学生時代

Me-ya

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2.バイ、バイ

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「彼女、この前の小テストの成績が思っていた以上に悪かったらしいんだ…二年の時は成績はクラスでも上位だって言ってたけどさ、特進クラスは成績がいい生徒ばかりの集まりだからね…思った以上に成績が伸びないらしくて焦っているみたい…だから、許してやって?」

…………………………なんかムカつく。

いろいろと。

何故、治夫が寧音の現状を詳しく(僕より)、知っているんだ。

何故、治夫が寧音の気持ちを(僕に)、代弁する。

何故、治夫が僕に謝るんだ。

………寧音の彼氏は僕なのに。

でも、そんな事、治夫には言わないし、言えない。

僕のささやかなプライドだ。

「………治夫は?」

だから、僕は別の言葉を口にする。

「………え?」

驚いたような顔をして僕を見る治夫にもう1度、質問する。

「治夫は勉強しなくていいの?」
 
皆、必死で勉強しているのに。

「……俺?……俺は、ほら、頭いいから。焦る必要ないの」

………確かに。

それはそうだけど。

本当の事だけど。

自分で言うかな。

………やっぱりムカつく。

「そんなに落ち込むなって。勉強なら、俺が教えてやるからさ」

治夫は笑って、僕の背中を平手でバシバシ叩く。

………痛い……っていうか、やっぱり治夫って、バカ。

治夫に勉強を教えてもらってどうすんだよ。

意味、ないだろ。

僕が寧音に勉強を教えてもらっているのは、寧音に会う為の口実に決まってんじゃん!

僕にとっては寧音と一緒に勉強=寧音とデートって事なの!!

治夫に勉強を教えてもらっても仕方ないの!!

「………いいよ、治夫は自分の勉強を頑張れよ」

ガックリと脱力した僕は、治夫の申し出を断った。

「大丈夫だって、俺と隼人の仲じゃないか。遠慮するなって!!」

……………だ•か•ら!!

遠慮なんかしてないっつーの!!

まったく。

気付けよ。

変なところで鈍いな。

………っていうか、僕と治夫の仲ってどんな仲だよ。

「………遠慮なんかしてないから」

それより僕は今、ひとりになりたいんだけど…。

そこんとこ、分かってくれないかな。

「ま、い~からい~から、分かってるって」

………ぜってー、分かってねぇ。

「……そんなに人に勉強を教えたいのなら、同じクラスの奴に教えろよ。喜んでもらえるんじゃねーの」

少しヤケクソ気味に(嫌味も込めて)言ってやる。

「バッカだな、頭いいヤツに教えたって面白くないじゃん。そうじゃないヤツに教えて理解させる事が面白いんじゃん」

……………む。

悪かったな。

頭、よくなくて。

本当の事だけど、他人に言われると腹、立つぞ。

「俺に任せとけば大丈夫だって。絶対、成績を上げてやるからさ」

………本当かよ………自慢じゃないけど寧音に勉強を教えてもらっても上がらなかった成績だぜ………不安だな~。

「大丈夫だよ、俺に任せなさい!!」

……その言葉………クラス替えのテスト前に聞きたかった………。
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