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3 ライラックギルド

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 ケーン主従は、冒険者ギルドのドアを開けた。

大国リゾットの王都。さすがに堂々とした建物だった。

そして、一癖も二癖もありそうな冒険者たちで、ギルド内は早朝からにぎわっていた。

「ケーン様、私が並びますので、受注カードでもご覧下さい」

「え~っと、一番長い列で。
あの受付嬢、一番人気ありそうだし」

 受付に並ぶ列の長さは、はっきり差があった。

その差は、明らかに受付嬢のおっぱいの違いだと思われる。
地球基準で美人がほとんどのこの世界で、女性のモテ度は、スタイルでほぼ決まってしまう。

ケーンとしては、ミレーユのような控え目体型も好みだが、彼は負けず嫌い。
どうせなら、人気ナンバーワンと思われる受付嬢に、と決めた。

「心得ました」
 ブラックは最後尾に並ぶ。

周囲の目は、ケーンとブラックに注がれていた。

超弱そうなやつと、超強そうなやつのデコボココンビ。

超弱そうなやつの装備は、見るからに貧弱だし、超強そうなやつの装備は、どう見ても超一流。
弱そうなやつは、偉そうに命令してるし、強そうなやつは、それを許している感じ。

どうなってんの? 

ブラックは、やはりある意味使えなかった。

チートお約束に則り、目立ちたくないというケーンの装備は、初心者にふさわしいものを選んでいるが、自分は超一流冒険者の装備そのままだった。
そのため、悪目立ちしていることに気付かなかった。


 ケーンはクエストの受注カードを、人混みの後ろの方から眺めていた。

彼の視力は超優れており、しかも障害物があっても集中したらその先が見える。

百七十センチそこそこの彼は、冒険者として小柄な方だが、全然問題はない。

ふ~ん……。魔物の討伐依頼、大したことないんだ? 

この中では、オーガジェネラルぐらいかな? 多少遊べそうな魔物。

まあ、ジェネラルがいるぐらいだから、群れを作っているのだろう。

数次第では、時間がかかりそうだ。初心者設定で、範囲せん滅魔法を使うわけにいかないし……。

なんていうことを、ぼんやり考えていた。

そう。見た目超弱そうな彼は、すでに父親に匹敵する能力を備えている。

女に超絶弱いという弱点を克服できたら、現女魔王ぐらい十分ひねりつぶせる。


「キミ、そこはCクラス以上のクエストだよ。
見ない顔だけど、多分初心者でしょ?」
 ケーンは振り向いた。

ドーン、ドーン! 

ビキニアーマーに包まれた、二つのおっぱいが横向きにそびえていた。
その女冒険者の身長は、百八十センチ半ばか。十センチ以上の高低差は、ケーンに味方した。
少し視線を下げたら、迫力のおっぱいが……。

実にいい!

この世界で、スタイルがものをいうことは前記のとおり。よって自信がある女は、幸いなことに自然と露出過多気味になる。

キター! さっそく出会いフラグ立った~!

 この女冒険者、実力はそこそこあると見て取った。おっぱいだけでも、パーティを組む価値あり!
 残念なことに、ギルド内で、女冒険者は一割程度。

 ここはアタックあるのみでしょ!

「そうなんですよ、お嬢さん。
俺は初心者。
まだ登録もできてません!」

「お嬢さん? 
ハハハ、一応Aクラスの冒険者なんだけど。
坊や、邪魔だからどいて」

 あれっ? ケーンはとまどう。
フラグ、折れちゃった? 

いや、わかった! 
ツンデレも定番! 

顔はまあまあだけど、おっぱいは絶対もってして捨てがたい。

ケーンは父親譲りの審美眼を持っていた。そのAクラス冒険者の容貌は、かろうじてストライクゾーン。おっぱいはど真ん中直球!

「なんなら、オーガジェネラルのクエスト、いっしょに受けませんか? 
二人でサクッとやっつけちゃいましょう!」
 ケーンは満面の笑みで誘う。

「はあ? 
キミ、オーガジェネラルって知ってる? 
Aクラスの魔物だよ! 
しかも必ず手下が何頭も付いてる。
初心者が出会ったら逃げの一手。
Aランクの冒険者でも、少数のパーティじゃ微妙。
いいから端の方のクエスト眺めてなさい。
ここはキミなんて、お呼びじゃないの」

「そんなものなの?」
 ケーンはきょとんとして聞く。オーガジェネラルなんて、十歳の時倒したんだけど……。キングはさすがにきつかった。
 倒せるまで、一か月地獄の特訓が必要だった。

「そんなものよ! 
どいて!」
 女冒険者は、左腕でケーンを払いのけようとした。

あれっ? 動かない? 
どうして? 
女冒険者は、Aクラスにふさわしい膂力を持っていたが、ケーンはびくともしなかった。

女冒険者は、意地になって両手でケーンを突き飛ばそうとした。

やはりびくともしない。

ケーンは、はっと気づいた。

そうだった。俺は初心者。

「キャー! 乱暴なんだから……」
 ケーンは、わざとらしく転んだ。

気味が悪くなった女冒険者は、そそくさと去っていった。

ケーンの出会いフラグ一本目は、あえなく折れてしまった。

いいもん! 
俺には巨乳受付嬢が待ってるもん! 

ケーンは、涙目で立ち上がった。

「ケーン様、もうすぐ順番ですが……」
 ブラックの憐みの目がつらかった。

父ちゃん、どうやって女コマしたの? 

ケーンは、父親に秘訣を聞いてみたかった。
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