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寛解
第四十九話
何か慌てて出ていった須賀が帰宅した。気になり玄関まで行くと驚いたことに須賀の隣には妹の遥がいたんだ。遥は俺を見るなり走って俺に飛びついてきた。
「お兄ちゃ……っ」
「須賀さん、どういうことですか?」
遥を抱き留め須賀を見ると、小さくため息をしてリビングの方へ向かっていった。
「遥、ほら泣かないで、あっちへ行こう」
俺と遥が須賀の向かいに並んで座り、少し落ち着くのを待って須賀が口を開く。
「君たちのご両親が明日逮捕される」
「え……? どうし、て……」
「業務上横領の罪だ」
「横領……?」
「業務上横領は刑事事件だ、重大犯罪だよ」
「そんな……」
「君らも調書は受けるはずだ。弁護士を同行させるから安心してくれ」
「両親はどうなるんです?」
「あちらにも顧問弁護士が付いてるはずだ」
「そう、ですか……」
朝方、逮捕されたと須賀が教えてくれた。妹は泣きじゃくりそのまま俺のベッドで眠っている。
夕方のニュースではもう両親のことが大々的に報道されていた。泣いていた遥を思い出して俺は泣いていないことに気がついて自嘲した。
自分の会社のお金に手を付けて愛人に家を購入したり車や旅行に使ったらしい。母親も私的に使用していた容疑があると伝えている。
ソファには座らず床にへたり込むようにして、まるて他人事みたいにテレビの画面を見つめていた。会社のお金に手を付けていたのに俺にまでお金を無心してきた。どれだけ搾取されていたんだろうか。
愛人……、俺にあんなことをして……
胸を掻きむしりたくて服の上から爪を立てる。あの男に触られたのを思い出すと虫唾が走り吐き気がした。何度も嘔吐いてそのたびに胸を掻きむしった。
「坊ちゃま!……いけませんよ!」
どこからか瀧さんが飛んできて俺の手を上から掴んで止めた。
「瀧さ……」
「ご自分を責めちゃいけません。なぁんにも悪いことしていないんです、悪い夢を見ていただけです。ほら、こっちへ……全部忘れてしまいましょう? 滝がおりますよ? ほら」
瀧さんのふくよかな体に抱きしめられてその肩に頭をあずけた。
──こんなの、忘れられるのかな。
嘔吐くだけでなにも吐き出せない苦しさに俺は涙を零した。
「……お兄ちゃん」
俺を呼ぶ声にハッとした。滝さんの姿はなく俺はリビングのソファで横たわっていた。体にはブランケットが掛かっている。起き上がると遥は横に座った。
「朝はパニックになったけど、これで良かったのかも。お兄ちゃんにしたこと、罪にしたいけどもしこんなニュースになったらお兄ちゃんは生きていけない。だからお父さんたち別の形で罰せられたんだよ、神様がいるんだと思う」
「遥」
こんなにすぐに切り替えられるわけがない。無理しているのは明らかだ。なのに遥は笑ってくれている。
「違うか! スーパーヒーローか!」
「ええ?」
「須賀さん、スパダリだもん」
「す、ぱ……?」
「お兄ちゃん知らないの?」
「……聞いたことない」
「須賀さんはお兄ちゃんのスーパーダーリンてこと」
「は? え?」
「良かったねお兄ちゃん」
遥は俺を抱きしめる。
「お兄ちゃん、……今までごめんなさい」
「なんで謝るんだ」
「お兄ちゃんひとり我慢して……」
「……お前だって、アメリカ留学する予定だったろ、出来なくなるかもしれないじゃないか」
「いいよそんなの」
「お兄ちゃんがなんとか……」
「今までもそうやって一人で背負ってきたんだ?」
「遥……」
「駄目なら駄目で仕方ないよ……。また違う道を探す! お兄ちゃん、……大丈夫だよね?」
「お兄ちゃんが居るだろう?」
俺があのふたりの子供じゃなくても、俺にとっては妹だ……。俺は兄で居たい。最低限のことしかできないかもしれないけれど、兄として守ってやりたい。
俺は警察署へ呼び出された。一度目は調書の中で母親の通帳の記録に私からの度重なる入金についてを確認された。刑事さんにそれを認めると、二度目に呼び出された時には、そのことで両親は俺への虐待についてを認める供述をしたと話をしてくれた。
どうやら俺は施設から引き取られたということだった。一人目の夫と共謀して国から貰えるΩ手当てを目的に、Ωの可能性のある俺を養子にした。それなのにホルモンバランスの障害によって発達が十分じゃなかったことで、良縁も望めないと思って虐待することに至ったということだった。
そして二人目の夫は俺が目的で近づいたことを供述したという。夫がΩの俺目的だったことに気が付いてその嫉妬が俺への虐待に繋がったんだって……
俺は意外にも二人の子供ではなかったことに安堵してしまっていた。不思議と傷ついていない。非道な人たちと血が繋がっていないことに心底ほっとしてる自分がいる。
それに嫉妬が原因で俺へ虐待したと聞いて、少しばかり俺のせいじゃなかったんだと思えた。自分の中にいる中学生の自分にもう安心してと声をかける。
俺と一緒に来てくれた九条さんという弁護士は俺達子供のプライバシー保護のため、この件については本件と関わりのないこととして公表しないことを約束させた。
そして、もし俺の気が変わって告発しようと思うときが来たらそのときはコテンパンにやっつけてやるから安心してと九条さんはニカっと笑ってくれたんだ。
「お兄ちゃ……っ」
「須賀さん、どういうことですか?」
遥を抱き留め須賀を見ると、小さくため息をしてリビングの方へ向かっていった。
「遥、ほら泣かないで、あっちへ行こう」
俺と遥が須賀の向かいに並んで座り、少し落ち着くのを待って須賀が口を開く。
「君たちのご両親が明日逮捕される」
「え……? どうし、て……」
「業務上横領の罪だ」
「横領……?」
「業務上横領は刑事事件だ、重大犯罪だよ」
「そんな……」
「君らも調書は受けるはずだ。弁護士を同行させるから安心してくれ」
「両親はどうなるんです?」
「あちらにも顧問弁護士が付いてるはずだ」
「そう、ですか……」
朝方、逮捕されたと須賀が教えてくれた。妹は泣きじゃくりそのまま俺のベッドで眠っている。
夕方のニュースではもう両親のことが大々的に報道されていた。泣いていた遥を思い出して俺は泣いていないことに気がついて自嘲した。
自分の会社のお金に手を付けて愛人に家を購入したり車や旅行に使ったらしい。母親も私的に使用していた容疑があると伝えている。
ソファには座らず床にへたり込むようにして、まるて他人事みたいにテレビの画面を見つめていた。会社のお金に手を付けていたのに俺にまでお金を無心してきた。どれだけ搾取されていたんだろうか。
愛人……、俺にあんなことをして……
胸を掻きむしりたくて服の上から爪を立てる。あの男に触られたのを思い出すと虫唾が走り吐き気がした。何度も嘔吐いてそのたびに胸を掻きむしった。
「坊ちゃま!……いけませんよ!」
どこからか瀧さんが飛んできて俺の手を上から掴んで止めた。
「瀧さ……」
「ご自分を責めちゃいけません。なぁんにも悪いことしていないんです、悪い夢を見ていただけです。ほら、こっちへ……全部忘れてしまいましょう? 滝がおりますよ? ほら」
瀧さんのふくよかな体に抱きしめられてその肩に頭をあずけた。
──こんなの、忘れられるのかな。
嘔吐くだけでなにも吐き出せない苦しさに俺は涙を零した。
「……お兄ちゃん」
俺を呼ぶ声にハッとした。滝さんの姿はなく俺はリビングのソファで横たわっていた。体にはブランケットが掛かっている。起き上がると遥は横に座った。
「朝はパニックになったけど、これで良かったのかも。お兄ちゃんにしたこと、罪にしたいけどもしこんなニュースになったらお兄ちゃんは生きていけない。だからお父さんたち別の形で罰せられたんだよ、神様がいるんだと思う」
「遥」
こんなにすぐに切り替えられるわけがない。無理しているのは明らかだ。なのに遥は笑ってくれている。
「違うか! スーパーヒーローか!」
「ええ?」
「須賀さん、スパダリだもん」
「す、ぱ……?」
「お兄ちゃん知らないの?」
「……聞いたことない」
「須賀さんはお兄ちゃんのスーパーダーリンてこと」
「は? え?」
「良かったねお兄ちゃん」
遥は俺を抱きしめる。
「お兄ちゃん、……今までごめんなさい」
「なんで謝るんだ」
「お兄ちゃんひとり我慢して……」
「……お前だって、アメリカ留学する予定だったろ、出来なくなるかもしれないじゃないか」
「いいよそんなの」
「お兄ちゃんがなんとか……」
「今までもそうやって一人で背負ってきたんだ?」
「遥……」
「駄目なら駄目で仕方ないよ……。また違う道を探す! お兄ちゃん、……大丈夫だよね?」
「お兄ちゃんが居るだろう?」
俺があのふたりの子供じゃなくても、俺にとっては妹だ……。俺は兄で居たい。最低限のことしかできないかもしれないけれど、兄として守ってやりたい。
俺は警察署へ呼び出された。一度目は調書の中で母親の通帳の記録に私からの度重なる入金についてを確認された。刑事さんにそれを認めると、二度目に呼び出された時には、そのことで両親は俺への虐待についてを認める供述をしたと話をしてくれた。
どうやら俺は施設から引き取られたということだった。一人目の夫と共謀して国から貰えるΩ手当てを目的に、Ωの可能性のある俺を養子にした。それなのにホルモンバランスの障害によって発達が十分じゃなかったことで、良縁も望めないと思って虐待することに至ったということだった。
そして二人目の夫は俺が目的で近づいたことを供述したという。夫がΩの俺目的だったことに気が付いてその嫉妬が俺への虐待に繋がったんだって……
俺は意外にも二人の子供ではなかったことに安堵してしまっていた。不思議と傷ついていない。非道な人たちと血が繋がっていないことに心底ほっとしてる自分がいる。
それに嫉妬が原因で俺へ虐待したと聞いて、少しばかり俺のせいじゃなかったんだと思えた。自分の中にいる中学生の自分にもう安心してと声をかける。
俺と一緒に来てくれた九条さんという弁護士は俺達子供のプライバシー保護のため、この件については本件と関わりのないこととして公表しないことを約束させた。
そして、もし俺の気が変わって告発しようと思うときが来たらそのときはコテンパンにやっつけてやるから安心してと九条さんはニカっと笑ってくれたんだ。
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