改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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113 ケダモノたちの洞窟

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 ケーン、嫁たち、そして寺小屋生たちはダンジョン入り口前に転移。

 寺子屋生たちは、超微妙な心境だった。転移体験と言い、ケーンや嫁たちといい。
 尊敬を通り越して、不気味としか形容のしようがない。

「まず注意しておく。
すでに身につまされていると思う。
ダンジョンの魔物は、フィールドのワンランク上。
それに、Aランクのダンジョン罠はえげつない。
俺たちの通った跡を、かならずたどること。
不用意に跡を外れたり、壁に手を触れない!」

「はい!」
 ケーンの注意に、寺子屋生たちはいっそうびびる。

「先頭、キキョウ。
総子とメイサ、中衛でエミリーをアシスト。
エミリー、後衛を頼む。
エミリーには、ちょうどいいレベルだ。経験値かせげ」

「はい!」
 嫁たちは笑顔で応える。

「俺、ユリ、ジャンヌ、テレサは、お前たちの護衛に就く。
蘇生魔法を使えるけど、さっきの注意、忘れるな!」
「はい……」
 寺子屋生たちは、おびえきって弱々しく応えた。


 ダンジョン突入一分後。

「落とし穴です」
 キキョウは立ち止まり、槍で地面を突いた。

 ドサッ! 直径二メートルほどの地面が崩れ落ちた。

「いきなり……」
 ジャイアンがつぶやく。ジャイアンは、トラウマがよぎる。チュートリアルダンジョン初トライで、落とし穴にはひどい目にあった。

「Aランクの落とし穴は、チュートリアルダンジョンと違いますよ。
底を見てみなさい」
 キキョウはそう言って落とし穴を跳び越えた。エミリーとダンジョントライの嫁たちは、キキョウに倣う。
 
 寺子屋生たちは、穴の中をのぞく。びっしりと槍状の木が生えていた。
「Sランク以上になったら、あれが本物の槍になって、毒が塗られてる。
まあ、こっちの方が、刺さったら痛いと思うけど」
 ケーンがサディスティックに解説。

 怖っ!
 突入一分過ぎで、ガクブルの寺子屋生だった、


「一分後会敵!
五体、二足歩行です。
あの重量感と移動速度。
多分リザートマン。
私と中衛は、魔物の足を狙います。
エミリーさん、とどめを」

「了解!」
 エミリーと嫁たちは頼もしく応えた。

「さっきの落とし穴といい、どうしてわかるんだ?」
 ジャイアンが、ケーンに聞く。
「経験? 
どうしてと聞かれても、そう答えるしかない」
「そんな~……」
 ジャイアンは、情けない顔で言った。

「ポチ…、いや、ケーンさんにもわかるよ。
ダンジョンで助かったのなんの」
 超どや顔で胸を張るアリスだった。元チームポチのメンバーも、コクコクとうなずく。
 ケーンと同じパーティだったこと、超誇らしい気分だった。

 ヒュン、ヒュン、ヒュン。キキョウがマサムネ改を三閃。リザートマンの六本の足が飛ぶ。

 ヒュン! ズバッ!
 総子とメイサが、刀と剣で足を四本飛ばす。

 エミリーは、サンダージャベリンで、五体にとどめを刺した。

 銀貨を十枚残し、リザートマンは風化。それと、三叉の槍が一本。

「ラッキー! トライデントがドロップした。
後でお楽しみ抽選会があるからな」
 ケーンが銀貨と槍を拾って、アイテムボックスへ。あまり高価なものは寺子屋生たちに渡せないが、トライデント程度のドロップなら、記念品として許容範囲だろう。

「ポチ、どこへ入れたの?」
 アリスは、使い慣れた呼び方をしてしまった。

「アイテムボックス。
気にするな」

 気にするなと言われても、気になるじゃない!
 どこに箱が? 虚空へ消えたとしか見えなかった。


 おおよそ三時間で、エミリーと嫁たちのパーティは、ダンジョン最奥部に到達。

 ひときわいかつい扉が見えた。

「キキョウ、ここのダンジョンボスは?」
 ケーンが聞く。

「ここへ潜ったのは、もうずいぶん前ですから……。
確か、オーガキング?
お供にオーガが、五体ほどいたかと」
 キキョウが薄れかけた記憶をたどり答えた。Aランク程度のダンジョンは、印象に残ってない。

「そうなんだ?
エミリー、経験値の稼ぎどころだ。
張り切って参りましょう!」

 エミリーは、いくぶん頬をひきつらせ、「はい」と答えた。お嫁さん達がついてる。

大丈夫だよね? エミリーは、「キング」と名付けられた魔物と戦った経験がなかった。
ましてやオーガキング? 超怖いんですけど!

 総子が扉を開け、キキョウが先陣を切る。メイサと総子が続き、エミリーがフラフラと突入。
 扉が閉まる。中ボス、ラスボスの間は、最大六人しか入れない。

「ポ、ケーンさん、大丈夫なの?」
 アリスが青ざめた顔で聞く。

「大丈夫だよ。今頃オーガの足はみんな飛んでる。
あいつら、身体強化魔法しか使えないから、エミリーは魔法の射的を楽しめばいい」
「魔法、随分使ってるけど、魔力はもつの?」
 アリスが重ねて聞く。

「耳でわかるだろ?
エミリーはエルフだ。
それに魔玉の指輪を装備してる。
魔法は使い放題だ」
 エミリーは嫁ではないが、ケーンは妥協しなかった。嫁の大切な従者だし、お互い嫌っているわけではない。

「魔玉の指輪?」
「魔法の威力と魔防アップ、魔力補給。周囲から魔力を補給し続けるから、多分無限の魔力タンクとなる。
誰も使い切ったことないし、多分としか言えないけど。
入手経路は、ちょっと言えない」
 ケーンはアリスの追及をごまかす。裏を明かせば、イージスシリーズと同様、コピー品だ。
もちろん、コピーといっても、パチものではない。オリジナルと同等の性能を、ミレーユは試行錯誤の結果作りだした。

「神話級?」
 アリスが顔を引きつらせて聞く。
「もちろん! あっと、終わったみたいだな」
 ケーンは扉に目をやる。扉はゆっくりと開いた。

「ケーンさん、やりました!」
 滅多に表情を変えないエミリーが、精一杯の笑顔でケーンに走り寄った。

 ガバッ! 走る勢いのまま、ケーンに抱き付いた。

 ケーンはエミリーの華奢な体を抱き止める。ちょっとびっくりの反応。
「よく頑張った」
「あらっ、ごめんなさい」
 エミリーは、自分でも思いがけないアクションに、頬を赤らめ、ケーンから離れた。

 ちょっぴり名残惜しく感じられるケーンだった。おっぱいは、ちっちゃいけどね!

 寺子屋生の反応は同じだった。

『タダチニバクハツシロ!』

 ただ一人、アリスは唇をかんでうつむいた。

ポチの嫁たち、どんだけすごいんだよ……。あ、ケーンだった……。


 ジャンヌの転移魔法で、全員元の訓練場へ帰還。
「ユリ、相談に乗ってくれよ。
お楽しみ抽選会の景品」
「せやな。あんまり分不相応なもん、渡せんな。
出してみ」

「キキョウ、送別会の仕切り頼む」
 ケーンはそう依頼し、アイテムボックスから、今日獲得したアイテムを次々と取り出す。

「空くじなしか?」
「うん。くじ引きだから、一応差はつけようと思う」
「あの子、ひいきせんでええんか?」
 ユリは、小声で聞く。

 寺子屋生たちを見たら、みんな放心状態。

「魔法のバッグプレゼントしたから。くじ引きは公正に」
「了解。ポーション類は、一番実用的やけど、あのレベルやったら要らんか。
消費期限があるからな……」
 ぶつぶつ言いながら、ユリは選別を続ける。ケーンはユリに任せ、アリスに歩み寄る。
 アリスはひどく元気がなかった。

「アリス、疲れたのか?」
 ケーンが体育座りするアリスの前に。
「体はそれほどでも。
全然戦わなかったし。
あ、みんな、ヤバいブツ、返そう」
 アリスは気づいて、イージスの腕輪と首飾りを外す。寺子屋生は、慎重に外し、両手で差し出す。
 欲しいとは思わない。できるだけ早く手放したい!

 ケーンは回収し、アイテムボックスへ。

「アリスが本当に強くなったら、考えてもいいぞ」
「何を?」

「俺の嫁は、みんなイージスシリーズや、魔玉の指輪を装備してる。
他の装備も、武器以外は神話級だ。
努力で勝ち取れ」

 ケーンの言葉で、死んだ魚の目だったアリスがキラリ。

「マジで!」
「マジだ」
 そう言って、アリスの頭をくしゃくしゃっとかき回すケーンだった。

 あ~、青春だね~~~!
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