学生時代

Me-ya

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2.バイ、バイ

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-図書室の中はポロポロと人が居て、本を読んだり勉強をしたりしている。

中を見回すと寧音もいつもの窓際の席でいつもの椅子に座り、いつものように参考書を見ている。

その横顔はあの日、昼休みに見た僕の知らない顔で……………。

僕は寧音に声をかける事もできず、図書室の戸口で立ち尽くしている。

寧音は、勉強に集中して僕に気付かない。

参考書を見ている顔を上げもしない。

僕はその場から動く事ができずに、ただ、その場に突っ立って寧音の横顔を見ていた。

その時。

「な~にしてんだよ、こんな所で?」

声と同時に、いきなり後ろから肩を組まれた。

もちろん、こんな事をするのはひとりしかいない。

「………治夫」

「どうしたんだよ、そんな冴えない顔して…あ、さては…振られたな~?」

………笑えない。

今の僕は治夫の冗談に付き合う気分じゃない。

……っていうか、冗談になってないし。

「…………………………」

「………どした?」

何も言わない僕に治夫も真面目な顔になり、僕の顔を覗き込む。

「………何でもない」

今の僕はきっと情けない顔をしている。

そんな顔を治夫に見られたくない僕は、治夫から顔を背ける。

だが、そんな僕の気持ちなど治夫にはバレバレだったようで。

治夫はチラリと図書室の中、勉強をしている寧音を見て口を開く。

「…あまり気にしない方がいいよ」

治夫は親指で寧音を指差し、小声で話し始める。
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