魔族と組んで異世界無双 2

夜夢

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第1章 始まりの章

11 男女戦争の内容とは

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    深夜枢は完全に気配を断ち女の家へと向かっていた。辺りの建物には灯り一つ灯っていない。真っ暗闇であった。枢は女の気配を頼りに家を見つけ、扉をノックする。

「…いるか?」

    ガチャリと扉の鍵が開く。中から手が伸び、枢を中へと引っ張った。

「遅かったな。すまない、ここからは小声で頼む。」

「ああ、静かだからな。ん?」

    枢は女を見た。

「何て格好してんだお前…。」

「?何かおかしいか?皮鎧を脱いだだけなのだが…。」

    女は下着にタンクトップ姿だった。

「…まぁ、俺は構わないんだけどな。灯りは点けないのか?」

「油が勿体無いだろ。基本夜は早く寝る事になっている。明日は門番の仕事も無いし、休みの日だ。だから深夜まで起きてたんだ。でも…流石に眠い。ほら、ベッドに行くぞ?」

「ま、待て。一緒に寝る気か?」

「仕方無いだろう。ベッドは一つしかないんだから。」

    何だこの女…。無防備にも程があるぞ…。

「あ、何かしたら叫ぶからな?」

「…生殺しだ…。酷い拷問だ。」

「そりゃあ残念だったねぇ。じゃ半分空けとくから適当に寝てよ。ふぁ…。お休み。」

    そう言って女は直ぐに寝息を立てて眠った。

「…やれやれだ。さて…物質創造【高級ベッド】。」

    枢は空きスペースにベッドを出した。

「流石に一緒に寝るのはな、俺の精神によろしくない。悪いが俺は此方で眠らせて貰うわ。」

    枢は上着を脱ぎ、ベッドに寝転んだ。

「起きたら色々聞いてみるか。さて…俺も寝るか。」

    枢は目を閉じ眠りに就いた。

    翌朝…、枢が目を覚ますと隣に家主が寝ていた。

「…おい。起きろ。」

「ふえ…?何よ…休みなんだからもう少し寝かせてよ…すや~。」

「寝るな、起きろ。此処はお前のベッドじゃない!」

「何よ…。自分だけこんな良いベッドに寝るなんてズルいわよ…。私の家にあるんだから…これは私のベッド…。」

    何て奴だ!ジャイアニズムか!まぁ…ダブルだし良いんだけどさ。こいつ…わざとか?近すぎじゃねぇか?色々当たってるし足がヤバい位置に…。鎮まれっ!俺の煩悩っ!

    枢は血涙を流しながら耐えた。

「…ふ~ん。エライエライ。ちゃんと約束は守るんだね?」

「試していたのか?ふん。約束は守る為にあるんだ。この位じゃ俺の鋼の意思はぐらつきもしねぇぜ。」

「…ふふっ。無理しちゃって。確かに一部分は鋼みたいだけど?」

「そこは自分の意思とは無関係な場所だからな。ほら、起きてんなら降りろよ。ベッドを消すぞ。」

「あ、ダメよ!消すなら…古いあっちの方にして。今日からこれが私のベッドよ!」

「ちゃっかりしてんなぁ、お前…。」

「お前じゃない。私は【ライム】。覚えておいてね?アンタは?」

「枢だ。こんな事になるなら森に家を建てて待てば良かったぜ…。」

「何よ。少しは良い思い出来たでしょ?」

「かえって身体に悪いわっ。それよりほら、降りろ。んで服きて顔洗って来いよ。飯にしようぜ。」

「ん、そうね。」

    ライムはベッドから降り奥の部屋で着替え始めた。枢も上着を拾いそれを羽織る。

「さてと…朝だし干し肉とスープで良いかしら?」

「は?お前…いつもそんなもん食ってんの?」

「はぁ?じゃあ枢はいつも何食べてんのよ?」

「そうだな、朝は大体パンとサラダ、ベーコンエッグにコーヒーかな。」

「は?何それ?全然分かんない。試しに見せてくれないかしら?」

    これはあれか?新手のたかりか?

「…少し待ってろよ。」

    枢は台所に立ち手早く料理を済ませテーブルに並べた。

「コーヒーは飲めるか?そのままじゃ苦いからミルクと砂糖を入れて飲んでも良いが…。無理ならオレンジジュースでも…。」

「砂糖!ミルク!?何て贅沢を!信じらんない!」

「まぁ…俺はブラック派だから使わないんだけどさ。じゃあオレンジジュースにしとく?」

「いえ、コーヒーとやらで。あ、ミルクと砂糖は頂戴ね?」

    こ、こいつ…これが地か!?最初の戦士風な感じはどこいったよ!?

「お前…それが素なのか?」

「当たり前じゃない。いつもあんな堅苦しい話し方してたら疲れるじゃないのさ。仕事と普段は別よ別。…ん~甘くて美味しいわね、コーヒー!これ好きかも!」

    角砂糖何個入ったんだろうなぁ…あんなの飲める気がしねぇ…。

「まぁ良いや。で、話を聞きたいんだが良いか?」

「何?彼氏ならいないよ?」

「違うわ!代表はどうやって決めるんだ?まさか本当に戦う訳じゃ無いんだろ?」

「当たり前よ。それだと私達の一方的な負けじゃない。戦いはそれぞれの代表者が指名した3人が各お題で戦うのよ。」

「成る程な。で、そのお題は?」

「1、計算。2、料理。3、価値の高い素材を出す…よ。」

「はぁ?な、何だそりゃ?楽勝じゃねぇか。」

「はぁあ?何処がよ!料理は勝てるかもしれないけど…計算と素材は無理よ。」

「そうか?因みに…計算はどうやって争う?」

「そうね、出された問題を時間内に解き、尚且つ間違いが少ない方が勝ちかな。」

    丸っきりテストじゃねぇか。

「難易度は?」

「は?う~ん、和と差だったかしら。」

    …半分寝ながらでも解けるじゃねぇか…。

「計算の代表者は?」

「ふふん!何を隠そう…この私よ!」

「お前、計算出来んの?」

「バカにしないでよ!楽勝よ楽勝っ♪何か問題出してみなさいよ。」

「じゃあ…15,623+4,589は?」

「そんなの分かるわけ無いじゃない!指は10本しか無いのよ!」

「…20,212だよ。全然ダメダメじゃねぇか!あの余裕は何だったんだよ!?」

「う、五月蝿いわね。なら98-26は?」

「72だ。」

「は、早いっ!」

「バカにしてんのか!こんなの子供でも出来るぞ!?」

「はぁ?そんな子供見た事無いわよ。嘘つかないでよ。」

    何て事だ…。数学…いや算数すら出来ないとは…。仕方無いか?教える奴が居ないんじゃなぁ…。

「分かった。次は料理だ。判定は誰が出す?」

「適当に選んだ5人に真贋の魔法をかけて判定させるわ。これならズルは出来ないでしょ?」

「ふむ、それなら大丈夫かな。男側に料理が出来る奴は?」  

「さぁ?そもそも料理出来るのかしらね?」

    ふむ…、男側は料理を捨てて計算と素材で勝ちにくる訳だな。

「お前が負けたら負けじゃん。」

「うっ…。き、気にしてるんだから言わないでよ。」  

「狩りが得意じゃない女側は計算と料理で勝つしか無いじゃん。まぁ…頑張ってくれよ?俺はどっちが勝とうが興味無いしな。さて、暇だからまた寝るわ。頑張って計算のお勉強でもしてくれ。」

    そう言って枢は再びベッドに向かった。

「…待ちなさい。」

「あ?何だ?」

「貴方…計算得意なの?」

「得意と言うか…こんなレベルじゃ負ける気もしねぇよ。」  

「こ、コツとかあるの?」

「知りたいか?」

「う、うん!」

「…そうか、知りたいか。だが…断る!」

「な、何でよ!?」

「俺が肩入れしたから勝ったと言われて嬉しいか?自力で勝つから価値があるんだろ?」

「ぐっ…。ま、負けられないのよ。負けたら皆が…!何としても勝たないと…。お願い、教えて?」

    ライムは枢に必死にすがった。

「勝ちたいか?」

「う、うんっ!」

「何でもするか?」

「う、うん?」

「このコツを知れば確実に勝てる。かつ間違わない。満点でクリアーだ。そんな魔法みたいな知識を与えるんだ、後は分かるな?」

「…本当にそれを教えてくれるのよね?」

「ああ。俺も早くお前達の長と会って町に皆を連れて行きたいしな。」

「もうっ!仕方無いなぁっ!こっち…来て。」

「随分潔いじゃないか。」

「…実は夜中の内から少し期待…何言わせんのよ、バカ!するの?しないの?」

「するに決まってんだろ。実はお前イタズラしてたろ?」

「お、起きてたの!?」

「この野郎…。散々釘さしといて…お仕置きだ。」

「あ。あはは、だ、だって…ねぇ?うわっ!ご、ごめんなさいぃぃぃぃっ!」

「誰が許すかっ!さぁお仕置きの時間だ。」

    枢はたっぷりとライムにお仕置きをするのであった。

    そして、お仕置き後に計算のコツを教えてやった。

「こうして2列に数字を並べるだろ?」

「うん。」

「それから後は一桁ずつ計算する。10を超えたら隣の桁に1を増やせ。な?簡単だろ?」

「こ、こんな方法が…!て、天才だぁっ!」

「やめろ。子供でも理解できるって言ったろうが。後は繰り返しやってみろ。これを覚えれば何桁だろうが簡単に解ける筈だ。」

「よ、よ~し!やる気出てきた!あ、これの責任はちゃんととってね?毎食のご飯作りと部屋の掃除、後洗濯で許してあげるわ。」

「まぁそれ位なら。」

「んっふふ。勝ちが見えた!よ~し、頑張るぞっ!」

    ライムは計算のコツを掴み燃えていた。それから決戦当日までひたすら計算の練習を繰り返すのであった。
  

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