恋人契約~愛を知らないΩがαの愛に気づくまで~

Gemini

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恋人

第五十九話※

 背中がシーツに沈んだときあの夜が残像のように脳裏に浮かんだ。

 須賀の睨みつけるような鋭い眼差し。

 白く剥き出した犬歯。

 俺を突き上げたとき俺の頬に垂れた汗。

 映像というより断片的に写真のように、ひとコマずつフラッシュバックしてくる。


「雪、……なにを考えている?」

 須賀が少し首を傾げて微笑しながら俺の顔を覗き込んできた。体重を掛けないように右半身を俺からずらし須賀もベッドに寝そべる。

「あの夜を……思い出しました」
「……覚えているのか?」
「少しだけですが……」

 須賀の方へ身体を向け、向かい合うようにすると髪を撫でられ顕になったおでこにキスをくれる。

「今夜のことは覚えていような」

 優しく笑みを浮かべて今度は頬に、瞼に……鼻先にキスが移動していき、ついに俺の唇にやってくると俺はリズムを合わせるように須賀を迎えた。

 今夜のことだけじゃない、全て覚えていたい。けれど、きっと須賀はそれは叶わないと分かっているんじゃないかと思った。俺達はαとΩだから。



 既に上半身裸の二人。須賀の首に縋りつくとすぐに素肌が密着し須賀の体温を感じた。大きな手が俺の背中を弄って俺の背骨のくぼみを指先が撫でると、俺はその快感に仰け反る。

「────……はぁっ」

 つい唇を離してしまい、まだそばにあるはずの須賀の唇を探すと待っていたとばかりに須賀の唇に捕まる。するとまた同じところを下から指先でなぞられ仰け反った。

 須賀とキスをしていたいのに、どうしても指先の快感を追ってしまう。須賀の手が脇腹を通過して前にやってくると俺の胸を指先の裏で撫でた。微かに撫でられただけなのにピクリと今度は身を屈めてしまう。

 須賀の手のひらで大きく軟軟と揉まれ親指が胸の先端を捉える。指の腹で擦られて思わずその手を掴んでしまった。突き抜けるような感覚に焦りを覚えたんだ。

 ──俺、これに弱い、駄目だ。

 手首を掴まれたままの須賀はその手をそのままに今度は顔を近付けて胸の尖りにキスをした。

「ぁ…………っ、……だめ。駄目だ、須賀さん」
「……知ってる」

 掴んでたはずの須賀の手首はいつの間にか返されていて、そのままシーツに押し付けられてしまった。仰向けにされると須賀が片眉を上げたのが目の端に見えた。

「ん……ぁっ」

 唇で優しく摘まれ、身をよじって抵抗するが須賀の身体がだんだんとのしかかってきて身動きを封じられる。

 ──知ってるってなんだよ……。

 抗いたくとも強く吸われてしまって俺の身体はビクンビクンと反応してしまっている。反対側も指で摘まれ弾かれ、頭は真っ白になる。

「んっ、……んっ、……ぁっ」

 須賀がいつの間にか俺の足の間に割り入っていて、硬い熱を押し付けるように腰を動かして吸い付いている。

 須賀もだが、俺もジーンズの下は膨れ上がって痛い。

「須賀さ……っ」
「ん……? あぁ……辛いか?」

 須賀にジーンズ越しに指先でなぞられゾクゾクと粟立つ。ふぅっと小さく息をして快感を逃がすと、それを見た須賀が口角を上げた。



 ボタンが外されファスナーを下ろされると下着といっぺんに剥ぎとられてしまった。一旦ベッドから降りた須賀は、自身のスラックスに手を掛けた。

 俺はゴクリと喉を鳴らしていた。スラックスを持ち上げているその大きな存在に目が離せない。須賀はゆっくりファスナーを下ろした。親指を隙間に差し込み下着と共に下へずらすと芯を持った須賀の雄々しい中心が現れる。

 何でもないような顔で手際よく足先から抜くとそれを俺のジーンズと共に近くにある椅子に掛けた。

 いつ鍛えているのかも分からない引き締まっている身体がまたベッドに上がってくる。俺の足元からじわりじわりと四つん這いになり這い上がってくる。



 獲物を捕らえるようなギラついた目つきに一瞬喉が閉まる。でも俺のαなんだ。俺だけを食べてほしい。俺は起き上がり須賀に手を伸ばしていた。

 俺の胸に須賀を抱きとめるともう離したくない。

 俺は、いま俺自身に驚いている。案外冷静なんだ。もちろん今の状況に緊張はしてるし、これから起こることを想像して体のどこもかしこも爆発しそう。
 だけれど、今夜を覚えていたいと思えば思うほど脳は冷静さを保とうとする。

 自重に任せて後ろに倒れると須賀の体重を一気に感じた。これが須賀の肉体の重さなんだ、なんて頭のどこかで思った。

 二人の腹の間で互いの熱く固いものが擦れあっている。須賀はわかってて腰を滑らせてくるから、俺は須賀の首に抱きついたまま目を瞑ってその快感を拾ってしまう。

 胸の突起も須賀の厚い胸筋に擦られていく。

「ん…………っ、ふ……っ、須賀さ……」

 須賀に太ももを撫でられ緩んだ隙にグイッと須賀の腰が俺の足の間に入り込む。膝を曲げられ大きく開かされた。その時須賀の亀頭が俺の後孔を掠めた。

「今日は準備がないから、ここはまた今度だな」
「へ……?」
「痛いことはしたくない」
「でも……っ」

 俺はてっきり最後まですると思ってた。腕を離して須賀の肩を押し顔を見る。

「挿れるだけがセックスじゃない」

 いや、挿れるのがセックスだろうと思うのだが、須賀を見るとそれは本気のようで、不満げではないむしろ愉しんでいる顔をしていた。腕を突っ張り上体を起こして俺と須賀のそそり立つものを見下ろして口角を上げていたんだ。

 たまに腰を律動させて須賀よりだいぶ小さい俺に自身の高ぶりを擦りつける。

「…………んっ」

 確かにこんな大きなものが入るのか正直怖さの方が勝った。
 それにこうされるだけで気持ちがよかった。俺の身体は単純で須賀が擦りつけてくるたびにヒクヒクと勝手に反応し、俺の腹をたまに弾くほどだった。

 のしり、と須賀が俺に被さって俺の胸の突起に吸い付いた。むず痒いのに、たまに犬歯が掠めると須賀の髪を掻きむしっていた。

 俺の立ち上がっているものを握られると先からプクプクと透明な液が溢れる。それを親指で捏ねられ周りに塗りたくられた。

「雪はここが好きなんだよね……」

 ちゅっとわざと音を立てながらきつく吸われて一気に昇りつめる。

「…………ン、……や……むり、だめ……っ」
「ん……」

 わかってる、って答えるけど舌は俺を執拗に攻めてる。

「須賀さ……、ンっ……」

 握られているそれが解放されたくてひくついている。

「イっていいぞ」
「……でも………………、…………んっ」
「気持ちよくなればいいんだ」

 微笑したαの声に俺はもう快感に集中することにした。須賀の頬を両手で挟んでキスを求めた。須賀の上下する手は俺の昂ぶりに合わせるかのように徐々に早めてくる。

 俺は養父から受けていた虐待のせいか分からないが性への衝動が無かった。多分元々の俺の性分だとは思う。まともに自慰もしたことがない。あの夜の記憶が曖昧な分、自分がどうなってしまうのかも、よく分からない。

 でも頭で考えるより先に身体が反応してしまって、

「──────ンっ、ぁぁ……っ」

 足がガクッと震えて、俺の先から勢いよく白濁が放たれた。

 荒い息で上下する俺の腹にそれが散らばっていて、須賀がそれを指先で掬ってみせた。

 そして俺の目を見ながらその指に滴る白濁の液体を下から舐め上げて口に含んだ。



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