改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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77 総子のレベリング

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 ケーンとキキョウは、ペガサス夫婦に騎乗し、魔王軍国境沿いを空から偵察。

 ペガサスの飛行速度に、追いつける魔物はいない。偵察だけなら安全に遂行できる。

『マジで軍を退いたみたいだな』
『そのようですね』
 ケーンとキキョウは、念話をかわす。

国境の山の向こうには、警備兵と思われる部隊が砦に残るのみ。人族の追撃を恐れ、かなりの数が残っているが、侵攻に耐えられる数とは思えない。

『ヒカリちゃん、どうする?』
 ケーンは、天上界のヒカリちゃんに、念話で話しかける。ヒカリちゃんと情を通じ、ケーンはそれが可能となった。

『専守防衛に努めます。
あなたの母ちゃんの言う通り。
魔王軍との戦いは虚しいと悟りました』

『まあ、それでいいんじゃないの?
しばらくジャニスと総子のレベリング、クオークでやって帰ることにする』
『わたくしは、聖神女システムを改革します。
あなたに軽蔑されないよう頑張ります!』
『ヒカリちゃんは、頑張りすぎる子だから。
ほどほどにね』
『はい! ありがとうございます。
愛しの旦那様!』
 ほっこりアツアツのやりとりだった。

 いや~ん! 頑張りすぎる「子」だって!

 交信を終え、身もだえる光の女神だった。


 ケーンとキキョウは、クオークに帰り、テントの中で作戦会議。
 ケーンは偵察の結果と、ヒカリちゃんの腹の中を嫁たちに語る。

「今回の侵攻は、叩き潰せた。
そう考えてええんやな?」
 ユリが念を押す。

「そう考えていい。
ただ、魔族や人族兵が残した武器や防具、魔物たちがたくさん拾ってる。
武器や防具によっては、数倍力を持ったと考えるべきだ。
サイズフリーの付与がかかった防具もあるから、オークやリザードマン、オーガなんかは、超厄介な敵になる」

「ケーン様は、ジャニスちゃんと総子ちゃんのレベリング、それと武器防具狩りを考えてます。
レミさんは通いになりますが、ジャンヌちゃんとテレサちゃんがいるから問題ないですね?」
 キキョウが、ただ一人戦力外のレミに言う。元聖神女のジャンヌは固(もと)より、テレサも聖神女の格と能力を得た。したがって、テレサも転移魔法を自由に使える。

「私だけ平和にのんびり暮らせて、少し気が引けますが、問題ないです」
「だからレミは安らげるんだよ」
 ぎゅっとレミの体を抱き寄せるケーンだった。

 ケーンと嫁のファミリーは、強固な絆を確立していた。


 ケーンとテレサは、総子のレベリングのお付き合い。解体係としてブラックも付く。
 キキョウとユリは、ジャンヌのレベリングのため別行動。ホワイトが付いている。

「総子、武装オーガの群れだ!
大丈夫?」
 クオーク平原のど真ん中、テレサの魔法によって転移したポイントは、オーガの群れの近くだった。
転移魔法陣は、数分間強固な結界となるので、無防備のまま敵に囲まれる事態にはならないが、今はそれに近い状況だ。
「二十頭はいそうですね。
テレサさん、バフはかけないでください」
 そう言って総子は、日輪刀の鯉口を切る。魔法陣の結界を抜け、オーガの群れに突撃!
「まあ、ヒカリちゃんの防具と、イージスシリーズがあるから、傷一つ負わないだろうけど……。
勇ましいというか……」
 テレサはあきれ顔で言う。

「まあ、俺も人のこと言えないけどさ。
行ってくる!」
 総子の後に続くケーンだった。

「似たもの夫婦?」
 苦笑して弓を構えるテレサだった。ちなみに、現在テレサは弓を修行中。
 対魔王戦で、魔法の腕は爆上がりしているが、後衛として魔法以外の攻撃手段も持ちたい。
本当は魔法だけでも十分なのだが。
 いわゆる一つの、趣味の領域だ。

 総子とケーンは、背中合わせでオーガの包囲陣と対峙。ブラックに乗ったテレサの援護を受けつつ、オーガの攻撃をかわしながら一頭ずつ倒していく。
 いわゆるカウンターに近い、戦法をとっているわけだ。

 カウンター攻撃の攻撃力は高い。もちろん、防御能力が高ければの話。
 ケーンがこの戦法を指示したのは、総子の攻撃をかわす能力を鍛えるためだ。
 総子は日輪刀と技能が合わさり、ケーンに匹敵する攻撃力を持っているが、「見切り」が、今一つ。
「痛い! …気がする。
えい!」
 オーガの剣戟を腕に食らった総子は、一瞬ひるむが反撃。オーガの大剣も業物と見える。そしてバカ力で斬りおろした一撃は強烈。

 でも、安心してください!
 イージスの腕輪が見えない盾となり、弾いてくれました!

「痛い! 気がする!
この~~~!」
 我慢しきれなくなった総子は、ケーンから離れ包囲陣を破った。
 たちまち乱戦となる。
「痛い、気がする! えい!
痛い、気がする! えい!
痛い、気がする! えい!」

 総子さんや、あんた、本当なら何度も死んでますよ。

 戦闘狂のケーンも、あきれるばかりだった。もちろん、痛い気がしただけの総子は、この群れのボスオーガジェネラルに、とどめを刺した。

「総子、俺の言いたいこと、わかるかな?」
 戦いを終え、ケーンがジト目で言う。

「攻撃を受けすぎる?
竹刀を使う剣道に慣れた者の弱点ですね?」
 総子は上目づかいで応える。剣道では、面、小手、胴、あるいは喉への突きがきれいに決まらなければ、一本とはならない。
だが、真剣勝負では、もちろん軽い攻撃を食らっても、戦闘力は落ちる。

 ちっくしょう~~~! 返り血で凄惨だけど、かわいいじゃね~かよ~~~!

「うん。わかっているならよろしい」
 嫁には甘々のケーンだった。


 ケーンたちは戦闘を終え、クオークの町へ帰った。
「ケーン様、分捕った武器や防具、いかがいたしましょう?」
 ブラックがほくほく顔で言う。魔物から奪った武器類は、奪った者の取り分となる。

「ちょっとよさげな長剣と魔法の杖、あの二人に渡してやって。
後はみんな売っていい」
 ケーンの視線をたどれば、荷物の積み下ろしをする、例の兄妹の姿があった。

「なるほど。妹の方は、かわいいですからな」
 余計なことを言って、すねを蹴飛ばされるブラックだった。
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