【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
179 / 230

179 ミスリードぶち壊した!

しおりを挟む
 さくらは、息を飲んで二人の様子を見守る。

「どう、ですか?」
 前菜に手をつけた二人に聞く。

「おいしい」
 芙蓉が言う。

「けど、が付く」
 静香が言う。

「けど?」

「普通?」
 芙蓉が言う。
「高いお金払う気にはなれない、そんな感じ?」
「たしかに」
 静香の感想に、芙蓉はうなずく。

「前菜だけじゃわからないでしょ? 
メインを」
 二人はうなずき、メインの肉料理に手をつける。

「一つ聞きたいんだけど。
あなた、男系社会がどうのこうの言ってたけど、パワハラとかセクハラされたわけ?」
 静香が聞く。

「特には。
だって、教えてくれないんです! 
こんなに可愛いんだから、少しは加点があっていいでしょ? 
女料理人は希少な存在です! 
パンダだってホワイトタイガーだって、希少な生物だから優遇されるんです! 
美人スーシェフ、それだけで店のウリになるでしょ?」
 さくらは憤然として言った。静香と芙蓉は深くため息をついた。

「もう一つ聞く。
あなた、料理以外にも体を売るつもり? 
お客は料理を食べにくるのよ!」
 静香の厳しい言葉に、さくらは言葉に詰まった。

「わかってるんです。
要するに、私に根性がないだけなんです。
先輩の味と技を盗む、いまだに前近代的な徒弟制度。
それがこの世界だって。
どの店でも最初は可愛がってくれるんですよ。
私がかわいいから。
だけど、そのうち私の『甘さ』は、必ず見抜かれます。
だんだん店に居づらくなって……。
もう三十だし……。『下積み』は正直厳しい歳です。
メイドでいいです。
肉奴隷はちょっと、ですけど。
雇ってください」
 さくらはべそをかきながら、深く頭を下げた。

「最初から正直にそう言えばいいのよ。
メイド決定」
 静香は再びナイフとフォークを取った。

「あの~…青形さんに、マジでそっちの気があるんですか?」
 芙蓉がおずおずと聞く。

「俊也君、には、全然ない。
どっちかといえばM?」
 静香は平然として応える。

「『には』に、なんかひっかかるんですけど」

「もう一人の俊也君には多少。
頑丈な人にしかS気出さないから。
何、そんなに気になるの?」
 静香は軽く聞く。

「そんなわけないでしょ! 
やっぱり教え子のお兄さんですから」
 芙蓉は「もう一人の俊也君」が気になったが、怒ったようにフォークとナイフを取った。

何を隠そう、芙蓉は「もう一人の俊也君」、つまり、レジに対し、密かに憧れていた。

うん、「普通」にはおいしい。『頑丈な人』ってどんな人なんだろう? 

俊也に関する疑問は尽きなかった。


「ただいま~…、あら、お客様?」
 専門学校から帰ったカナだった。
「高校時代の後輩。美術部で一緒だったの。
早かったのね?」
 静香が応える。

「いらっしゃい。琴ちゃんの都合が悪くなって、女子会中止にしたんです」
 カナは二人に挨拶。二人も「お邪魔してます」、と礼を返す。

「夕食は?」
 静香が聞く。
「まだ。何か作ります」
 カナは応える。

「これ、まだ全然手をつけてません! 
よろしかったらどうぞ!」
 さくらはイスから立ち上がってそう言った。
この子、なんだろうと思いながら。多分嫁の一人なのだろうが。だけど、メイドとしての得点稼ぎはできる。

「カナちゃん、いいから食べなさい。
ぽっちゃりさんは海原さくら。
メイドとして私が雇うことにしたの。
メガネさんは安倍芙蓉。
朝陽ちゃんの担任よ」
 静香が二人を紹介する。

「へ~、メイドに。それに朝陽ちゃんの。
よろしくお願いします。
ホントに、いいんですか?」
 カナはどちらにともなく聞く。

「どうぞ! 一応は料理人の端くれですから。
だけど静香さん、ぽっちゃりさんという紹介、ひどいと思います!」
 さくらは、ほっぺたをふくらませて抗議する。

「高校時代、かわいかったことは認める。
だけど、自分で『美人スーセフ』なんてよく言えたわね? 
体絞ってから言いなさい」
 静香は冷厳に現実を突きつける。

「叙述のトリック、あっさりぶち壊した!」 
 さくらが半べそで抗議。その「現実」を一番知っているのは彼女自身だ。

「誰をミスリードしたいのよ? 
元かわいかった、三十路(みそじ)ぽっちゃりさん?」
 静香は見事にクールな真顔で言う。

「相変わらずのドSぶり!
きく~!」
 複雑な笑顔の、さくらだった。ぐさっとえぐられたが、なんだか懐かしい気もするから。

 芙蓉は苦笑しながら思う。

この二人、高校時代から全然変わらない。さくらちゃんの体型は著しく変わったけど。

「ときにフーちゃん、あなたメガネ外したいと思わない? 
似合ってるけど不便でしょ?」
 静香は氷の女王様から一転、やさしい先輩の顔で言った。

「前に言いませんでした? 
コンタクト、合わなくて」
 静香さん、私にはなぜだか甘いんだよね。昔から。
芙蓉は、そう思いながら言う。

「エンランちゃんなら、視力正常に戻してくれるよ。
よかったら頼んであげる」

「本当ですか? 
是非!」
 芙蓉は嫁たちの超人的能力を、静香から多少聞いている。

「静香さん! 
フーちゃんと、態度違い過ぎてます!」
 さくらが涙目で抗議。

「フーちゃんからかっても、おもしろくないんだもん」
 あっさり片付ける静香だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...