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52 ぴっか~~~!
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ケーン一行は、順調に旅を続けていた。夜の女王か、ミレーユに頼んだら一瞬でライラックへ着けるが、旅は「過程を楽しむ」ものらしい。
今旅に加わっていないキキョウも、転移魔法で会える。ライラックで待つ人や特別な用もないのだから、時間に追われる必要は全くない。
「レミ、近くにスライムダンジョンがあるみたいだけど、寄ってみる?」
隣でケーンに体を寄せるレミに聞いてみる。みんな馬車内に飽きたら、御者席で風景を楽しんでいる。
今馬車内では、ユリとテレサが、いちゃいちゃやっているだろう。ケーンは二人の仲の良さに、ちょっぴりやける。
ユリはもともと百合属性だし、テレサはケーンとのエッチと同等に、ユリとラブラブ交流がお気に入りに見える。
「ダンジョン…ですか。ちょっぴり怖いかな」
レミはためらいを見せる。スライムやゴブリンの単体なら、この旅で何度か倒した。
だが、群れを相手にしたら自信が持てない。
「大丈夫だって。レミが傷つくことは、絶対ありえない」
ケーンは当然レミに神装備を与えている。イージスの指輪と首飾り。神話級のモンスターでなければ、魔法も物理攻撃も通らない。
ましてや、冥途逝かずのメイド服で、保険もばっちり。
武器の槍は軽くて扱いやすい初心者向きだが、レミの膂力や技術でも、雑魚モンスターは敵じゃない。
「でも~……」
ケーンと装備を信用しないわけじゃない。だが、レミは全く戦闘向きに生まれていない、心優しき女なのだ。
一匹なら、えい、やー、と、目をつぶって攻撃できるが、全身返り血を浴び、戦うことなんてできそうにない。
「まあ、いいんだけどね」
ケーンは、何のために旅に参加したのと言いたい。だが、フェミニストにつき、嫁を傷つけそうなことは、口が裂けても言えないケーンだった。
「おや?
馬車が故障したのかな?」
往来の半分をふさぐように、馬車が留まっていた。馬を外しているから、深刻な故障かもしれない。
「おい! 止まれ!」
騎士風のおっさんが、立ちふさがった。
ケーンはカチンときた。彼は二人の師匠以外、あんな命令口調の、ぞんざいな言葉をかけられたことはない。
「いいからよけて通れ」
ケーンはブラックとホワイトに命じる。
二頭は騎士風の男を無視し、歩みを進めた。
その男は、びっくりして体をかわした。
「おい! 聞こえないのか!
止まれと言ってる!」
「聞こえな~~~い!」
馬車は悠然と進んだ。
「ふざけるな! ゴメス子爵家の馬車だぞ!
お嬢様が乗っておられる!」
「お嬢様?……うん、俺のレーダに反応はない。
じゃ!」
ケーンは追いかけようとする男を無視し、馬車を進めた。
「ケーンさん、いいんですか?」
レミはまずいのではないかと、ケーンに不安の目を向ける。
「いいの。俺の《いい》女レーダーに反応なし。
性悪お嬢様か、お美しくないお嬢様。それ、間違いないから」
「お嬢様の人間性や容貌は別として……、子爵家、ですよ?」
「それが何か?
あんな礼儀知らずが家臣なんだ。
ろくな貴族じゃないことも決定!
ブラック、ホワイト。少し速く進もう」
「ひひぃ~~ん《御意》」と、馬語で応えるブラックだった。
「ケーンさん、さっきの騎士、馬で追いかけてきます!」
レミは振り返りながら言った。
「ちっ、しょうがね~な。ブラック、止まれ」
「ひひぃ~~ん《御意》」とブラックは馬語で応え、駆け足を止める。
「おのれ~~~! 無礼者め!」
騎士風の男は、御者席のケーンに、槍で突きかかった。
ケーンは槍をかわし、ぐわしっと柄を握る。そのまま引っ張ると、バランスを崩した男は落馬。
「無礼者はお前だろうが!
この馬車には畏れ多くも、聖神女様が乗っておられる!」
ケーンは、超はったりをかます。聖神女は極秘扱い。「もどき」でもバレるわけがない。
「聖神女様だと? 光の神殿の馬車には、太陽の紋章施されているはず。
わしを愚弄する気か!」
尻もちをついたままで、騎士風の男が、怒気をいっそうあらわに。
「しのびである!
光の神殿の怒りを買うぞ!」
「そんなのウソに決まっておる!
どうしても本物の聖神女様だと言い張るなら、馬車から下りろ!」
「後悔するな!
テレサ様、ローブを脱いで、下りていただけますか?」
ケーンは馬車内に話しかける。
えっ……。ピキーンと固まるテレサだった。
「大丈夫。光のレオタード効果、信用できるから」
ケーンの悪乗りに、乗る気満々のユリだった。
「信用できないわけじゃないですけど……。
バレないかな?」
「大丈夫、大丈夫。
そんなに心配だったら、魔力通わせたら?
当分視力が戻らんやろけど、あんな野蛮なやつ、それぐらいのお仕置き、罰は当たれへん」
「はい……」
全然気乗りしないまま、馬車を降りようとするテレサだった。
ユリは素早くスケベサングラスをかけて、テレサの後に続く。
テレサは魔力を光のレオタードに通す。
ぴっか~~~!
「ぎゃ~~~!」
あまりのまぶしさに、騎士風の男は目を抑えてうずくまる。
「テレサ、どんだけ魔力通したんや!」
スケベサングラスをかけたユリでさえ、目が痛いほど。
「ご、ごめんなさい!
やっぱり恥ずかしくて、つい……」
「下郎! 思い知ったか!
これが天罰だと知れ!
ブラック、ゴー!」
ちょっとやりすぎだったかも。ひょっとしたら、失明しているかもしれない。
ちょっぴり後悔しながら、逃走を図るケーンだった。
今旅に加わっていないキキョウも、転移魔法で会える。ライラックで待つ人や特別な用もないのだから、時間に追われる必要は全くない。
「レミ、近くにスライムダンジョンがあるみたいだけど、寄ってみる?」
隣でケーンに体を寄せるレミに聞いてみる。みんな馬車内に飽きたら、御者席で風景を楽しんでいる。
今馬車内では、ユリとテレサが、いちゃいちゃやっているだろう。ケーンは二人の仲の良さに、ちょっぴりやける。
ユリはもともと百合属性だし、テレサはケーンとのエッチと同等に、ユリとラブラブ交流がお気に入りに見える。
「ダンジョン…ですか。ちょっぴり怖いかな」
レミはためらいを見せる。スライムやゴブリンの単体なら、この旅で何度か倒した。
だが、群れを相手にしたら自信が持てない。
「大丈夫だって。レミが傷つくことは、絶対ありえない」
ケーンは当然レミに神装備を与えている。イージスの指輪と首飾り。神話級のモンスターでなければ、魔法も物理攻撃も通らない。
ましてや、冥途逝かずのメイド服で、保険もばっちり。
武器の槍は軽くて扱いやすい初心者向きだが、レミの膂力や技術でも、雑魚モンスターは敵じゃない。
「でも~……」
ケーンと装備を信用しないわけじゃない。だが、レミは全く戦闘向きに生まれていない、心優しき女なのだ。
一匹なら、えい、やー、と、目をつぶって攻撃できるが、全身返り血を浴び、戦うことなんてできそうにない。
「まあ、いいんだけどね」
ケーンは、何のために旅に参加したのと言いたい。だが、フェミニストにつき、嫁を傷つけそうなことは、口が裂けても言えないケーンだった。
「おや?
馬車が故障したのかな?」
往来の半分をふさぐように、馬車が留まっていた。馬を外しているから、深刻な故障かもしれない。
「おい! 止まれ!」
騎士風のおっさんが、立ちふさがった。
ケーンはカチンときた。彼は二人の師匠以外、あんな命令口調の、ぞんざいな言葉をかけられたことはない。
「いいからよけて通れ」
ケーンはブラックとホワイトに命じる。
二頭は騎士風の男を無視し、歩みを進めた。
その男は、びっくりして体をかわした。
「おい! 聞こえないのか!
止まれと言ってる!」
「聞こえな~~~い!」
馬車は悠然と進んだ。
「ふざけるな! ゴメス子爵家の馬車だぞ!
お嬢様が乗っておられる!」
「お嬢様?……うん、俺のレーダに反応はない。
じゃ!」
ケーンは追いかけようとする男を無視し、馬車を進めた。
「ケーンさん、いいんですか?」
レミはまずいのではないかと、ケーンに不安の目を向ける。
「いいの。俺の《いい》女レーダーに反応なし。
性悪お嬢様か、お美しくないお嬢様。それ、間違いないから」
「お嬢様の人間性や容貌は別として……、子爵家、ですよ?」
「それが何か?
あんな礼儀知らずが家臣なんだ。
ろくな貴族じゃないことも決定!
ブラック、ホワイト。少し速く進もう」
「ひひぃ~~ん《御意》」と、馬語で応えるブラックだった。
「ケーンさん、さっきの騎士、馬で追いかけてきます!」
レミは振り返りながら言った。
「ちっ、しょうがね~な。ブラック、止まれ」
「ひひぃ~~ん《御意》」とブラックは馬語で応え、駆け足を止める。
「おのれ~~~! 無礼者め!」
騎士風の男は、御者席のケーンに、槍で突きかかった。
ケーンは槍をかわし、ぐわしっと柄を握る。そのまま引っ張ると、バランスを崩した男は落馬。
「無礼者はお前だろうが!
この馬車には畏れ多くも、聖神女様が乗っておられる!」
ケーンは、超はったりをかます。聖神女は極秘扱い。「もどき」でもバレるわけがない。
「聖神女様だと? 光の神殿の馬車には、太陽の紋章施されているはず。
わしを愚弄する気か!」
尻もちをついたままで、騎士風の男が、怒気をいっそうあらわに。
「しのびである!
光の神殿の怒りを買うぞ!」
「そんなのウソに決まっておる!
どうしても本物の聖神女様だと言い張るなら、馬車から下りろ!」
「後悔するな!
テレサ様、ローブを脱いで、下りていただけますか?」
ケーンは馬車内に話しかける。
えっ……。ピキーンと固まるテレサだった。
「大丈夫。光のレオタード効果、信用できるから」
ケーンの悪乗りに、乗る気満々のユリだった。
「信用できないわけじゃないですけど……。
バレないかな?」
「大丈夫、大丈夫。
そんなに心配だったら、魔力通わせたら?
当分視力が戻らんやろけど、あんな野蛮なやつ、それぐらいのお仕置き、罰は当たれへん」
「はい……」
全然気乗りしないまま、馬車を降りようとするテレサだった。
ユリは素早くスケベサングラスをかけて、テレサの後に続く。
テレサは魔力を光のレオタードに通す。
ぴっか~~~!
「ぎゃ~~~!」
あまりのまぶしさに、騎士風の男は目を抑えてうずくまる。
「テレサ、どんだけ魔力通したんや!」
スケベサングラスをかけたユリでさえ、目が痛いほど。
「ご、ごめんなさい!
やっぱり恥ずかしくて、つい……」
「下郎! 思い知ったか!
これが天罰だと知れ!
ブラック、ゴー!」
ちょっとやりすぎだったかも。ひょっとしたら、失明しているかもしれない。
ちょっぴり後悔しながら、逃走を図るケーンだった。
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