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6 青の森
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ケーン主従は、王都の外れにある青の森を訪れた。
冒険者ガイドブックによれば、初心者向きのお勧めポイントらしい。
貧乏な冒険初心者は、ギルド備え付けの図書室で、ひたすらガイドブックの内容を覚えるのが、最初の仕事だという。
ケーンの社会的地位はプリンス。言葉遣いは父親の好みに合わせ、いたって庶民的だが、金なんていくらでもある。
全十巻のガイドブックをあっさり購入し、その意味ではギルド職員を驚かせた。
その定価は共通大金貨五枚。日本円に換算すればおおよそ百万円。庶民の平均的年間収入約半分。
印刷や製紙技術が中世ヨーロッパ並みのこの世界で、書物はきわめて高価だ。
ギルド職員の間ではこう噂されている。
あの初心者たちは、きっとBLつながりだ。
たとえば、どこかの国の騎士と従者の駆け落ち。
もちろん騎士とは、ブラックを指し、従者はケーンを指す。
騎士が従者をご主人様扱いするのは、きっとSM趣味が入っているから。
あのムキムキボディーを、軟弱少年がいたぶりつくす……。
いや~ん、なんだか萌える!
特定腐女子職員に注目されていることは、もちろん二人とも気づいていない。
「ブラック、それはベンベンソウだ。
葉っぱをこすり合わせたら、ベンベンという音がするだろ?
これがペンペンソウの音」
ケーンは丁寧に採集した、二本の草をこすり合わせる。
かすかに音がする。心持ち、ブラックが採集した草より澄んだ音だ。
「私には区別がつかないのですが」
ブラックは申し訳なさそうに言う。
「よく見たら葉っぱの形も違うだろ?
ギザギザ感が強いのはベンベンソウ。
まあいいよ。
俺が選ぶから」
ケーンは超一流の薬師であり、超一流の錬金術師でもあるミレーユから、きっちり仕込まれている。
ペンペンソウなどという、ありふれた薬草は、採集したことはないが、簡単に見分けがつく。
「どうも申し訳ございません」
ブラックは深く頭を下げた。
『採集はいいから、後ろの方、注意してて。
相当な熟練者が、俺たちを見張っている』
ケーンは念話で注意を与える。
「なんですと!」
ブラックは驚いて振り返る。
『こらこら。
殺気はないから放っておけばいい…って、逃げちゃった』
「なんのために我々を?」
「ブラックが気になるんだろ?
若い女の気配だった。
多分シーフか狩人系のスキルを持ってる。
それも超一流。
いいね、ブラックはモテモテで」
すっかりいじけモードのケーンは誤解した。
その女冒険者が見張っていたのは、ケーンだった。
そして、その女のジョブは、ニンジャと呼ばれる上位レアジョブだった。
「ケーン様、ミレーユ様との薬草採集、ペンペン草、採集なさったのでしょうか?
私には記憶にないのですが」
ブラックは、ケーンとミレーユの薬草採集に、何度も付き合ってきた。ついぞ覚えがない。
「ペンペン草はどこにでも生える薬草だ。
薬効は超低いけど。
煮詰めて煮詰めて、やっと下級ポーションの原料になる。
一束二十本で銅貨一枚と書いてあっただろ?
だから他に人がいない」
「なるほど……。それで生活できるものなのでしょうか?」
ブラックは、庶民の生活が厳しいものだと実感。ギルドお食事処で頼んだお茶が銅貨一枚だった。
「キャイン!」
ブラックは、忍び寄ってきたフォレストドッグを蹴殺した。初心者向けの青の森でも、安全とは言えない。庶民や初心者冒険者ならば。
「その辺のところも、勉強しろということ?」
ケーンは採集したペンペン草を束ねる。
「なるほど……。ケーン様は世間知らずのお坊ちゃまですから」
さすが夜の女王様。「若いころの苦労は、買ってでもしろ」という。ブラックはウムウムとうなずく。
「あのさ、いい言葉教えてやる。
オマイウ!」
ペンペン草とベンベン草の区別さえつかないブラックに、言われたくなかった。
冒険者ガイドブックによれば、初心者向きのお勧めポイントらしい。
貧乏な冒険初心者は、ギルド備え付けの図書室で、ひたすらガイドブックの内容を覚えるのが、最初の仕事だという。
ケーンの社会的地位はプリンス。言葉遣いは父親の好みに合わせ、いたって庶民的だが、金なんていくらでもある。
全十巻のガイドブックをあっさり購入し、その意味ではギルド職員を驚かせた。
その定価は共通大金貨五枚。日本円に換算すればおおよそ百万円。庶民の平均的年間収入約半分。
印刷や製紙技術が中世ヨーロッパ並みのこの世界で、書物はきわめて高価だ。
ギルド職員の間ではこう噂されている。
あの初心者たちは、きっとBLつながりだ。
たとえば、どこかの国の騎士と従者の駆け落ち。
もちろん騎士とは、ブラックを指し、従者はケーンを指す。
騎士が従者をご主人様扱いするのは、きっとSM趣味が入っているから。
あのムキムキボディーを、軟弱少年がいたぶりつくす……。
いや~ん、なんだか萌える!
特定腐女子職員に注目されていることは、もちろん二人とも気づいていない。
「ブラック、それはベンベンソウだ。
葉っぱをこすり合わせたら、ベンベンという音がするだろ?
これがペンペンソウの音」
ケーンは丁寧に採集した、二本の草をこすり合わせる。
かすかに音がする。心持ち、ブラックが採集した草より澄んだ音だ。
「私には区別がつかないのですが」
ブラックは申し訳なさそうに言う。
「よく見たら葉っぱの形も違うだろ?
ギザギザ感が強いのはベンベンソウ。
まあいいよ。
俺が選ぶから」
ケーンは超一流の薬師であり、超一流の錬金術師でもあるミレーユから、きっちり仕込まれている。
ペンペンソウなどという、ありふれた薬草は、採集したことはないが、簡単に見分けがつく。
「どうも申し訳ございません」
ブラックは深く頭を下げた。
『採集はいいから、後ろの方、注意してて。
相当な熟練者が、俺たちを見張っている』
ケーンは念話で注意を与える。
「なんですと!」
ブラックは驚いて振り返る。
『こらこら。
殺気はないから放っておけばいい…って、逃げちゃった』
「なんのために我々を?」
「ブラックが気になるんだろ?
若い女の気配だった。
多分シーフか狩人系のスキルを持ってる。
それも超一流。
いいね、ブラックはモテモテで」
すっかりいじけモードのケーンは誤解した。
その女冒険者が見張っていたのは、ケーンだった。
そして、その女のジョブは、ニンジャと呼ばれる上位レアジョブだった。
「ケーン様、ミレーユ様との薬草採集、ペンペン草、採集なさったのでしょうか?
私には記憶にないのですが」
ブラックは、ケーンとミレーユの薬草採集に、何度も付き合ってきた。ついぞ覚えがない。
「ペンペン草はどこにでも生える薬草だ。
薬効は超低いけど。
煮詰めて煮詰めて、やっと下級ポーションの原料になる。
一束二十本で銅貨一枚と書いてあっただろ?
だから他に人がいない」
「なるほど……。それで生活できるものなのでしょうか?」
ブラックは、庶民の生活が厳しいものだと実感。ギルドお食事処で頼んだお茶が銅貨一枚だった。
「キャイン!」
ブラックは、忍び寄ってきたフォレストドッグを蹴殺した。初心者向けの青の森でも、安全とは言えない。庶民や初心者冒険者ならば。
「その辺のところも、勉強しろということ?」
ケーンは採集したペンペン草を束ねる。
「なるほど……。ケーン様は世間知らずのお坊ちゃまですから」
さすが夜の女王様。「若いころの苦労は、買ってでもしろ」という。ブラックはウムウムとうなずく。
「あのさ、いい言葉教えてやる。
オマイウ!」
ペンペン草とベンベン草の区別さえつかないブラックに、言われたくなかった。
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