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118 推しのねこ

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「鏡、見てごらん」
 ミーちゃんに超似あう衣装を着せ、お化粧もバッチリ施し、ケーンは姿見を取り出した。

 淡いピンクのミニスカメイド服に、白のフリフリエプロン、白のニーハイソックス。白のヘッドドレスと猫耳が超似あってる!

「これ、私、ですか?」
 ミーちゃんは、姿見を呆然と見つめる。

「そう。ミーちゃんだよ」
 ケーンは背後から、ミーちゃんの肩に両手を置く。

「気に入った?」
 鏡の中のケーンは、なんとも得意そうな笑顔だった。

「もちろん……気に入りません!」
 ミーちゃんは、本音を言いかけ、危うく思いとどまった。

金貨百枚が……。

「そうか。よかった」
 ケーンはミーちゃんの両肩を、ポンポンとたたいた。

「田舎の家族が……。お店への借金もあるし……。だから……」
 ミーちゃんは、しょんぼり。

「わかってるよ。
さあ、新生ミーちゃんのお披露目だ!」
 ケーンはテーブルに置いた金貨袋を取り上げた。

 ミーちゃんは、思わず金貨袋を両手で追う。

 ケーンは、お手製のハンドバッグを取り出す。金製の「K」のロゴが、燦然と輝く。
銀座あたりのホステスさんが、超喜びそうな逸品。

 ケーンは、ハンドバッグに金貨袋を入れた。

「はい。俺からのプレゼント。
金貨も百枚あったら、結構重いだろ?」
 ミーちゃんは、ハンドバッグを受け取る。

「軽い……」
 ミーちゃんは、金貨百枚の重さなど、もちろん知らない。だけど、全然重さを感じない。

「もしや……」

「そうだよ。魔法のバッグだ。
この店ぐらいの容積はあると思う」

 な、な、なんと! ミーちゃんは、魔法のバッグのお値段なんて、もちろん知らない。
だけど、金貨百枚でも、買えるとは思えない。

「どうして?」
 ミーちゃんは、なじるように聞く。

「もちろん、君が気に入ったから。
迷惑?」

「迷惑なわけないです!
だけど、……私、どうしたらいいんですか!」

「君の望むままでいい」

「私の望むまま?」

「そう。この店で働き続けてもいいし、なんだったら、俺の嫁になってもいいよ」

「嫁希望です! 熱烈希望です!」
 ミーちゃんは、ひしとケーンに抱き付いた。ケーンは優しく抱きしめる。

 ミーちゃんは思う。この人、何者なんだろう?

 何者でもいいや……。一生ついていきます!

 ミーちゃんは、ケーンの胸に頬ずり。細マッチョだ……。

たくましい……。

抱きしめられたら、なんともいえず、安心感がある。

貧しい子だくさん家庭に生まれ、育ち。六番目の弟が生まれ、ミーちゃんは覚悟を定めた。

私が体を売るしかない!

だが、買い手がつかなかった。

村の先輩に紹介してもらい、この店に勤め始めた。

先輩の体毛は薄く、しかも白。そこそこ人気がある。

ミーちゃんの体毛は黒。薄毛でも超目立つ。

いっそふわふわだった方が、ましだったかもしれない。

ケーンさんは、私を変えてくれた。私のニャン生自体を変えてくれそう……。

「特訓しよう! 目指せアキバ系のメイドさん!」

「アキバケイ?」

「少し流行は冷めてるけど、中二心は永遠だ!
ミーちゃんは、手の届きそうなアイドルになれる。
そういうことだよ」

「はあ……」
 ミーちゃんは、よくわからないままうなずく。

まあ、どんな特訓でも、やるっきゃないよね!
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