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104 入寺子屋式
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ケーンは『歓迎! 第一期入寺小屋生諸君』と、貼り紙があるドアを開けた。
彼に十八対の目が向けられた。
所定時間の三十分前だが、全員集合しているようだ。好奇の視線は、露骨な顰蹙(ひんしゅく)の色に変わった。
「おい、お前、どうしてここへ入るんだよ」
いかにもガキ大将的な少年が立ち上がり、ケーンに詰め寄った。
「冒険者になりたいから?」
インネンをつけられた理由はわかっている。
他の者とは、装備のレベルが一見全く違うからだ。バッドステータス付与という意味では、実際全く違うのだが。
入寺子屋要項には
「公的な教育機関や、冒険者育成私塾への入塾が、経済的に困難であり、なおかつ冒険者への意欲と能力が認められる者」
と明記されている。
そして、入寺子屋式には、「即実戦に対応できる装備」で臨むよう指示されている。
ケーン以外の者の装備は、普通の村人とほとんど変わらない。
「ザケンじゃねーぞ!
テメー、どっかの金持ちのボンボンだろ!
テメーは、俺らみたいな貧乏人枠を一人削ったんだ!」
「それが何か?
そいつは実力が、俺以下だったってことだ。
冒険者を目指すなら、力がすべてだ。
文句あんのかよ!」
嫌われ者上等。だって、ぶつかり合うことから男の真の友情は始まる。
それ、青春の王道。
いちゃらぶ学園生活をあきらめたケーンは、開き直る覚悟をしていた。
「もしかして、没落貴族かなんか?
どんなに生活が苦しくても、お家再興に向けて、先祖伝来の装備だけは売らなかった?」
いかにも人のよさそうな女の子が、かばってくれた。
ナイス! その線でいってみよう!
ケーンは、そのストーリに乗っかることにした。
「ふっ……、家名は聞かないでくれ」
ケーンはニヒルに決め、訓練場の壁に背もたれ座った。
「悪かった。まあ、お互い頑張ろうか」
ガキ大将少年は、潔く嫉妬と敵意の矛を収めた。
ケーンは、彼をジャイアンと密かに名付けた。
あ~! 青春だ!
ケーンは、そこはかとなくじ~んときた。
メアリーとリンダが、訓練室に入ってきた。
「定刻前ですが、全員集まっているようですね。
わたくしはメアリーと申します。
この寺小屋の責任者です。
主に魔法の指導を行います。そして……」
「戦闘指導の責任者リンダだ。
メアリーとともに、先の勇者パーティの一員だった。
さっそく式を始めよう。
ここでの生活と冒険者に関する質問は、移動や休憩中、随時受け付ける。
こちらから説明は一切しない。
各自聞きたいことは、まとめておくことだな。
一つだけ言っておく。
冒険者に最も必要なのは、生き残ることだ。
生き残るためどうすればいいのか。
死に物狂いで考えろ。
最初にリーダーを決める。
最後まで立っていた者が、この寺小屋のリーダーだ。
バトル、始め!」
「おう!」
寺小屋生は誰もが武者ぶるいをした。武器を手にとって一斉に立ち上がる。
元勇者パーティが二人も。指導陣はどこの教育機関や私塾にも絶対負けない。
成り上がってやる!
「落ちぶれ貴族からやっつけるぞ!
全員かかれ!」
ガキ大将的少年が、リーダーシップを発揮する。
装備見た目水準を考えたら、悪くない選択だ。
集団戦闘の正攻法は、弱そうなものから数を減らしていくことだが、初見の敵には最適解だろう。
「かかってこいやー!」
ケーンは博愛の剣をすらりと抜き、迎撃に備えた。
ちなみに、博愛の剣は、斬られても一切痛みを感じない、攻撃力九割削減の親切仕様となっている。
そして……、
「君、名前は?」
ケーンは、最初にかばってくれた女の子に聞く。
彼女はただ一人、弓と補助魔法で、ケーンをサポートした。
「お見事です、リーダー。
私の名前はアリス。
半年間、あなたの片腕として生き延びるつもりです」
このしたたかさ、思わぬ拾いものかも……。
ケーンは右手を伸ばし、握手を求めた。
アリスは隠し持ったナイフを腰だめにし、体ごとぶつけるように、跳びかかってきた。
ケーンは身をかわし、ポンと少女の首筋にチョップ。
女の子は意識を失った。この子、いよいよ拾いものかもしれない。
一人だけ痛い思いさせちゃったけどね。
他の少年少女は、安らかに気絶していた。
「ポチさん、アリスはあなたのパーティに入れるとして、もう一人のパーティリーダー、誰にしますか?」
メアリーは、にこやかに聞く。
「さん、は要らない。もう一人はジャイアンで」
ポチはもちろんケーンの偽名だ。
ちなみに、虚飾の革兜は、防御力ゼロと引き換えに、装備者を超カッコいいと、錯覚させる特殊効果を持っている。
ライラック冒険者ギルドの有名人ケーンも、この兜を装備している間、誰も正体に気づく者はいないだろう。
「ジャイアン? ああ、ケントだな。
いい体してるし、リーダーシップもとれそうだ。
いいんジャアイアンないの?
…あれ?」
リンダは無意識で口にした、自分のダジャレにとまどう。
もちろん、こてこてギャグの小手の特殊効果だ。寺小屋でのケーンいたずら事始めだった。
あ~、青春だね~!
彼に十八対の目が向けられた。
所定時間の三十分前だが、全員集合しているようだ。好奇の視線は、露骨な顰蹙(ひんしゅく)の色に変わった。
「おい、お前、どうしてここへ入るんだよ」
いかにもガキ大将的な少年が立ち上がり、ケーンに詰め寄った。
「冒険者になりたいから?」
インネンをつけられた理由はわかっている。
他の者とは、装備のレベルが一見全く違うからだ。バッドステータス付与という意味では、実際全く違うのだが。
入寺子屋要項には
「公的な教育機関や、冒険者育成私塾への入塾が、経済的に困難であり、なおかつ冒険者への意欲と能力が認められる者」
と明記されている。
そして、入寺子屋式には、「即実戦に対応できる装備」で臨むよう指示されている。
ケーン以外の者の装備は、普通の村人とほとんど変わらない。
「ザケンじゃねーぞ!
テメー、どっかの金持ちのボンボンだろ!
テメーは、俺らみたいな貧乏人枠を一人削ったんだ!」
「それが何か?
そいつは実力が、俺以下だったってことだ。
冒険者を目指すなら、力がすべてだ。
文句あんのかよ!」
嫌われ者上等。だって、ぶつかり合うことから男の真の友情は始まる。
それ、青春の王道。
いちゃらぶ学園生活をあきらめたケーンは、開き直る覚悟をしていた。
「もしかして、没落貴族かなんか?
どんなに生活が苦しくても、お家再興に向けて、先祖伝来の装備だけは売らなかった?」
いかにも人のよさそうな女の子が、かばってくれた。
ナイス! その線でいってみよう!
ケーンは、そのストーリに乗っかることにした。
「ふっ……、家名は聞かないでくれ」
ケーンはニヒルに決め、訓練場の壁に背もたれ座った。
「悪かった。まあ、お互い頑張ろうか」
ガキ大将少年は、潔く嫉妬と敵意の矛を収めた。
ケーンは、彼をジャイアンと密かに名付けた。
あ~! 青春だ!
ケーンは、そこはかとなくじ~んときた。
メアリーとリンダが、訓練室に入ってきた。
「定刻前ですが、全員集まっているようですね。
わたくしはメアリーと申します。
この寺小屋の責任者です。
主に魔法の指導を行います。そして……」
「戦闘指導の責任者リンダだ。
メアリーとともに、先の勇者パーティの一員だった。
さっそく式を始めよう。
ここでの生活と冒険者に関する質問は、移動や休憩中、随時受け付ける。
こちらから説明は一切しない。
各自聞きたいことは、まとめておくことだな。
一つだけ言っておく。
冒険者に最も必要なのは、生き残ることだ。
生き残るためどうすればいいのか。
死に物狂いで考えろ。
最初にリーダーを決める。
最後まで立っていた者が、この寺小屋のリーダーだ。
バトル、始め!」
「おう!」
寺小屋生は誰もが武者ぶるいをした。武器を手にとって一斉に立ち上がる。
元勇者パーティが二人も。指導陣はどこの教育機関や私塾にも絶対負けない。
成り上がってやる!
「落ちぶれ貴族からやっつけるぞ!
全員かかれ!」
ガキ大将的少年が、リーダーシップを発揮する。
装備見た目水準を考えたら、悪くない選択だ。
集団戦闘の正攻法は、弱そうなものから数を減らしていくことだが、初見の敵には最適解だろう。
「かかってこいやー!」
ケーンは博愛の剣をすらりと抜き、迎撃に備えた。
ちなみに、博愛の剣は、斬られても一切痛みを感じない、攻撃力九割削減の親切仕様となっている。
そして……、
「君、名前は?」
ケーンは、最初にかばってくれた女の子に聞く。
彼女はただ一人、弓と補助魔法で、ケーンをサポートした。
「お見事です、リーダー。
私の名前はアリス。
半年間、あなたの片腕として生き延びるつもりです」
このしたたかさ、思わぬ拾いものかも……。
ケーンは右手を伸ばし、握手を求めた。
アリスは隠し持ったナイフを腰だめにし、体ごとぶつけるように、跳びかかってきた。
ケーンは身をかわし、ポンと少女の首筋にチョップ。
女の子は意識を失った。この子、いよいよ拾いものかもしれない。
一人だけ痛い思いさせちゃったけどね。
他の少年少女は、安らかに気絶していた。
「ポチさん、アリスはあなたのパーティに入れるとして、もう一人のパーティリーダー、誰にしますか?」
メアリーは、にこやかに聞く。
「さん、は要らない。もう一人はジャイアンで」
ポチはもちろんケーンの偽名だ。
ちなみに、虚飾の革兜は、防御力ゼロと引き換えに、装備者を超カッコいいと、錯覚させる特殊効果を持っている。
ライラック冒険者ギルドの有名人ケーンも、この兜を装備している間、誰も正体に気づく者はいないだろう。
「ジャイアン? ああ、ケントだな。
いい体してるし、リーダーシップもとれそうだ。
いいんジャアイアンないの?
…あれ?」
リンダは無意識で口にした、自分のダジャレにとまどう。
もちろん、こてこてギャグの小手の特殊効果だ。寺小屋でのケーンいたずら事始めだった。
あ~、青春だね~!
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