改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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130 ポーション卸についての交渉

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 午後の自由時間。ケーンは、レミのポーションづくりを見学することにした。

 メイも助手として、きびきびと働いている。二人ともかなりお腹は目立ってきているけど。

 そして、新しく嫁に加わったミーちゃんは、レミの説明を受けながら、乾燥させた薬草を、乳鉢でごりごりとすりつぶしている。
 しっぽをフリフリしながら、一生懸命な様子が微笑ましい。

「ケーンさん、ウチのポーション、評判が広がって。
貴族の方までが、買いに来られるんです。
生産が追い付かないというか……。
どうしましょ?」
 レミが困ったような表情で、相談を投げかけた。

「販売しているのは、中級までだろ?」
 ケーンは、極端に高品質なポーションを、売らないように指示している。そして安売りはせず、市場が混乱しないよう配慮するようにも言っている。

「それはそうなんですが……。
他の薬師のポーションは、品質にばらつきがあるというか……。
要するに、ウチの店なら安心、ということみたいです」
 レミの説明で、なるほど、とケーンは納得する。

 ミレーユに仕込まれたレミは、精密に計測できる機器を使っている。普通の薬師は、「経験と勘」で、分量や精製時間を決めている。

もちろん、人間の「経験と勘」はバカにできないが、それは十分な「経験と勘」が、養われていることが前提だ。

薬品の成分のバランスは、きわめてデリケート。バランスが崩れたら、それこそ薬が毒になってしまう。
それは極端な例だとしても、薬効にむらが生じてしまうのは、この世界で仕方ないことだとされている。

「予約販売、という形をとるか。
金に困ってるわけじゃないし、ギルドに相談してみようか?」

「そうお願いできたら……。長い立ち仕事、ちょっと辛くなってるし」
 レミのお腹のふくれ具合を見たら、さもありなん。

「いっそ販売、ギルドに押し付けちゃう?
レミやメイの出産と育児もある。
うん。そうしよう」
 レミは伯母が老け込まないよう、店を存続させている。

子供が生まれたら、おばちゃんにも張りが生まれるだろう。

店での販売はやめ。ケーンはそう決めた。


 ケーンは再びギルドへ。巨乳受付嬢のカウンターに。

うふ……。谷間にあるほくろがエロっぽい。何組ものおっぱいを自由にできるケーンだが、自由にできないおっぱいの、なんとそそることよ!

「あのさ、レミの店の代理できたんだけど。
ギルドの責任ある立場の人と、話させてもらえる?
レミはお腹が大きくなって、仕事が厳しくなってる。
店での販売は、やめようかと思ってるんだ」

「ちょっとお待ちください!
ギルド長に相談してみます」
 受付嬢は、慌てて二階へ駆けあがった。レミさんの店が閉められたら、冒険者が困っちゃう!


 ギルド二階応接室。ケーンは、頭が真っ白になったおじいちゃんと対面。

「レミさんが店を閉められるというのは、本当ですか?」
 ギルド長のしわは深い。

「本当だよ。
俺の稼ぎで生活は十分賄える。
俺的には、嫁の体が一番。
レミは人がいいから、お客が店に押し寄せたら断れない」

「それは、ドラゴンを、討伐できる方の奥方なら、そうでしょうが……。
なんとかなりませんかな?」
 キルド長のしわは、いっそう深まる。

「無理なく働けるうちは、ポーションづくりを続ける。
でも、出産間近になったら、作れなくなる。
子育てが始まったらとても無理。
だから店売りはやめる。
そこで、だ。
作った分、ギルドで販売してほしい」

「ギルドも、なかなか忙しいですから……」
 ギルド長はしぶる。

「予約販売の形を採ったら?
本数も制限して」
 ケーンは押してみる。

「はあ……。しかし……」
 ギルド長はしぶる。たしかに余計な仕事は増える。

だが、ケーンにとって大切なのは嫁と子供。

「わかった。一週間後、ポーションの製造もやめさせる。
じゃ」
 ケーンは席を立った。

「ちょっとお待ちください!
急にやめられたら、困るのは冒険者たちです!」

「それはわかるよ。
だけどさ、ギルドは冒険者が体を張ってるおかげで、成り立ってる。
その冒険者を守る手立て、全部人任せで済ませるのは、筋が違うと思うよ。
薬師の育成とポーションの品質管理、ギルド側も考えたら?
レミは、あくまで民間人だ」
 ケーンは、この件に関し、一切妥協するつもりはない。

「製造できる範囲で、ギルドに卸してください!
販売はギルドで責任を持ちます!」
 ギルド長は妥協した。

「了解。価格はほどほどにね。
ヨロシク!」
 ケーンは、そう言い残し、ギルドを後にした。


 ケーンは、その足で夜の王宮へ転移。父親との面会を乞う。

 父親のケンイチは、快くケーンを迎えてくれた。

「ずいぶん嫁が増えたそうだな?」
 さっそくからかってくる。

「俺は父ちゃんより甲斐性があるから」
 ケーンは軽く流す。

「まあ、俺はパーティの三人で手いっぱいだったから。
我が息子ながら尊敬してやるよ。
ところで、何か用か?」
 ケーンが用もなく、自分に面会を求めるとは思えない。

「どうせひまなんだろ?
ポーションの製造機作って。
誰でも扱えるような」

「ポーションの製造機?
ああ、妊婦をいたわりたいと?
たしかに、生まれてからも育児は大変だ。
俺に任せろ!」

「さすが父ちゃん!
掟は守るから」
 ケーンの言う「掟」とは、下界に干渉し過ぎないということだ。
母親の夜の女王は、人族にも魔族にも肩入れできない。監視者として、中立を保つ義務がある。
 例外として許されるのは身内のみ。ケーンが身内に対し、思い切りえこひいきしていることを、母親はとがめない。

「あんまり高品質でもまずいな。
見本、持ってきてくれ」

「了解!」
 さてと、工場を準備しなくちゃ。レミの家ではまずい。

レミやメイは、日ごろかまってやれる時間が少ない。夫として、父親として、できるだけのことはしてやりたい。

 ケーンは、母親に会うこともなく下界へ転移した。


「あら? もう帰っちゃったの?
せっかく来たから、サーシャと引き合わせようと思ったんだけど。
この前は、ちょうどバイオレットとガーネットに拉致られてたから」
 夜の女王が、ケーンの帰宅を聞きつけ、夫の部屋へ入ってきた。

 後には、魔王の娘であるサーシャが続いている。サーシャは夜の女王の魔法で、婚姻可能な肉体年齢に変化させられている。

 体内時計を操る夜の女王にとって、朝飯前だ。
 
 ちなみに、バイオレットとガーネットが、サーシャを拉致った目的は、もちろん戦闘訓練のためだ。
 その訓練場は、ケーンが修行を積んだ場所であり、希少部位を確保するためにも重要な場所だ。

「俺にポーション製造機作れってさ。
あいつも大人になったな」
 ケンイチは、感慨深げに言う。世間知らずで、我が道を行くことしか知らなかった息子が、嫁と生まれてくる子供に、心配りができるようになった。

「ああ、レミの出産が近いからか……。
サーシャ、聞いた通りよ。
あなたの夫になるケーンは、超優しいの。
嫁だけには」

「はい! お義母様。
ケーンさんにお会いできる日、本当に楽しみです!」
 超性悪幼女だったサーシャは、夜の女王によって、すっかり洗脳されていた。

 ただし、夜の女王の子宮に監禁されている、彼女の魂の半分は、「ちっ」っと舌打ちしていた。

 弱虫ケンイチの魂と、同居していること自体は、結構気に入っていた。少なくとも、魔王城で暮らしていたころよりずっと。

 どこまでも素直になれない、サーシャの性悪魂だった。
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