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先輩
第七話
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九月──
「あのね、恭介くん。僕ね、好きな人がいるんだ」
「え?」
「それで仕事が手につかないなんて、子供だよね……」
「悩んでるってこと?」
「うん」
「片思い、してんだ?」
「ど……うかな」
文哉は頬を赤らめ首元を撫でている。こんな表情は見たことがなかった。どうかなということは脈ありということか。正直頭が真っ白でうまく受け止められない。
昼休みに文哉から今夜ごはん奢ってと言われてから考えていた。文哉がここ数日ずっと暗かったし、悩みを抱えているのは伺えた。仕事のことだったら力になれるが、恋の悩みだったとは……。
「恭介くん?」
「あ、うん。そっか、文哉にもそういう人が出来たか」
「なにそれ、ふふ」
「こんな話、今までしたことなかったし」
「僕も恭介くんに打ち明けるとは思わなかった」
恥ずかしそうに髪を触る文哉は、悩んでる割にやはり幸せが滲んで見える。気のせいだろうか。
「その人のこと好きなんだな? 仕事が手につかないほど」
「うん、好き、大好き」
「そっか……想いは伝えたのか?」
「ううん、まだ。何回かデートに誘われたりはしてるんだけど」
「デート……」
「その人のおうち行ったりもしてる」
相手の家に行ってる……それって……。
「じゃあなんで悩んでるんだ?」
「言葉にしたら、終わっちゃいそうで怖くて」
いつの間にか俯いていた自分に気がついた。じっと自分の膝小僧を見つめていて文哉の顔が見れない。もう既に関係は始まっていて、歩きだしてるってことじゃないのか。それを今更言葉にしようとしているということか。
ちゃんと恋人もいたことのない僕が、文哉に何を言えばいいというのだろうか。
「あのね、恭介くん」
「うん」
「相手がね、あの……男の人……なんだ」
「え?」
さすがに驚いて文哉を見た。文哉は作り笑顔を向けているがその内心はそうではないだろう。僕に打ち明けた本意は分からないが、打ち明けるということには勇気がいる。僕だって文哉と同じなのに、誰にも話したことはない。
分かるのは文哉はどうやら相思相愛ということ。
文哉が最近会社外の人間と遊んでいるらしいことは知っていた。それも取引先の。もしかしてと、ある人物が浮かぶ。気が合うと言っていた。
「……うまくいくといいな」
それしか言えなかった。
「えっ、待って。それだけ? びっくりしたとか、なにもないの?」
「そりゃ、驚いたけど、それだけ」
「そ……そう?」
文哉は戸惑いながらも少し安心したのか椅子の背もたれに寄りかかる。僕もそうだから気持ちがわかるだなんて、軽く言えない。それを文哉に話して余計に混乱させたくなかった。
「文哉が好きになるのに性別なんて関係ないだろ?」
「恭介くん……」
文哉の大きな瞳からじんわり涙が滲んでる。昨日までならその涙を指で掬うことが出来たのに。今は心にブレーキがかかる。
「泣くなよ。文哉が好きなら、あっちも好きになるに決まってる。お前はかわいいし、優しい。両想いのはずだ」
「振られたら、恭介くん、また飲みに連れてくれる?」
「あぁ、でも、告白がうまくいくことを願ってるよ」
「ありがとう」
文哉を部屋に泊めるくらいだ、この告白は成功するに決まってる。できる事ならその男に告白させてやりたい。文哉から告白するなんて、その男は恵まれているな……。
幼馴染から、結局ひとつも踏み出せないまま終わってしまった。
「あのね、恭介くん。僕ね、好きな人がいるんだ」
「え?」
「それで仕事が手につかないなんて、子供だよね……」
「悩んでるってこと?」
「うん」
「片思い、してんだ?」
「ど……うかな」
文哉は頬を赤らめ首元を撫でている。こんな表情は見たことがなかった。どうかなということは脈ありということか。正直頭が真っ白でうまく受け止められない。
昼休みに文哉から今夜ごはん奢ってと言われてから考えていた。文哉がここ数日ずっと暗かったし、悩みを抱えているのは伺えた。仕事のことだったら力になれるが、恋の悩みだったとは……。
「恭介くん?」
「あ、うん。そっか、文哉にもそういう人が出来たか」
「なにそれ、ふふ」
「こんな話、今までしたことなかったし」
「僕も恭介くんに打ち明けるとは思わなかった」
恥ずかしそうに髪を触る文哉は、悩んでる割にやはり幸せが滲んで見える。気のせいだろうか。
「その人のこと好きなんだな? 仕事が手につかないほど」
「うん、好き、大好き」
「そっか……想いは伝えたのか?」
「ううん、まだ。何回かデートに誘われたりはしてるんだけど」
「デート……」
「その人のおうち行ったりもしてる」
相手の家に行ってる……それって……。
「じゃあなんで悩んでるんだ?」
「言葉にしたら、終わっちゃいそうで怖くて」
いつの間にか俯いていた自分に気がついた。じっと自分の膝小僧を見つめていて文哉の顔が見れない。もう既に関係は始まっていて、歩きだしてるってことじゃないのか。それを今更言葉にしようとしているということか。
ちゃんと恋人もいたことのない僕が、文哉に何を言えばいいというのだろうか。
「あのね、恭介くん」
「うん」
「相手がね、あの……男の人……なんだ」
「え?」
さすがに驚いて文哉を見た。文哉は作り笑顔を向けているがその内心はそうではないだろう。僕に打ち明けた本意は分からないが、打ち明けるということには勇気がいる。僕だって文哉と同じなのに、誰にも話したことはない。
分かるのは文哉はどうやら相思相愛ということ。
文哉が最近会社外の人間と遊んでいるらしいことは知っていた。それも取引先の。もしかしてと、ある人物が浮かぶ。気が合うと言っていた。
「……うまくいくといいな」
それしか言えなかった。
「えっ、待って。それだけ? びっくりしたとか、なにもないの?」
「そりゃ、驚いたけど、それだけ」
「そ……そう?」
文哉は戸惑いながらも少し安心したのか椅子の背もたれに寄りかかる。僕もそうだから気持ちがわかるだなんて、軽く言えない。それを文哉に話して余計に混乱させたくなかった。
「文哉が好きになるのに性別なんて関係ないだろ?」
「恭介くん……」
文哉の大きな瞳からじんわり涙が滲んでる。昨日までならその涙を指で掬うことが出来たのに。今は心にブレーキがかかる。
「泣くなよ。文哉が好きなら、あっちも好きになるに決まってる。お前はかわいいし、優しい。両想いのはずだ」
「振られたら、恭介くん、また飲みに連れてくれる?」
「あぁ、でも、告白がうまくいくことを願ってるよ」
「ありがとう」
文哉を部屋に泊めるくらいだ、この告白は成功するに決まってる。できる事ならその男に告白させてやりたい。文哉から告白するなんて、その男は恵まれているな……。
幼馴染から、結局ひとつも踏み出せないまま終わってしまった。
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