暗い水の中を壊して逃げていく

Me-ya

文字の大きさ
5 / 48
第1章 昨日までの日常、モノトーンのふたり

5

しおりを挟む
-2年になった時、クラス替えで俺と彰はまたしても同じクラスにはなれず、またまた治朗と同じクラスになってしまった。

(…大丈夫。俺と彰は赤い糸で結ばれているからクラスが別れたくらい屁でもないもんね。寮の部屋は一緒だし)

寮の部屋替えは3年間ないから卒業迄、彰とずっと同室だ。

でも、治朗と視線が合う度、俺の胸には複雑な感情が渦巻いていた。

複雑な感情…治朗と視線が合う度に感じる高揚感と背徳感…。

そして、彰に対する後ろめたさ。

後ろめたさを感じる度に胸がドキドキ、モヤモヤして………。

(治朗は俺を好きなんだ)

その頃には、それは確信に変わっていた。

それまで視線を感じてはいても話しかけてくる事はなかった治朗が、俺と同じクラスになってから頻繁に俺に話しかけてくるようになった。

話しかけられても、俺は無愛想に返すだけ。

なるべく治朗を避けるようにしていたが、同じクラスになった途端、積極的に俺に近付き話しかけてくる治朗。

それは楽しい昼休みも例外じゃなく。

-昼休み。

それは俺と彰がクラスが離れてからいちゃいちゃできる貴重な時間。

いや。

唯一の幸せな時間と言ってもいい。

その貴重な、唯一の幸せな時間さえ、治朗は邪魔をしてくる。

(治朗の俺を見詰める熱い視線に、彰が気が付いたらどうしよう)

最初の頃はその事ばかり気にして、治朗が俺に話しかける度に緊張していたが、彰が治朗の気持ちに気付く様子はない。

いつもと変わらない彰の様子を見て、ホッとすると同時に少し淋しいというか…………信用されているのは嬉しいけど、少し物足りないというか………。

でも、そんな日々を過ごしている内に、治朗が俺の横に居ることが普通になってきた。

治朗は確かに可愛いし、そんな可愛い治朗に好かれて迷惑に思うヤツなんていないだろう。

オマケに治朗と一緒に居ると、皆に羨望と嫉妬の眼差しで見られる。

その事は結構、俺の自尊心と優越感をくすぐった。

だが、そんな日々の中でも治朗は他のヤツと短期間だが、付き合ったりしているのか、相変わらず色々なヤツと噂が流れていた。

その噂を聞く度、噂のヤツと腕を組んでいる姿を見る度、俺の胸は何故かチリチリと痛んだ。

(治朗は俺が好きなはずだろ?)

(何故、そんな奴と付き合っている?)

(何故、そんなヤツと腕を組んでいる?)

治朗とソイツが別れたと聞くとホッとする。

-そして、我に返る。

(何、考えているんだ)

治朗が誰と付き合おうが、腕を組んで歩こうが、別れようが俺には関係ない。

(俺は彰が好きなんだから)

それなのに、この胸のモヤモヤは何だろう。

「ねえ、次の土曜に遊びに行かない?」

治朗に言われて、ドキッとした。

「……え?」

「皆で」

「…あ…ああ…」

(…なんだ…皆でか…)

ホッとしたと同時に、少しガッカリして…そんな自分を心の中で叱咤する。

(…どうして2人きりじゃないと聞いて、ガッカリしてんだよ…おかしいだろ!!)

俺には彰がいるんだから。

(何を意識してんだ…俺は)

「…いいね!…あ、俺、見たい映画があるんだ。それでもいいかな?」

ガッカリした自分を誤魔化す為に、俺はワザとはしゃいだ振りをする。

「なあ、彰………」

彰の方を振り向くと、バチリと視線が合ってしまって、ギクリとした。

(…いつから俺を見ていたんだろう…?)

そう思って焦った瞬間、彰がにっこり笑って口を開いた。

「…ごめん、次の土曜日は僕、用事があるから行けないや」

「…あ、じゃ、彰が行かないんなら、俺も…」

申し訳なさそうに謝る彰に後ろめたさを感じながらもホッとしつつ、彰が行かないのなら俺も断ろうとした時、彰に止められた。

「いいよ、樹生は行きなよ。別に用事、ないんでしょ?」

(用事はないけど、彰がいない時に治朗と一緒はちょっと………)

「…いや、でも、彰が行かないなら…」

「僕に合わせる事ないって。せっかく誘ってくれているんだし」

(う~ん…でも、治朗が………)

「…いや………でも……」

「何、樹生らしくないよ。見たい映画があるんだろ?よかったじゃない」

(……しまった……勢いであんな事、言うんじゃなかった………見たい映画なんてないのに……)

「…う、うん……」

いや、よくはないけど…かといって悪くもないし…。

複雑な気分で頷く。

(いや、別に、悪い事をしている訳じゃないし。皆と一緒に行くわけだし…二人きりじゃないし……彰も行っていいって言っているわけだし……)

自分に言い訳をする俺。

別に後ろめたい事は何もない。

はず。

なのに。

何故、彰に対してこんなにも後ろめたいんだろう。

(…浮気をする訳じゃないし)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

処理中です...