改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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143 非情! 魔王の決断

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 魔族領、仮設王宮。王宮は、夜の女王と彼女の眷属によって、徹底的に破壊された。

 それはそれは見事に。

 現在王宮の再建工事に取り掛かっているが、経費的に人族と戦う余裕など全くない。

 だが、その自明の理屈が、わからないバカもいる。

 今日は月に一度の幹部会。女魔王の下に、王子や将軍クラスの幹部連中が集まっている。

「陛下、現在我が王国は、疲弊の極みにあります。
人族の大群に攻め込まれたら、長期戦はもちません。
一つ牽制を入れるのが上策かと」
 第一王子が献策する。

「一の王子よ、人族の情勢を探る手立ては、講じているのか?」
 女魔王は憂鬱な顔で言う。脳筋チャンピオンのこいつに、そんな器用なこと、できないだろうけどね……。

「それは……」
 第一王子は言葉に詰まる。

「陛下、それがしは、面白い情報をつかんでおります」
 第二王子が、得意顔で言う。

「ほほ~。その情報とは?」
 女魔王は、少し身を乗り出す。第二王子は、多少知恵が回る。戦闘能力は、第一王子より相当劣るが。

「それがしの側室の妹が、ドラゴンと情を通じました」

「ほほ~……。情を通じたということは、人族に変身できる真竜?」
 女魔王は、いっそう身を乗り出す。多分その側室とは、サキュバスの血を引く第三夫人だろう。

「さようでございます。
メスにはかないませぬが、オスといえど、ドラゴンはドラゴン。
ムサシのパーティとも、互角に戦えましょう」
 第二王子は、いっそうのどや顔で言う。

お分かりだと思うが、彼は、まだムサシが現役勇者だと、思い込んでいる。

 女魔王はがっくり。さすがに彼女は、ある程度人族の情報を持っている。

「お主、ムサシが引退し、新しい勇者が召喚されたこと、知らないのか?
光の女神も、ドタバタしているようだ。
女勇者を召喚して逃げられた。
その次の勇者は、いまだ初心の域を出ていないそうだ。
つまり、人族側も、今現在侵攻してくる余裕はない。
もちろん、一の王子が言うように、牽制を入れる程度なら可能だ。
ドラゴンがいれる牽制なら、面白いことになろう」

「それがしに、お任せくださいませ!」
 第二王子は、唇をかむ第一王子をちらっと見てほくそ笑んだ。

 次期魔王レース、バカ兄を一歩リード!

「よかろう。
ただし、金はそれほど出せぬぞ」

「御意!」
 第二王子は、深く頭を垂れて応えた。

「陛下!
ドラゴンの手を借りるなど、魔族の名折れ!
勇者が代替わりしたなら今が好機!
それがしが、単騎でも人族領に攻め込んで……」

 はぁ~~~、と、女魔王は深くため息をつく。
「よかろう。
単騎でやってみよ」
 第一王子だけには、王位を継がせられない。

逝ってらっしゃ~い。

女魔王は、第一王子を見限った。

「マジで、単騎?」
 第一王子はひるむ。

「お主がそう言ったであろう?」

「さようでございますが……」

「見事牽制してみせよ!
今、危急にある魔族のために」
 
「はっ、ハハハハ、しかと承りました~~~!」
 やけくそでも、ひきつった笑いしか出ない、第一王子だった。


 魔族、北の果ての城塞。その城砦守備の最高責任者は、六人の王子の内、第二王子が務めている。

 ちなみに、王子たちは、生まれた順番で呼ばれる。真名は本人以外誰も知らない。
 それというのも、この世界では呪術を操れる者が存在するからである。特に魔族には、巧みな者もいる。
呪いをかけるには、対象の真名を知ることと、そのものの一部、例えば毛髪などが必要となる。

 よって、魔族の王族や高位の貴族は、真名を決して明かさない。兄弟は他人の始まりというが、王族や貴族にとって、兄弟は、一番油断できないライバルなのだ。

 その北の城塞の隅に、第二王子の別宅がある。もっとはっきり言えば、本宅に置けない筋の側室を、彼は別宅で囲っている。

 サキュバスの貞操観念は、超ゆるゆる。魔族に限らず、それはこの世界の常識だった。

 必然的にサキュバスは、軽い男に重宝され、女からは徹底的にさげすまれる。

 第二王子側室、ミーサの私室。ドアがノックされた。ミーサは「どうぞ」と、入室を許す。

「お姉さま、参っちゃった」
 ミーサの妹、レイサが浮かぬ顔で入ってきた。

「さすがドラゴンね。
あなたを参らせるなんて。
私もつまみぐい、しちゃおうかな」
 ミーサはベッドで体を起こす。薄いネグリジェは彼女の正装。
スリムなボディーに、豊満なお乳と桃尻。蠱惑的な肢体が、透けて見える。

 今入室してきた妹も、ネグリジェ姿。ボディーも全然姉に負けてないボン・キュッ・ボン。

 姉妹の容貌は、泣きぼくろの位置が、左右対称であるだけ。つまり、一卵性双生児。
 つややかな銀の長い髪に、卵型の小顔。顔のわりに目が大きく、少し垂れている。
 その目の下の泣きぼくろが、ぽってりとした赤い下唇と相まって、なんともエロっぽい。

「じゃなくて……。
早いのよ。
びっくりするほど。
玄関入って五秒で発射?」

「マジで!」

「マジで。見掛け倒し?
あの図体でどうしてなのよ!
それに、体力はあるはずでしょ?
早いは、ちっちゃいは、一発でごめんなさい!
びっくりだよ!」

「そうなんだ……」

「そうなのよ。
いくら第二王子の命令とはいえ、あれはない!」

「噂では聞いた。オスドラゴンの生殖能力は、なさけないほど。
メスが満足できないわけだ?」

「ちょっぴりかわいそうなほど。
戦闘はあんなに強いのに」
 
「まあ、がまんしてよ。
ラクチンでいいじゃない?」
 無責任な姉の言葉でも、うなずくしかない妹だった。

さすがに、魔王の息子には逆らえない。
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