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4 古代遺跡で拾ったの

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 ブラックの順番が回ってきた。
「新規冒険者登録をお願いしたい」
 ブラックは受付嬢のおっぱいの谷間を見下ろす。ケーン様やケンイチ様は、どうしてあんな脂肪の塊に固執するのだろうと思いながら。
 ブラックは人間の女体に関心ゼロ。
メスペガサスの体には関心百パーセント!

「さようでございますか。
ただいま混雑しております。お食事処のテーブルで、必要書類をご記入ください」
 受付嬢は、そう言って羽ペンとインク壺、書類をカウンターに置く。
「手持ちの筆記用具がありますので」
 ブラックが羊皮紙の書類だけを受け取り、振り向くと……。

 ケーンがしゃがんで床に「の」の字を書いていた。

「ケーン様、これからこれから!
どんま~い!」
 ブラックの慰めに、ケーンの「の」の字はでかくなった。


 クエスト受注で最も込み合う時間。お食事処は閑散としていた。
「住所、未定。年齢……十八歳でいいか……。
得意武器……、なんでもOK。
得意魔法? どうしよう? なんでも使えるけど、目立ち過ぎはよくない。無難に水と風。
職種、魔法戦士でいいかな……」
 ぶつぶつつぶやきながら、ケーンはスイス製の万年筆で必要事項を記入していく。
 注文のお茶を運んできた、中年のおばちゃんが、万年筆を見て目を見張ったこと、ケーンは気づかなかった。

「お客さん、ご注文のお茶です。
失礼ですが、それは何でしょうか?」
 おばちゃんは、好奇心抑えがたくそう聞いた。

「それ?
ああ、万年筆。古代遺跡で拾ったものだよ」
 ケーンはあっさりかわす。

「古代遺跡?
冒険者登録の書類を、お書きですよね?」

「ああ、父ちゃんの形見」
 生きてるけど……。ケーンは心の中でつなげる。

 ブラックは眉をひそめた。ケーン様、言い訳がいい加減過ぎませんか! 今のケンイチ様、殺そうと思っても殺せませんよ!

「さようでございますか。ごゆっくり」
 おばちゃんは、どう納得したのか、ポットとカップを置いて、去って行った。

 ブラックはカップにお茶を注ぐ。ケーンはカップを取って一口。
 マズ! どんな茶葉を使ってるんだよ!

 ケーンはアイテムボックスから、無糖缶コーヒーを取り出し、ぷしゅ、ごくり……。
地球ってすばらしい。しみじみとそう思った。

その様子を観察していたおばちゃんは思う。あれも父親の形見だろうか?
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