………もう少しで……)

届く。

その時。

踏みしめていたはずの崖が崩れ、ソレを掴んだと思った手は空をかき、俺は真っ逆さまに崖を転がり落ちる。

どちらが青空でどちらが地面かも分からなくなるほどに崖を転がり落ち、太い気の切り株に全身を強く打ち付け、失神し………気が付いた時、空は茜色に染まっていた。

「………あ痛………っ!!」

立ち上がろうとして右の足首に痛みが走り、その場にしゃがみ込んでしまう。

-小学5年の夏休み、『無人島でチャレンジ生活!!君も二泊三日の無人島生活を楽しんでみないか?』との文句に興味を惹かれた母親によって強制的に連れてこられた俺-筧悟朗は空を見上げ、夕方………暮れかかる空を見上げて半ベソをかいていた。

夕方の食事を作る為の小枝集めに夢中になりすぎて気が付いたらいつの間にか、皆とはぐれていた。

オマケに崖の上に咲いている花を取ろうとして足を滑らせ、足首を痛めて動けなくなるなんて。

(………最悪だ)

皆に連絡しようにも、携帯はこの島に上陸する前に船の中で小袋に入れて預けてしまっている。

(………最悪だ)

周りは段々と薄暗くなって、恐くなるし。

(………ゆ、幽霊とか出てきたらどうしよう)

風が草や木の枝を揺らす音に、ビクビクする。

大声で泣いて助けを呼びたいが、小学5年で小さい子供じゃないぞというかすかなプライドと、もしかして…大声を出して変なモノが出てきたら…という恐怖に喉がヒリつき、声が出せない。

(…も、もしかして、皆、俺がいない事に気付いてないんじゃ……)

腕時計も携帯と一緒に預けてあるから、今が何時かも分からない。

(………ど、どうしよう……いつまでも見付けてもらえなかったら)

そう思うと、目からポロポロ涙がこぼれ落ちる。

そんな時。

木々が密集している間から白い影がボ~ッと現れ、こちらへ近付いてくる。

(…ヒッ……ゆ、幽霊………っ!!)

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