僕が玩具になった理由

ずれてゆくこわれてゆく－優紀の章－

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僕と文字眞司が出会ったのは、高校の入学式だった。

その頃にはもう僕は、自分の恋愛対象は男性のみである事を自覚していた。

…小学生の頃、同じクラスの男の子達がテレビの女性アイドルを話題にしたり、同級生の女の子達を意識したりしている中、僕が気になったり意識したりする相手は常に同性である男の子達ばかり。

勿論、最初は悩んだし、女性を好きになろうと努力したけど…全て無駄に終わり…結局、自分の性癖を認識しただけだった。

…だからといって、女性になりたいと思っていた訳でもない。

こんな事は誰にも…当然、家族にも…相談できるはずもなく…僕は自然と、皆と距離を置くようになり…その結果、友人と呼べるような人物を作る事ができず…常に1人でいた僕はクラスの中でも浮いた存在になっていた。

両親も同年代の男の子達とは違う僕より弟の方を可愛がり、僕は放っておかれた。

でも、僕はそれでよかった。

その方が、気が楽だった。

それが…高校の入学式で眞司を初めて見た時…目が離せなくなった。

まるで全身、雷に打たれたみたいな衝撃を受けた。

激しく眞司に惹きつけられた。

…今でもどうしてあれ程、眞司に惹かれたのか分からない。

確かに、新入生の中でも、眞司は目立っていたけど。

背が高く、浅黒い肌、切れ長の目、通った鼻筋。

唇が薄いのが少し酷薄そうに見えるけど、笑うと目尻に若干、皺が寄り眉毛が下がって優しそうな顔になる。

そんな眞司に強く惹かれ、近付きたいと強く願った。

それがどんなに身の程知らずで無謀な事か分かってはいても。

眞司は人気者で、眞司の周りにはいつも人がいた。

反対に僕は地味で目立たず、友人が1人もいない。

まるで正反対。

友人どころか、顔見知りになる事さえ難しい。

いつも皆と距離をおいて1人でいた僕はまず、最近の話題についていけない。

皆が話している内容を聞いても、何を話しているのか、どうして笑っているのか、全く分からない。

僕と眞司に接点なんて、何もない。

おまけに放課後は近所の女子高校生が眞司を見る為に校門に集まってくる。

…僕は知らなかったけど、眞司は中学時代、モテて有名だったらしい。

これでは知り合いどころか、声をかける事さえ難しい。

(友達になるなんて、夢の又夢だな…）

眞司と同じクラスになれたから、もしかしたら知り合い位にはなれるかも…なんて浮かれていた僕はすぐに現実を知り、遠くから眺める事で自分を慰め、満足していた。

－だが、思わぬ事で僕は眞司と親しくなってしまう…。