改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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106 ダンジョン突入!

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「さあ、突入だ!」
「おう!」
 メンバーは、張り切ってケーンの言葉に応えた。

ケーンは先頭でダンジョン内に突入した。


「キキョウさん、隠れてないで出てきなさい。
こっそり付いていくつもりなんでしょ?」
 メアリーが木陰に向かって声をかける。

「リンダさんを、信用しないわけじゃないんですよ。
だけど、蘇生魔法、使えないでしょ? 
心配で心配で……」
 キキョウが木陰から出てきた。もちろん、潜んでいることがばれる程度に気遣っていた。

ちなみに、蘇生魔法が使えないリンダは、パーティポチの受け持ち。
神聖魔法の使い手メアリーは、いざという時のために、パーティジャイアンを受け持っている。

キキョウは王宮の修行で、闇属性の魔法が使えるようになっている。

心停止後、脳が死ぬまでに蘇生可能な魔法は、神聖魔法か闇属性の魔法だけである。
水属性やエルフの精霊魔法は、自然治癒力に働きかける力しか持たないが、疲労回復や、病気の改善にその力を大きく発揮する。

「楽チンでいいや。どうぞ、どうぞどうぞ」
 リンダは苦笑を浮かべて、影の引率の役を譲った。

ふと思う。

どうぞ、と言うつもりだったのに、頭を下げ右手を伸ばし、どうぞ、どうぞ、とつなげたのは、どうしてだろう?

こてこてギャグの小手の影響は、まだ残っていた。その呪いのアイテムは、使用者のギャグセンスが、他者に反映されるという、ある意味おそろしい働きをする。
ギャグであることすら、こちらの人間には、わからない場合が多いという意味で。

 
「接敵一分前。
敵は…多分ゴブリン。
数は七体。
先頭三角隊形。後はほぼ四角。
前の三体戦闘力排除は引き受けた。
各自戦闘準備!」

「ラ、ラジャー」
 ケーンの索敵能力に、メンバーは、びっくりして応えた。

ポチは魔法戦士を目指すと、言っていたはずだけど…どうして? 
まあ、その情報が正しいかどうかは、もうすぐ証明される。

私は正しいと信じる。

アリスは彼女の主武器、弓を引き絞った。

 ジャスト一分後。棍棒を上段に構えたゴブリン達が、一斉に襲いかかってきた。

アリスともう一人の後衛は矢を射て、先頭のゴブリンを倒した。

ケーンの指示を忘れたわけではない。だが、恐怖心から思わず射てしまった。

ケーンはチッと舌打ちし、二体を連続して薙ぎ払う。

アリス、ナーラ、痛い目にあえ。

わざとこぼした四体のうち二体が、中衛の二人と交戦。

中衛のミントとダンは、いずれも槍だ。

ゴブリンに倒される腕ではないが、一撃でとどめをさせる腕でもない。

彼らが思っている以上に、ダンジョンのゴブリンは強くずる賢い。

後衛の魔法使いか弓使いをまず倒す。そのセオリーを本能的に知っている。

メンバーは、フィールドのゴブリンを、倒した経験はありそうだが、ダンジョンはわけが違う。

残りの二体が、まだ二の矢の準備ができない、アリスとナーラに棍棒を構える。

弓は中長距離相手に強力な火器だが、接近戦には超弱い。

後衛二人は、弓を捨てナイフを抜き身構えた。

倒すことはおろか、援護の時間を稼ぐ自信もない。

二人の背後から、つぶてが飛んできて、ゴブリンは倒された。

ケーンはゴブリンにとどめを刺しながら思う。

キキョウのやつ、余計なことを。

ケーンはキキョウが隠れて追っていることに、もちろん気づいていた。


「はい、集合!」
 中衛二人がとどめを刺すのを待ち、ケーンはそう呼びかけた。

ほっとして座り込んでいるアリスとナーラは、腰が抜けて立てない。

てっきりやられたと思ったんだけど……、どうして?

 ケーンは二人に歩み寄り、黙ってげんこつを振り下ろす。

「痛い! でも、ごめんなさい」

「痛い! でも、ごめんなさい」
 アリスとナーラには、今のげんこつの意味がわかっている。

七引く三は四、残りの四体を一人一体ずつ倒せ。

ケーンはその意図で、最初の指示を出したのだ。

先頭のゴブリンを二人で倒すのではなく、後続の敵を引きつけて、一体ずつ倒すべきだったのだ。

「行こうか」
 ケーンは二人を冷たくにらんで歩き始めた。

「あのゴブリン、どうして死んじゃったの?」
 ナーラが立ち上がりながら聞く。

「わかんない。このドロップの銅貨、もらえないね?」
 アリスは死体が消えた後の、銅貨二枚を拾いながらつぶやく。

「いいからとっておけ。天井から、偶然、石でも落ちてきたんだろ。
次の偶然はないぞ」
 ケーンは二人とキキョウに向けてそう言った。

二人は見えないほどの勢いで、水平に落ちてくる石なんてあるのだろうかと思いながら、深く考えないことにした。
多分引率がこっそり付いていたのだろうと、見当はついていたから。
石はゴブリンの眉間の急所に、正確に当たっていた。 


 その後、パーティポチは二時間ほどダンジョンで戦い、無事一階最奥部で、中ボスを倒すことに成功した。

ケーンは予定をクリアし、転位魔法陣に乗るよう、指示を出した。このチュートリアルダンジョンでは、一階ずつ転移魔法陣が設けてある。

ちなみに、パーティジャイアンは、ダンジョン半ばほどで罠に引っ掛かり負傷者続出。

陰の引率者メアリーにこっぴどく叱られた後、回復魔法を施され、クリアはならなかった。

リーダーのジャイアン曰く。
「腹が減って注意力が散漫になったんだよ…です」
突入前、短時間で都合よく、人数分の食材が確保できなかったのだ。

メアリーの説教が長引いたこと、言うまでもない。
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