暗い水の中を壊して逃げていく

Me-ya

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第1章 昨日までの日常、モノトーンのふたり

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俺がアイツ…濱塚治朗と出会ったのは、高校の入学式だった。

-高校は男子校で全寮制。

そして嬉しい事に、彰と俺は寮で同室だった。

(やっぱり、俺と彰って赤い糸で結ばれているんだ)

…クラスは離れちゃったけど。

でも、ここならいちゃいちゃしていても、変に思われないし、言われない。

-男子校だからなのか、後輩が先輩に憧れを抱いたり、擬似恋愛なんかも普通にしちゃっているみたいだし。

そりゃ、先生の前でいちゃいちゃする訳にいかないだろうけど…。

でも、彰と堂々といちゃつく事ができる。

それは、俺にとって嬉しいはずの事。

ドキドキ、ワクワクするはず…だったのに…どうしたんだろう…。

…何か…物足りない…。

中学の頃のようなドキドキ感が薄れてきた…みたいな…認めたくないけど、マンネリ化、してきたのかなと悩み始めた頃、ソイツの存在に気が付いた。

存在………というか、視線に。

ソイツ-濱塚治朗。

治朗は女性に間違われる程、可愛い顔をしているので入学した時から皆の注目の的。

男子校の中の貴重なオアシス、掃き溜めの中の鶴と皆が騒いでいた。

2年や3年までが治朗の顔を見に、わざわざ1年の教室まで来るほどに。

だが、俺は治朗が苦手だった。

最初は皆と同じで“可愛い子だな”(でも、俺にとってはもちろん、彰が1番だけどね)位しか思わなかった。

しかし、それから誰かの視線を感じて振り向くと、必ず治朗と目が合う。

最初は気のせいかな、偶然だろうと思っていた。

でも、気が付くと治朗と視線が合う。

気のせいなんかじゃない。

治朗が俺を見ている。

まるで全身を舐めるように。

その時。

俺の中の何かがアイツは危険だと警報を鳴らした。

治朗には近付かない方がいいと。

だから、俺は治朗に近付かないようにして…でも、治朗の動向には気を付けていた。

そして、気が付いた。

多分、他の誰も気が付かなかっただろう。

治朗の行動を注意深く見ていた俺だから気が付いたと思う。

治朗は、治朗と寮の部屋が一緒の會澤惠とデキていたみたいだった。

會澤は前髪を延ばして目元を隠し、黒縁の(今時、そんな眼鏡はないだろうと思うくらい)分厚い眼鏡をかけた地味で目立たない奴だったから、治朗と同室になった時、皆は一斉にホッと安心していた。

治朗と會澤がどうにかなる事はないだろうと。

治朗は、入学当時からいろんな奴と付き合っている噂が流れていたが、その相手は皆、俺みたいな(自分で言うのも何だけど)格好いい部類の人物ばかりだったから、會澤に関しては、皆、一切、ノーマーク。

それからも治朗はいろんな奴と付き合っていると噂が流れたが、會澤と噂になる事はなかった。

影で會澤と付き合いながら、表ではちゃっかり他の奴と付き合い堂々といちゃつく治朗。

(最低な奴)

彰にも治朗は危険だから近付かないようにと何度も注意した。

その度に彰は笑っていたが。

『大丈夫だよ。僕は濱塚のタイプじゃないからね。どちらかといえば、樹生の方が濱塚のタイプじゃないかな』

そう言われてドキリとした俺は、どれほど俺が治朗を苦手で避けているかを彰に熱弁した。

不自然なほどに一生懸命。

そんな俺を不思議そうに見詰めて、彰はポツリとひと言。

『そんなにムキになると、余計に怪しく思われるよ』

勿論、その言葉も思い切り否定した。

彰も『冗談だよ』と笑っていたけど。

だけど。

この不安感と、後ろめたさは何だろう。

何も悪いことはしていないのに。

治朗と視線が合う度に、彰に秘密を持ってしまったように感じるのは。

そう思う度にドキドキするのは。

何故だろう…………………………?
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