【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
79 / 230

79 妊婦嫁四人の日常

しおりを挟む
 妊婦四人は、好天時の日課、散歩に出かけた。湖岸周囲を整備した遊歩道。

湖を取り巻く広葉樹は、少し色づき始めた。館には四人と、アンリが残っているだけだった。

五人以外は、冬に向け雷属性の、魔石採掘に出かけている。
真冬には、ソーラーパネルの発電効率が落ちるからだ。

俊也によれば、石油を使う発電機もあるそうだが、化石燃料を、できるだけ輸入したくないとか。
水力発電も冬場湖や川は凍るし、雪が解けたら、ソーラー発電で十分まかなえる。そこで真冬は魔石発電に頼ることが多い。
 
ところが、雷属性の魔石は、前に記したとおり極端に少ない。
俊也の推定では、雷が落ちた周辺の魔石が、電力を吸収し、雷属性の魔石に変わるのではないかということ。

それなら、雷の魔法を魔石に落とせばいいではないか、ということになるのだが、残念なことに誰も雷魔法は発動できない。
ニーズがないから、研究する者が誰もいなかったのだ。

雷魔法も、理論的には可能だと分かっている。人工的に積乱雲を起こせばいい。だが、落ちる場所はランダムだ。

間違って、魔法発動者に落ちる可能性もある。それより、もっと簡単で有効な魔法がいくらだってある。

イメージ魔法を使ったら余裕? 確かに理論的には正しいだろう。
だが、実行に踏み切れない事情があった。館の住人は、全員雷が大嫌いだから。
特に、一番頼りになる猫又大先生は、雷が起こりそうな気象条件になれば、音を遮断する結界に閉じこもり、頑として出てこない。

したがって、偶然生まれた雷の魔石を探すしか手はないのだ。


「ルマンダ、やっと『妊婦さんですか?』と聞かれるぐらいのお腹になったね。うらやましい……」
 ルラはルマンダのお腹を見ながら、ため息をつく。

「ごめんなさいね。夜伽の再開ですよね?」
 食べ過ぎのお腹程度の三人はうなずく。

この世界の医療研究は、一向に進まない。知識人は、例外なく魔法が使える。治癒魔法があるから、大抵の病気やケガが治せる。
出産も魔法でごく短時間の無痛分娩が可能だ。文字通りスポンと生まれてくる。

もちろん庶民は、全く状況が違うが。

この世界の医療とは、魔法、もしくは民間療法のどちらかに偏っている。
したがって、出生率の高い庶民は、出産時や乳幼児の死亡率も高く、全体として人口バランスが保てている。


ところが、この世界に混入した異世界の知識人は、こと嫁に関して、超心配性だった。
もともと文系志望だった俊也は、必要に迫られ、理系人間に生まれ変わった。

現在彼は、日本で蓄えた医療の情報を基に、徹底した健康管理を妊婦に要求する。

だから、安定期に入るまで、頑として挿入しようとはしない。ルマンダは、昨日やっと妊婦セックスの許可が下りた。


「でもね、浅く、早く、が徹底してるんですよ。側臥位で……」
 セリフ内容がピー、ズキュンの連続なので省略。
要するに、物足りないとルマンダは訴えたわけ。

「でも、避妊の必要が全然ないから、避妊清浄魔法なしなんでしょ? 
それだけでもうらやましい。
俊也の魔力が、長く全身で駆け巡るあの感覚?」
 エレンが、むっとした顔でクレーム。精を撃ち込まれた後一時間には及ぶ満腹感!
 ルマンダによれば、ことが終わったら、普通逆流してくるそうだが、すべて体に吸収される。

「それなんですよ! エレンさん、私の魔力量、量ってもらえます?」
 ルマンダは思い出した。今朝起きた時、自分の魔力量が、増えている気がしてならなかったのだ。

採掘隊を送り出す慌ただしさにまぎれ、忘れていたが。あれは久しくなかった感覚だ。

「どれどれ……」
 エレンは、ルマンダのおでこにおでこをくっつける。

「上がってるよ! どうして? ルマンダ、たしか、ほとんど上がらなくなってたでしょ?」

「そうなんですよ、エレンさん。多分器の許容量いっぱいになってたと思うんです。
自然増はあったかもしれないけど、みなさんも感じられない程度でしょ?」
 三人はうなずく。セックス効果が強烈過ぎて、少々自然増しても気づかないだろう。

そして四人全員に言えるのは、器の限界に間違いなく達していたということだ。


「ということは?」
 フラワーがつぶやく。

「赤ちゃんの魔力の器が、母体に反映される?」
 エレンが継ぐ。そして全員の視線はルラに向く。

「どうしよう。もうこれ以上魔力増えなくていいんだけど」
 困惑しかないルラだった。現段階でさえ、ルラの魔力量を測定できる者はいないから。

たとえば、目の前の湖なら、でかいと実感できる。
海ならどうだと、聞かれたら、誰もがでかいと答える。
だが、どれほどでかいのかという実感は、多分だれも持てないだろう。よほど高い位置から俯瞰しない限り。

「安心しなさい。あなたの魔力量は、寿命が尽きるまで謎だから。私達の子孫、しっかり守ってね」
 ポンポンと仲間の肩をたたくエレンだった。

多分あなたやフラワーもだよ。心の中でつぶやくルラだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...