改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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90 ケンイチみっけ!

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「そろそろフラグが立っても、いいころなんだけど……」
 馬車の中でケーンがぼやく。

今回の旅は、たまに魔物が襲撃してくるくらいで、平穏そのものだった。

「あの~、フラグって、旗の意味ですよね? 
旗がどうかしたのですか?」
 ジャンヌが遠慮がちに聞く。

「あ~、ジャンヌちゃんは、ゲームなんてやったことないやろな。
ゲームには当然シナリオがある。
製作者が仕掛けたイベントが発生するには、なんらかのきっかけがあるわけや。
たとえば、ゲーム中に誰かと会話するとか。
そのイベント発生の条件が満たされたとき、『フラグが立つ』というんや。
実際やってみた方がわかりやすいやろ? 
ケーン、なんか出したって。
単純なやつがええと思うよ」

 ユリに振られ、ケーンはアイテムボックスを物色する。そういえば…、

「ドラ×エなんてどうかな? 『天空の花×』
ユリの家の家宝だったんだろ?」
 ケーンはハンディタイプのゲーム機にソフトを入れ、起動する。

「なんか複雑やな。
家宝クラスのアイテムがほいほい出てくる」
 ユリはゲーム機を奪い取った。

「わお! こっちの世界の文字や!」
 被召喚者や、その血族には、もれなく異世界言語習得のアビリティがつく。

ただし、文字は頑張って学習するしかない。この世界で生まれ育ったユリは、日本語を理解できるが、文字は後天的に学習するしかなかったのだ。

「じゃないと、こっちの世界の人間には使えないだろ?」

「ウチ、このゲームやるために、仮名の習得超頑張ったんやで。まずは名前……」

「ユリ、ジャンヌにやらせるんじゃなかったの?」
 ケーンが苦笑して注意を与える。

「せやった……。なんか懐かしゅうて」
 ユリはジャンヌにゲーム機を渡し、使い方を指導した。

剣道少女の総子も加わり、馬車の中はすっかり盛り上がる。

取り残されたケーンは思う。俺のフラグ、どうなっているのだろう?


「ケーン様、前方二百メートル、荷馬車が人族に襲われています。
襲撃者は盗賊かと。
どうなさいますか?」
 ブラックが声をかけてきた。

女レーダーに反応なし。だけどしゃ~ね~か。

ケーンは馬車から飛び出した。総子が続く。

「ユリ、どっかの馬車が襲撃されてるんだけど」
 ケーンは馬車内に声をかける。

「今大ピンチやねん! 
適当にやっといて」

「いや~ん! HPが……。
この勇者、情けないほど弱い」

「薬草や!」
「はい!」
 ユリとジャンヌは忙しいようだ。

ケーンは一つため息をつき、剣を抜いた。ちなみに、ジャンヌがつけた勇者の名前は、当然ケーンだった。

まだひのきの棒と布の服しか装備できていない。
幼馴染の女の子の防具は、布のドレスとお鍋のふた。

まあ、レベルや装備の貧弱な序盤は、けっこうドキドキもの。
それが案外楽しいんだよね。

ケーンと総子は、盗賊の集団に駆け寄った。

今のケーンと総子にとって、二百メートル程度なら距離とは言えなかった。

ところが、馬車を囲んでいた盗賊たちは、一斉に逃げだした。

ケーンは違和感を抱いた。
盗賊団は十人。その数でどうして? 

少しでも戦闘した後なら、話はわかるのだが。

「ありがとうごぜ~ますだ」
「おかけで、けが一つ負ってません」
「どうぞ俺らの村へ」
「一晩泊まってくだせえ」
 馬車に乗っていた二人の老人が、棒読みで口々に言う。

『ケーンさん、不自然ですね? 
老人が十人の盗賊に囲まれて、怪我をしてない?』
 総子が念話で伝える。

『ど素人が、無理やり小芝居やらされてる感じ? 
きっと狂言だ』

『つまり、村に誘って薬でどうにかするつもり?』

『きっと盗賊に人質とられてる。
薬を飲ませたら盗賊も楽に稼げる』

『その推理、当たってると思います。
どうしますか?』

『一応フラグなんだろうね。乗ってみる』

『了解です』
 盗賊なんかに負けるわけがない。ケーンと総子は素早く意思決定した。


 ケーンは御者台に乗り、老人たちの馬車に続く。一応馬を操るふりをしないとまずいから。

馬車内では三人の嫁が、キャッキャとゲームを楽しんでいる。


 不意に馬車を影が覆った。ケーンは頭上を見上げる。

ホワイトドラゴン? ドラゴンの中でも最上位種だ。

まあいいか。殺気は全然感じないし。ケーンは無視することに決めた。

ホワイトドラゴンは、敵対しない限り人間を襲わない。

ところが…、

『ケンイチみっけ!』

 ドラゴンは急降下。ぐわしっとケーンをわしづかみし、上空へ舞い上がった。
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