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恋人
第五十七話
雪の名前を呼ぼうとしてうまく声にならない。
代わりに私に差し伸べられた細い指を捕まえて頬ずりしていた。
いつもひんやりと冷たい指先が今夜は温かい。それに気がついて雪の腕を辿って視線を上げると心配げに眉を下げて私を見つめる雪の顔があった。
雪は私の目を見つめてその中にある真実を覗こうとする。私が誤魔化すように微笑むと雪は泣きそうな表情をして私にしがみついた。
「どうして、……泣いてるんですか」
雪の脇の下に手を差し込み身体を離そうとするが、首に回された腕はぎゅっと私を捕まえている。腕に力を入れて私から離れようとはしなかった。
「どうして、こんな姿俺に見せるんですか……」
「──?」
「堤さんとか、他の人にもそうしますか?……違いますよね、滝さんにも見せない。俺にしか、見せてないですよね」
「雪……?」
より一層腕に力が込められて私はおずおずと雪を抱き返した。
「俺……、須賀さんが、すき」
「……」
「好きです……、須賀さん」
「雪……っ」
「優しくしてくれるのも、キスしてくれるのも、俺を好きだから、そうですよね? それともまだ契約中? おじいさんから逃れるため? それか……俺の、俺の……勘違い。でも、……でもっ、俺勘違いでもいい、須賀さん、の、こと……だいすき…………」
段々と先細っていく声に私は追いかけるように雪をきつく抱き寄せると、苦しいほどに雪の早い鼓動が私の胸に伝わってきた。私の耳には雪の熱を持った頬がくっついている。
愛していると言葉で伝えてきた。
キスにも、細心の注意を払って雪を傷つけないようにしてきたつもりだった。
もし、嫌なら突き放せるように、
本気になりすぎないようにって
「……駄目だったら先に言ってください……」
それが雪の気持ちを揺らせていたことに今気がついた。
意気地の無さが、余計雪を戸惑わせていたんだ。
もう一度雪の身体を離そうとすると、雪は腕の力を抜いてくれた。そして見合ったかと思えば雪は私の唇にちゅっと一瞬だけ口付ける。
不安げに私を見つめる雪が私の言葉を待っていた。
「私は、愛してると伝えてきた……」
「…………」
「それは、心からの言葉だ、契約だからじゃない、嘘のためじゃない、勘違いさせるためじゃない」
柔らかな栗色の毛を撫でる。
「勘違いで終わらせるわけにはいかない、私を愛してほしい」
頬を親指で撫でると雪がはにかむ。
「須賀さん、すき」
「私もだ」
「抱き締めてください」
「あぁ……」
雪を抱き上げ膝に乗せると雪は私の首にしがみつく。抱き締めていたカーディガンがパサリと床に落ちた。
「雪……」
愛おしい人の名前をつぶやきながら柔らかな毛を撫でる。何度も何度も、それが心を満たしていくんだ。
「須賀さん……」
「……なんだ?」
「須賀さんの部屋に、……連れて行ってください……」
代わりに私に差し伸べられた細い指を捕まえて頬ずりしていた。
いつもひんやりと冷たい指先が今夜は温かい。それに気がついて雪の腕を辿って視線を上げると心配げに眉を下げて私を見つめる雪の顔があった。
雪は私の目を見つめてその中にある真実を覗こうとする。私が誤魔化すように微笑むと雪は泣きそうな表情をして私にしがみついた。
「どうして、……泣いてるんですか」
雪の脇の下に手を差し込み身体を離そうとするが、首に回された腕はぎゅっと私を捕まえている。腕に力を入れて私から離れようとはしなかった。
「どうして、こんな姿俺に見せるんですか……」
「──?」
「堤さんとか、他の人にもそうしますか?……違いますよね、滝さんにも見せない。俺にしか、見せてないですよね」
「雪……?」
より一層腕に力が込められて私はおずおずと雪を抱き返した。
「俺……、須賀さんが、すき」
「……」
「好きです……、須賀さん」
「雪……っ」
「優しくしてくれるのも、キスしてくれるのも、俺を好きだから、そうですよね? それともまだ契約中? おじいさんから逃れるため? それか……俺の、俺の……勘違い。でも、……でもっ、俺勘違いでもいい、須賀さん、の、こと……だいすき…………」
段々と先細っていく声に私は追いかけるように雪をきつく抱き寄せると、苦しいほどに雪の早い鼓動が私の胸に伝わってきた。私の耳には雪の熱を持った頬がくっついている。
愛していると言葉で伝えてきた。
キスにも、細心の注意を払って雪を傷つけないようにしてきたつもりだった。
もし、嫌なら突き放せるように、
本気になりすぎないようにって
「……駄目だったら先に言ってください……」
それが雪の気持ちを揺らせていたことに今気がついた。
意気地の無さが、余計雪を戸惑わせていたんだ。
もう一度雪の身体を離そうとすると、雪は腕の力を抜いてくれた。そして見合ったかと思えば雪は私の唇にちゅっと一瞬だけ口付ける。
不安げに私を見つめる雪が私の言葉を待っていた。
「私は、愛してると伝えてきた……」
「…………」
「それは、心からの言葉だ、契約だからじゃない、嘘のためじゃない、勘違いさせるためじゃない」
柔らかな栗色の毛を撫でる。
「勘違いで終わらせるわけにはいかない、私を愛してほしい」
頬を親指で撫でると雪がはにかむ。
「須賀さん、すき」
「私もだ」
「抱き締めてください」
「あぁ……」
雪を抱き上げ膝に乗せると雪は私の首にしがみつく。抱き締めていたカーディガンがパサリと床に落ちた。
「雪……」
愛おしい人の名前をつぶやきながら柔らかな毛を撫でる。何度も何度も、それが心を満たしていくんだ。
「須賀さん……」
「……なんだ?」
「須賀さんの部屋に、……連れて行ってください……」
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