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214 おっさんズラブかよ!
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「さて、この辺でいいだろう」
俊也は短距離転移を繰り返し、乾城(けんじょう)近郷にたどりついた。
乾城は皇都から見て乾(北西、戌亥・いぬいの方角)にあたる。
カムハンの北の守りを担う城砦だ。
カムハン三英傑の一人、リュウ将軍が指揮をとっている。
ヤン将軍のクーデターを、スムーズに進めるためには、二人の英傑を直接会わせる必要がある。
三英傑は互いに認め合う、いわば「刎頸の交わり」とでも形容すべき仲だという。
ヤン将軍とリュウ将軍が手を結べば、皇都の守りを固めるカン将軍を、動かすことが可能だと俊也は読んでいる。
三将軍とも、皇帝の無謀な拡大戦略には、危機意識をもっていると、ヤン将軍から聞いたから。
「お~い。ヨウネイさん、送って」
俊也は魔法陣に向かって呼びかける。
「は~い」と、エンランの声が聞こえた次の瞬間。
ヤン将軍の片腕、ヨウネイ千騎長が、こちらの魔法陣に到着。
俊也は目隠しされたヨウネイの手をひき、魔法陣から連れ出した。
俊也は目隠しを外してやる。
「う~ん……。あれは乾城…か」
ヨウネイは、呆然と城を見詰めた。間違いなく乾城だろう。彼は乾城を見るのは初めてだ。「だろう」としか言えないのは、仕方ないことだ。
ましてや、ついさっきまでは、はるかに離れた南の地にいたのだから。
「この魔法の詳細、誰にでも見せられないことは、おわかりですね?
もう一度目を閉じてください。
馬を送ってもらいます」
「承知」
ヨウネイは、素直に俊也の指示に従った。
「ヨウネイさんの馬、送って」
「は~い」
マサラの声が聞こえた次の瞬間、目を閉じたヨウネイは、愛馬のいななきを聞いた。
あのかわいい女の子たちが、文字通り一騎当千の魔導師だとは……。
それに何? 全員俊也殿の嫁?
心の底から言いたい!
バクハツシロ!
おっかないから、絶対言えないけど。
ヨウネイは、無事リュウ将軍との面会がかなった。
リュウ将軍は、ヨウネイの顔を見て驚いた。
ヤン将軍からの使者だとは聞いたが、南サミア戦線で、彼が長くヤンの元から離れることは、まず考えられない。
「リュウ将軍、お人払いを」
ヨウネイは、将軍をにらむように見据える。将軍は軽くうなずき、警護の兵を遠ざける。
「ヤン・ハン将軍からの親書です」
将軍はまたうなずき、親書を受け取る。
読んでずっこけそうになった。
はあ?
『今すぐ会いたい』?
あいつ、バカじゃないの?
「私がサミアを発ったのは、一時間ほど前です」
ヨウネイは、わけあり顔で笑った。
はあ?
お前もバカ?
サミアでは、バカになっちゃう病気でも、流行ってんの?
きょとんとするリュウ将軍だった。
リュウ将軍は、半信半疑ながらも、ヨウネイの案内にしたがって、「デート」の待ち合わせ地点に着いた。
そこには見かけない様式のテントが張ってあった。
「よう! 久し振り!」
いかついオヤジがテントから出てきた。
「マジで来やがった。
どうなってんだよ!」
リュウ将軍は、あきれ返ってそう言った。
「いや~、お前のことが恋しくて、恋しくて。
戦に手がつかない」
ヤン将軍はとぼけて答える。
「勘弁しろ。おっさんズラブかよ!」
「よくわからないツッコミ、サンキューでした。
テントに入れよ。全部話すから。
ただし、お前だけな。
サシで話したい」
リュウ将軍は一つうなずき、ヤン将軍の後に従った。
「おい、サシじゃなかったのか?」
テントの中には、見知らぬ若い男がいた。
「はじめまして。訳あって名前は明かせません」
若い男は、柔和に微笑んでそう言った。
「こいつ、おっかねぇぞ。
俺はひどい目にあった。
皇帝陛下はもっとひどい目にあった。
最近ひもじくないか?」
ヤン将軍は、にやにやしながら言う。
「ひもじい?
皇都からの補給のことか?
たしかに途絶えてる。
その男が、なんかやったのか?」
「やった、やった。
まあ、これで兵のひもじさ、救ってやれ」
ヤン将軍は、金貨がぎっしり詰まった箱を開ける。
「ずいぶん豪勢だな。サミアから分捕った?」
「この男からのプレゼントだ」
ヤン将軍は目で俊也を示す。
「まあ、ありがたいちゃ、ありがたいんだけど。
餓えているとまではいかないが、給与は当分半額支給だ。
兵の士気にかかわる」
「だろうな。
ものは相談だ。
俺、皇帝やっつけちゃう。
協力しろ」
ヤン将軍は、いたずらを持ちかけるように、さらっと言った。
「はあ?
気安く言ってくれちゃうね!
腐っても皇帝だぞ!」
この男、気でも狂ったか! リュウ将軍は、頭に血が上った。
「腐ってることは、認めるんだな?」
ヤン将軍は、表情を改めて念を押した。
「あ…、まあ、認めるしかないな。
かつての英勇様は、単なる業突く張りジジイだ。
お前が一番迷惑受けてることも認める」
リュウ将軍は、少しひるんで応える。ヤンが、これまで連戦連勝の戦果を挙げていることは聞いている。
だが、イスタルトと事を構える事態になったら、十中八九敗軍の将となるだろう。
「じゃ、やっつけよう。協力しろ」
「そうは言っても……」
「俺にはこの魔導師が付いてる。
はっきり言って化け物だ。
証拠、見たいか?」
ヤンは自信満々の目で言う。
「あ、ああ……」
リュウは、俊也を改めて見る。
弱そうな男にしか見えないし!
「大魔導師殿、乾城、ぶっ壊して下さい」
ヤン将軍は、ニヤッと笑って俊也を見る。
「了解!」
「ちょ、待てよ!」
リュウ将軍は慌てた。
「ジョークだよ。
この大魔導師殿は、それくらいたやすくやってのける。
それは嘘じゃない。
俺と皇帝が、どんなふうにひどい目にあったか、よ~く聞け……」
そう前置きし、ヤンは、俊也が行った、これまでの作戦内容を詳しく語った。
「マジかよ……」
「マジだ。俺がここにいるのは、何よりの証拠だ」
ヤン将軍は、リュウ将軍の肩をぽんぽんと叩いた。
俊也は短距離転移を繰り返し、乾城(けんじょう)近郷にたどりついた。
乾城は皇都から見て乾(北西、戌亥・いぬいの方角)にあたる。
カムハンの北の守りを担う城砦だ。
カムハン三英傑の一人、リュウ将軍が指揮をとっている。
ヤン将軍のクーデターを、スムーズに進めるためには、二人の英傑を直接会わせる必要がある。
三英傑は互いに認め合う、いわば「刎頸の交わり」とでも形容すべき仲だという。
ヤン将軍とリュウ将軍が手を結べば、皇都の守りを固めるカン将軍を、動かすことが可能だと俊也は読んでいる。
三将軍とも、皇帝の無謀な拡大戦略には、危機意識をもっていると、ヤン将軍から聞いたから。
「お~い。ヨウネイさん、送って」
俊也は魔法陣に向かって呼びかける。
「は~い」と、エンランの声が聞こえた次の瞬間。
ヤン将軍の片腕、ヨウネイ千騎長が、こちらの魔法陣に到着。
俊也は目隠しされたヨウネイの手をひき、魔法陣から連れ出した。
俊也は目隠しを外してやる。
「う~ん……。あれは乾城…か」
ヨウネイは、呆然と城を見詰めた。間違いなく乾城だろう。彼は乾城を見るのは初めてだ。「だろう」としか言えないのは、仕方ないことだ。
ましてや、ついさっきまでは、はるかに離れた南の地にいたのだから。
「この魔法の詳細、誰にでも見せられないことは、おわかりですね?
もう一度目を閉じてください。
馬を送ってもらいます」
「承知」
ヨウネイは、素直に俊也の指示に従った。
「ヨウネイさんの馬、送って」
「は~い」
マサラの声が聞こえた次の瞬間、目を閉じたヨウネイは、愛馬のいななきを聞いた。
あのかわいい女の子たちが、文字通り一騎当千の魔導師だとは……。
それに何? 全員俊也殿の嫁?
心の底から言いたい!
バクハツシロ!
おっかないから、絶対言えないけど。
ヨウネイは、無事リュウ将軍との面会がかなった。
リュウ将軍は、ヨウネイの顔を見て驚いた。
ヤン将軍からの使者だとは聞いたが、南サミア戦線で、彼が長くヤンの元から離れることは、まず考えられない。
「リュウ将軍、お人払いを」
ヨウネイは、将軍をにらむように見据える。将軍は軽くうなずき、警護の兵を遠ざける。
「ヤン・ハン将軍からの親書です」
将軍はまたうなずき、親書を受け取る。
読んでずっこけそうになった。
はあ?
『今すぐ会いたい』?
あいつ、バカじゃないの?
「私がサミアを発ったのは、一時間ほど前です」
ヨウネイは、わけあり顔で笑った。
はあ?
お前もバカ?
サミアでは、バカになっちゃう病気でも、流行ってんの?
きょとんとするリュウ将軍だった。
リュウ将軍は、半信半疑ながらも、ヨウネイの案内にしたがって、「デート」の待ち合わせ地点に着いた。
そこには見かけない様式のテントが張ってあった。
「よう! 久し振り!」
いかついオヤジがテントから出てきた。
「マジで来やがった。
どうなってんだよ!」
リュウ将軍は、あきれ返ってそう言った。
「いや~、お前のことが恋しくて、恋しくて。
戦に手がつかない」
ヤン将軍はとぼけて答える。
「勘弁しろ。おっさんズラブかよ!」
「よくわからないツッコミ、サンキューでした。
テントに入れよ。全部話すから。
ただし、お前だけな。
サシで話したい」
リュウ将軍は一つうなずき、ヤン将軍の後に従った。
「おい、サシじゃなかったのか?」
テントの中には、見知らぬ若い男がいた。
「はじめまして。訳あって名前は明かせません」
若い男は、柔和に微笑んでそう言った。
「こいつ、おっかねぇぞ。
俺はひどい目にあった。
皇帝陛下はもっとひどい目にあった。
最近ひもじくないか?」
ヤン将軍は、にやにやしながら言う。
「ひもじい?
皇都からの補給のことか?
たしかに途絶えてる。
その男が、なんかやったのか?」
「やった、やった。
まあ、これで兵のひもじさ、救ってやれ」
ヤン将軍は、金貨がぎっしり詰まった箱を開ける。
「ずいぶん豪勢だな。サミアから分捕った?」
「この男からのプレゼントだ」
ヤン将軍は目で俊也を示す。
「まあ、ありがたいちゃ、ありがたいんだけど。
餓えているとまではいかないが、給与は当分半額支給だ。
兵の士気にかかわる」
「だろうな。
ものは相談だ。
俺、皇帝やっつけちゃう。
協力しろ」
ヤン将軍は、いたずらを持ちかけるように、さらっと言った。
「はあ?
気安く言ってくれちゃうね!
腐っても皇帝だぞ!」
この男、気でも狂ったか! リュウ将軍は、頭に血が上った。
「腐ってることは、認めるんだな?」
ヤン将軍は、表情を改めて念を押した。
「あ…、まあ、認めるしかないな。
かつての英勇様は、単なる業突く張りジジイだ。
お前が一番迷惑受けてることも認める」
リュウ将軍は、少しひるんで応える。ヤンが、これまで連戦連勝の戦果を挙げていることは聞いている。
だが、イスタルトと事を構える事態になったら、十中八九敗軍の将となるだろう。
「じゃ、やっつけよう。協力しろ」
「そうは言っても……」
「俺にはこの魔導師が付いてる。
はっきり言って化け物だ。
証拠、見たいか?」
ヤンは自信満々の目で言う。
「あ、ああ……」
リュウは、俊也を改めて見る。
弱そうな男にしか見えないし!
「大魔導師殿、乾城、ぶっ壊して下さい」
ヤン将軍は、ニヤッと笑って俊也を見る。
「了解!」
「ちょ、待てよ!」
リュウ将軍は慌てた。
「ジョークだよ。
この大魔導師殿は、それくらいたやすくやってのける。
それは嘘じゃない。
俺と皇帝が、どんなふうにひどい目にあったか、よ~く聞け……」
そう前置きし、ヤンは、俊也が行った、これまでの作戦内容を詳しく語った。
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