改訂 勇者二世嫁探しの旅

nekomata-nyan

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157 秘伝を授けます!

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 翌日の昼前、ケーンはかいがいしくブランチの支度をする。

 ゆうべは予告通り、二人を寝かさなかった。疲れ切った二人は、まだベッドから出てこない。

ふふ、「初物」をいただくと、寿命が一年延びるというけど、また二年延びたかな?

 かあちゃんと魂気をかわしたら、誤差になっちゃうけど。

「ケーンさん!
ごめんなさい!
寝坊しちゃいました!」
 アリスが寝室から飛び出してきた。

「おはよう。
寒くない?」
 アリスは、閑寂の裸体をさらしたままだった。

「あっ……。
見苦しいものを……」
 アリスはしゃがんで裸体を隠した。目が覚めたら日が高くなっているので、びっくりして飛び起きたのだろう。
 うん! かわいい!

「見苦しくなんかないよ。
なるべく目立たない装備、準備しておいたから、受け取って。
皮鎧が入っている方のかご」

「はい。遠慮なく」
 アリスは両手で手ブラし、寝室へ駆け込んだ。

武器は別として、嫁の防具に、妥協するつもりはない。
 ケーンは、神話級てんこ盛りの防具を、二人の新しい嫁に準備していた。


 ケーン心づくしのブランチを終えたころ。

「ケーンよ。
聞いてよいか?
用意してくれた下着や、インナーとスカート、ローブやアクセサリー。
なんか、ただならぬ気を感じるのじゃが……」
 さすが元伯爵令嬢にして、魔法学校屈指の秀才。マリアはその装備が、尋常でないことに気づいていた。
下着のパンツデザインも尋常ではなかったが。面積極小で超フィット。はいた感じがしない。外見的には、三分の一ほど、ほぼほぼ、はいていないに等しいし。

「一人前になる前に、どうかと思ったんだけど、二人の柔肌が少しでも傷つくのはいやだから。
そのうち効果に気付くと思うけど、今まで通り『いのちだいじに』で、クエストこなして」
 まだまだ半人前の二人に、防具の詳しい説明をしたら、増長油断させてしまう。
一見ちょっと高級かな、という感じのものを選んだから、他のパーティメンバーに、ねたまれることはないだろう。
 しばらくの間は。

 他のメンバーにも、そこそこの装備を渡して、フォローするべき? うん、そうしよう。女の子には。

「もしや、猫娘の装備と同等?」
 マリアは、恐る恐る聞く。

「ミーちゃんが言ってただろ?
気にしちゃ負けですニャン!」
 とぼけてごまかすケーンだった。


今日アリスのパーティはお休み。

アリスも補助魔法を学びたいということで、ケーンは二人の面倒をみることにした。
ケーンの渡した装備は、色々とあれなので、二人には別系統の運動着を用意した。
別の意味であれだけど。

「ケーンさん、このかっこう、動きやすいことは認めますけど……。
なんか恥ずかしいです」

「下、厚めの下着ではないか?」
 アリスもマリアも、腑に落ちない様子。

「下着はちゃんとはいてるだろ?
下着の上にはいてるから、全然問題なし!
それはブルマと呼ばれる、異世界の運動着だ。
異世界人(のオタク男子)にとって、ロマンの塊。
伝説の衣装だ!」
 ケーンは、苦しい言い訳をする。だって、二人とも超似あいそうだと思ったから!

 超似あってるし! 

 マリアの、ぽちゃぽちゃっとした太もも!

 お尻の感じも、よろしいようで。

 アリスの引き締まった太もも!

 ジビエ的な、野趣あふれる魅力。

 お尻も小さく、すんなりと。あれも、いい!

 それにね、二人とも、ノーでブラだから……。おっぱいと、その先端の形状がうっすらと。

 その「うっすらと」が、体服の味わいなのですよ!

 でしょ?

「まあ、よかろう。
で、どうすればよいのじゃ?」
 マリアが開き直って聞く。足は丸出し。半そでの上着の胸には、白い布が縫い付けてあり、変な記号が書かれている。

 さっきもらった装備とは別の意味で、一種異様な気が感じられる。

 もしや『ろくねんいちくみ まりあ』という記号は、未知の神聖文字のたぐいであろうか? 魔法学校でも習わなかった。
今日もらった冒険用の装備と比べたら、やけにチープな気がするけど。

「マリアもアリスも、身体強化魔法は使えるみたいだな?
だけど、瞬間的にしか発揮できない。
そうだろ?」
 ケーンの言葉に、二人はうなずく。マリアは魔法学校で習ったし、アリスは村で狩りや訓練を重ねるうち、自然に身に付いた。アリスの才能の器も、なかなかのものなのだ。

「普通の身体強化魔法は、いわば火魔法の応用だ。
原理は筋肉内で燃焼させる魔素を、瞬間的に高める。
少し高度な強化魔法は、水属性と併用する。
つまり、血液中の魔素濃度を上げて、燃焼火力をあげるわけ」

「なるほど! 筋肉で魔素が燃えてるから、運動すれば体が熱くなる。納得です!」

「フム。そんな原理があったのか。
学校では教えてくれなかったのじゃ」
 マリアは、腕を組んでウムウムとうなずく。魔法学校では、『筋力強化』という詠唱で、発動すると教えられただけだった。
魔法学校で落第するような生徒は、発動できないままでサヨナラだ。
魔法学校は入学も厳しく、卒業はもっと厳しい。学費はさらに厳しい。

「何事も原理を知ることは大切。
だけど、普通の強化魔法には、大きなデメリットがある。
それは筋肉や関節、腱に大きな負荷がかかること。
体ができてないのに、強化魔法だけ上達してしまったら、体が壊れてしまう。
だから、それなりの瞬間的強化で、十分ということになる」
 アリスとマリアは、ウムウムとうなずく。

「そこでこれ!」
 ケーンは、アイテムボックスから、素材を取り出した。

「何かの金属と液体。それと、黒いヒモ?
金属はミスリルに見えるのじゃが」
 マリアが、ぼそっと言う。

「その通り。金属はミスリルだ。
液体はスライムキングの体液。
ヒモはゴムガムの樹液を加工した。
つまり、自分の体の中の骨をミスリルに、腱をゴムガムに変えるイメージ。
関節を保護するため、関節部にキングスライム体液を満たす感じで。
それで継続的な大きい負荷に、十分耐えられる」

「そんな無茶な~~~!」
 顰蹙の叫びをあげる、アリスとマリアだった。

「無茶じゃない!
父ちゃんや、俺の師匠二人はできる!
キキョウと総子も!
もちろん、体をミスリルやゴムガムに、変えるわけじゃない。
魔力発動の基本はイメージだ。
イメージさえしっかりしていれば、効率的に魔力を体全体の強化に発揮できる」
 ケーンの気合が入った説明に、二人はなんとなくできそうな気がした。
この「できそうな気にさせる」というのが、魔法の指導において、何より重要なことなのだ。

 ケーンは無理な注文を、二人にしたつもりはない。マリアはもちろんだが、アリスも十分な魔力を持っている。
アリスは庶民出身なので、有能な魔法の師に、巡り合わなかっただけだ。

 もっとも、ケーンが指導しているのは、解剖学や生理学的な知識を持っていた、父親ケンイチオリジナルの身体強化術である。
 いわば、ケンイチの身近な者だけに伝授されている秘伝なのだ。
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