もうひとりの君を置き去りに

Me-ya

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「……悟朗……悟朗……悟朗ってば」

「……うわっ……誰か………っ」

「………うわ…っ……」

慌てて飛び起きると、そこはいつもの見慣れた俺の部屋。

そして目の前には……………。

「………い…った~………」

……………誰……………?

額を押さえて俺の方を睨んでいるぞくぞくするような美人。

「……いきなり起き上がるなよ……この……石頭……っ」

………オマケにこの美人、口が悪いぞ。

「…すみませんが………どちら様………?」

恐る恐る問いかけた俺に対して、その美人は何が可笑しいのか笑いながら立ち上がり…ついでに俺の頭を小突き…部屋を出て行く。

「…そんな冗談が言えるようなら大丈夫だ…朝食、用意できたぞ、早く来いよ」

……………朝食……………?

そういえば、なんかいい匂いがする。

ていうか、朝食を作ったのか?

…いくら美人だからって知らない人物が作った食事なんか食べられる訳、ないだろうが。

大体、俺はいつも朝は大学へ向かう途中にあるコンビニの珈琲だけで、朝食なんて………。

心の中でブチブチと断る理由を並べ立てながらも、俺は匂いにつられるようにベッドを下りて部屋を出ると、ふらふらと歩いてダイニングヘと辿り着き、その場に固まった。

ダイニングテーブルの上にはふわふわの黄色く輝くスクランブルエッグとカリカリに焼けたベーコン、グリーンサラダにコーンスープ、カットされているオレンジ、先程からいい香りを放っている珈琲、それに何よりバターが染みこんでいる食パン。

ああああああぁぁ~。

俺の目はその食パンに釘付けになり、口の中に溢れた唾を無意識の内に呑み込んだ。

…食パンにバターをたっぷり塗って、オーブンで焼くんだよな~、少し焦げ目が付いているのがポイントで俺好みドンピシャじゃないか。

こんなに俺の好みを知り尽くしているなんて………。

…………………………嫁!!

「………変な事を考えてないでサッサと顔を洗って来い」

熱い想いを込めた俺の視線を軽く受け流すと、美人さんは無表情に俺に指図した。


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