学生時代

Me-ya

文字の大きさ
上 下
24 / 151
3.雨やどりの教室で消えた初恋

2

しおりを挟む
その日は昼から雨が降り始め、学校が終わって帰る頃には土砂降りになった。

朝は快晴だった為、ほとんどの者が傘を持って来ていなかったらしく悲鳴を上げていた。

僕はいつも週間天気予報チェックをしている母親に『今日は午後から雨が降ると言っていたから、傘を持って行きなさい』と言われて無理矢理、折りたたみ傘を持たされていた。

お節介な母親に感謝しなきゃ。

(…そういえば、寧音も傘を持ってきてないって言っていたな)

僕は朝、登校している時、寧音が傘を持ってきてなかった事を(こっそりと)確認していた。

そして、昼休みに寧音が友人に傘を持ってきていないと話していた事も(こっそりと)聞いている。

放課後、僕は図書室への道を急いでいた。

今日はいつも僕の側にくっついている治夫の姿も見えない事だし…。

いつものように図書室のドアを開けて、中を覗く。

………あれ?

寧々がいない。

図書室の中は雨のせいか、いつもより人が少ない。

特に寧々はいつも同じ席に座るので、探す必要はない。

はず、なのに。

いつもの席に、寧々がいない。

まだ、教室にいるのかな?

そう思った僕は図書室から離れ、寧々の教室である特進クラスを目指した。

だが…教室の前で扉を開ける手を止め………躊躇ってしまった。

寧々に『傘、持ってきてないだろ?僕、持ってきているから一緒に帰らない?』って声、かけてみようかな、なんて思っていたけど………。

でも…距離を置こうと言われたのに、『今日、傘を持ってきてないだろ?僕、持っているから入っていく?』なんて言ったら、『どうして私が傘を持っていない事を知っているのかしら?…やだ、隼人君ってば、もしかして私のストーカー?』とか、『距離を置こうと言ったのに一緒の傘に入らない?なんて何、考えているのかしら?やだ、隼人君ってば、もしかして私のストーカー?』なんて思われたら嫌だな~。

と思って扉を開けるのを躊躇ってしまったのだ。

(…う~ん…)

…………………………………。

………うん!!

傘だけ寧音に渡して、僕は立ち去ろう…うん、そうしよう。

その方が格好よくない?

寧音も『キャー!!隼人君って格好いい♡』とか、思ってくれそうじゃない?

そう決心すると、深呼吸をひとつして…教室の扉に手をかけた。

-その時。

教室の中から寧音以外の話し声が聞こえてきた。

それも聞き覚えのある声………。

(…どうしてアイツが……………?)

不思議に思い、扉を少しだけ開けて中を覗く。

…………………………………………。
しおりを挟む

処理中です...