改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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36 そうだ、ミレーユ的おっぱ…女をさがそう!

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 あれから一年が経過した。

ケーンとユリのバディーは、順調にAランク冒険者の仲間入りを果たしていた。

ただ、Sランクの壁は厚い。五人以内で、S級ダンジョンの踏破をすることが条件だから。

ダンジョンとフィールドの魔物は、全くレベルが違うこと、前述の通りだ。

ケーンはスリルを味わいたいから、装備はほどほどにしている。
ユリは武器以外、神話級の装備をしている。ケーンに「武器はかんべんしてくれ」と頼まれたから。

つまり、普通の上級冒険者と、同じレベルの武器で狩りをしているのだから、S級のダンジョンとはいえ、二人のパーティで踏破することは、簡単でない。

「ケーン様、僭越ながら、今日はこの辺で引き返した方が、よろしいかと思うのですが。
ちょうど転移ポイントですし」
 ブラックは、ぼろぼろになったケーンが見ていられず、そう提案した。

彼とホワイトは、戦利品回収以外手出し無用と命じられている。ケーンはポーション類も、身内が手に入れた範囲で使っている。

一応ブラックとホワイトも、パーティメンバーに登録しているが、実質は二人でダンジョンに挑んでいるのだ。

S級ダンジョン程度なら、ユリの神仕様防具はほぼ完璧だが、相当無理がある。

「だよな~……。
今の実力は情けないけど、生きてるっていう実感がある。
RPGみたいに、レベル数値化されないけど、徐々に力が付いてくる手ごたえがたまらん。
じゃ、帰ろうか」
 ケーンは、冒険と無謀の違いはわきまえている。五階層ごとに設置されている転移ポイントを、利用する気になった。

ちなみに、ダンジョンは光の女神が、冒険者を鍛えるために作ったものであること、前述の通りだ。
冒険者の最低限の安全を保障するため、ダンジョンの外へ帰れるポイントを設けている。


 ケーン一行がダンジョンの外に出たら、四人のパーティが休息をとっていた。

女A級冒険者イグニスの顔も見えた。

「やっぱりケーン達か。
先に進んでたんだ? 
宝箱全部空いてたし、魔物も極端に少なかったから、二階で引き返したんだ」
 イグニスをはじめ、そのパーティは顔見知りぞろいだった。

今ではイグニスたちも、ケーンの実力を認め、誰も変な絡み方はしなくなっている。

「悪かったね。あ~、疲れた」
 ケーンは、崩れ落ちるように腰を下ろした。

「何階まで行った?」
 イグニスが聞く。

「十階」
 ケーンはユリから水筒を受け取り、水を飲んだ。今やユリは、かいがいしい嫁に堕ちている。本人に言わせたら、だが。
傍から見たら好一対。やんちゃな夫を陰ひなたで支える、的な?

「後十階か……。なんか追い越されそうだな」
 イグニスはA級のままだ。Sランク以上は、ダンジョンを制覇しなければならない。

ダブルSランクは、ダブルSダンジョンを、2パーティ十人以内で。
トリプルSランクは、ダブルSダンジョンを、単独パーティで、クリアした者に与えられる勲章だ。
トリプルSダンジョンは、命知らずの趣味人が挑戦する程度。

勇者級のパーティでなければ、まず制覇できない。そして、Sランク以上は、対魔王軍戦に正規軍として参戦する資格を得る、エリート冒険者なのだ。

魔王軍と戦い、功績をあげたら、名誉と一生生活できるほどの富が与えられる。
そして魔族と戦えば、ダンジョン以上の経験値が得られる。

参戦は個人の意思に委ねられるが、ほとんどの冒険者は魔王軍と戦うことを目指している。

「もっと実力をつけなくちゃ。まだまだだよ」
 ケーンは苦笑して応える。ケーンの自己評価によれば、まだまだ人間レベル。事実、Sランクダンジョンで四苦八苦している。だからこそ、戦闘が楽しいとも言えるが。

「まあ、その若さだ。焦らないことだね。
さ、帰ろうか? 
今夜はブラウンだ。
稼ぎは少なかったから、一発だけだぞ」
 そう言って、イグニスは立ち上がる。

ブラウンは小さくガッツポーズを取り、あぶれた二人は、肩を落としてイグニスの後に従った。


「ケーン、もう一人メンバー増やしたらどうや? 
あの女でもええで」
 ケーンは男と組む気はないようだ。今のライラックギルドで、Sランクを目指す女冒険者はイグニスだけだ。

「俺の目的はSランクになることじゃない。
戦って強くなることだ」
 ケーンは力強く答える。

「せやな……。魔王と戦う気はないみたいやし、その必要もない。
のんびり気張っていこか」
 ユリはキキョウから聞いていた。光の女神と夜の女王、そして魔王は、血のつながらない兄弟みたいなものだと。

この世界を創造し、仕事を終えた創造神は、三人にこの世界を託したという。

夜の女王は、三人をこう評している。

光の女神は、気まじめ過ぎて融通が利かないお偉すぎる女。この世界の生物、特にお気に入りの人族をまんべんなく守護するため、現実的な力を持たない、純精神体を選んだ。

魔王は欲深き頑張り屋さん。有限の生と引き換えに、旺盛な生殖能力と、現実的な力を得た。

そして自分は、どうしようもない怠け者だそうだ。永遠の生と現実的な力を持つ代わりに、限られた領地と夜の世界の孤独を選んだ。

彼女の使命一つは、この世界の安全弁。深刻な環境破壊をもたらしかねない魔法や武器使用を監視し、必要があれば排除し続けている。

そんな彼女の初めて抱いた欲が、ケンイチへの愛情だったわけだ。

ケンイチは、魔王との戦いの虚しさを知り、女王の使命に協力する生き方を選んだ。

そんな二人の息子ケーンは、人族の暴走を抑制する必要悪としての、魔王と戦う意欲を持たない。

たとえ当代の魔王と、眷族を根絶やしにしても、数十年後には必ず復活するらしいから。

もっとも、魔王と一族が根絶やしになったことはないそうだが。

この理(ことわり)に気づいているのは、歴史の傍観者である夜の女王と、限られた周辺の者だけだという。

ケーンの嫁であるキキョウやユリ、レミは、その限られた人族の一人だ。
決して口外できない、その秘密を知った嫁たちは、もちろん魔王と積極的に戦うつもりはない。

今となっては、「強くなりたい」という、ケーンの欲求を支えるだけだ。

そのためにユリは戦い、キキョウはより強い力を蓄えている。

魔王の目から見たら、冒険者であるケーンは、敵としか見えない。

ふりかかる火の粉は、払わなければならない。ケーンが、夜の王宮に帰る時まで。


その夜、ケーンは夜伽当番のレミを堪能した。ほとんど戦う力を持たず、平凡そのものの女レミは、一番くつろぐことのできる嫁だ。

ケーンはぼんやり考えた。

ユリの言うことにも一理ある。Sランクにはもうすぐ届くだろうが、それ以上は当分無理だろう。

なにせ二人なのだから。

キキョウを呼び戻すことも考えた。

ダメだ。キキョウはさらに強くなっているはずだ。キキョウの力で引っ張り上げられるのは不本意だ。

ライラックの町で、適当な冒険者はいない。イグニスは実力的に最適だが、欲が強すぎる。
あの女を夜の王宮に迎えたら、王宮の平穏が脅かされかねない。

いくぶん世なれたケーンは、その程度の見識は持ち始めた。

実力的に多少劣っても問題ないか。装備で補えばいいのだから。

よっし! 明日から旅に出よう! 
考えてみたら、俺の本来の目的は嫁探しだった。今の三人でも不満はないが、もう少しなら増えてもいいだろう。

ケーンは、レミの柔らかおっぱいにむしゃぶりついた。キキョウやユリのおっぱいは、まだ固さが残っている。

レミのおっぱいは、お母ちゃんのおっぱいや~! 

ケーンが知っている、どのおっぱいとも違っている。ハハハ、本物の母ちゃんのおっぱい、父ちゃんと熾烈な争奪戦を繰り広げたものだ。

生後一年で、強引に乳離れされてから、あれは父ちゃんだけのものになっちゃったし。

ミレーユは出ないおっぱいを、旅立つまでずっと吸わせてくれた。

バイオレットとガーネットは、どこまでもバイオレンスだったし。

あ~ん、ミレーユのおっぱいが恋しいよ~!

 そうだ、今度はミレーユタイプのおっぱい…、もとへ。ミレーユ的な女を探そう。

新たな意欲とスケベ心が湧いてくるケーンだった。

ケーンのイメージする「ミレーユ的な女」ゲットが、とある事情で、トリプルS獲得以上に困難であること、気付かなかった。
ケーンは、やはり世間知らずのお坊ちゃまだった。
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