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第3章 国づくり
第25話 獣人
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守りと生活基盤を整え数ヶ月、魔族は順調にその数を増やしていた。そして見張り役をかって出る魔族や、 争い事がないわけではないので治安維持活動に従事する魔族、そして貨幣ができた事から商売を始める魔族などが現れ、壁の内部は大いに賑わっていた。
そんなある日、エルフの住む区画を作っていたアースの下に見張り役の魔族が大慌てで駆け込んできた。
「アースさまぁぁぁぁっ! た、大変ですっ!」
「ん~? どうしたの?」
「ふ、船です! 船団が海に!!」
「な、なんだって!? わかった、すぐ行く!!」
アースはその姿を竜へと戻し、急ぎ外壁の上へと向かった。そして外壁に立ったアースは先頭に並ぶ三つの船の船首にありえないものを目にする。
「……ん~? んん? いや、まさか……! あ、あれって……!?」
そう驚いていると、船首の者たちも外壁に立つアースに気付いたのか、同時に翼を広げ船から空へと浮かび上がった。
「俺は火竜バーン!」
「私は水竜アクア!」
「僕は風竜ヴァン!」
「えぇぇぇぇぇ……」
アースは兄達がゴーデス大陸にいると聞いていた。だがその兄達が今まさに目の前に浮かんでいる。
「お前が地竜だろ? 初めましてだな?」
「あ、あぁ。俺が地竜のアースだ」
「アースか。ならアースよ」
火竜はアースに頭を下げた。
「な、なに!?」
「頼むっ! あの船にいる獣人らをデモン大陸で面倒見ちゃくれねぇか!」
「……え? じ、獣人? あの船には獣人が乗ってるの? 確か獣人ってゴーデス大陸にいるんじゃ……」
水竜がアースに言った。
「ゴーデス大陸はもうダメなのよ。三大陸の人間連合軍が毎日のように攻めてきててね……。いくら私達竜が三体いても物量には敵わなかったのよ」
風竜が半ば怒りながらアースに愚痴をこぼす。
「本当にさぁっ! 奴らゴキブリみたく次々沸いてくるんだもんっ! 休む暇もなくてさぁっ!」
「……そう言うわけでな、俺たちは獣人の生き残りを引き連れて撤退してきたんだよ。頼むアース。助けちゃくれねぇか?」
三体の言葉を受け、アースが口を開いた。
「引き取るのは構わないよ。でも……絶対に争わないって誓える? 今ようやく魔族が落ち着いてその数を増やし始めたんだ。それに、近々エルフも呼ぶつもりだし。もし獣人が争いを起こすなら引き取る事は出来ない」
「ああ、争いなんてさせねぇよ。獣人は俺らが責任をもって監督する。だから土地だけなんとか貸してくれ」
「わかった。あれを見て」
「ん?」
アースは三体に外壁で囲った大地を指差して見せる。
「ありゃあ……街か?」
「そう。あの外壁の内部、海に近い南側を魔族が。そして森に近い西側をエルフが使う予定なんだ。残ってるのは東側だけなんだけど……あそこで大丈夫かな?」
「ああ。あんだけありゃ十分だ。獣人もあの十隻の船、各船に百人しか乗ってねぇ。総勢千名しか残っちゃいねぇからな」
「わかった。じゃああの東側の外壁まで船を誘導してくれるかな? 俺は外壁の上で待ってるからさ」
「ん? ああ」
そう言い、アースは東側の外壁へと移動した。三体の竜はそれぞれの船に戻る。
「火竜殿、どうなりましたか?」
「ああ、受け入れてくれるってよ」
「おぉっ! ありがたいっ!」
「ただし、壁の中には魔族とエルフが住む事になっている。そいつらには絶対に手を出すな。もし出したら俺がお前らを消し炭にしなきゃならなくなった」
「……我らは受け入れてられる身。どうして手を出せましょうか」
「その言葉、忘れんなよ?」
「はっ!」
そうして船団はアースの待つ東側へと移動し、崖の前で制止した。
「アース! 来たぞ~! どうすんだ~?」
「今開けるから待ってて!」
アースが何やらカチャカチャと外壁の一部を弄りスイッチを押す。すると船の前にある岸壁がゴゴゴゴと音をたてヅレていった。
「「「……は? な、なんだこれ!?」」」
中は船が余裕で通れる広さの洞窟になっていた。
「そこから入ってきて! 奥にドッグがあるから船はそこに! 全部入ったら入り口を戻して下に行くから待ってて!」
「お、おうっ! よし、行くぞ!」
十隻の船が並び洞窟に入る。全部入ったのを見届けたアースは再びスイッチを押し、入り口を閉じる。閉じると岸壁は入り口など無いかのようにピタリと閉じた。そして中は暗いかと思ったが、天井に光源が並び、まるで外のように明るい。
「こ、こりゃいったいなんなんだ?」
「凄いわねぇ……。誰がどうやって作ったのかしら?」
「まさかアース? まさかねぇ~」
道なりに進むと、奥には接岸出来る岸と造船ドッグが並んでいた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「あ、きた。お~い!」
アースが階段から降りて行くと丁度船が到着していた。
「船は適当につけちゃって!」
そこに先に竜達が降りアースを囲んだ。
「ア、アース。こりゃいったいなんだ!? あの鉄の塊はいったい……」
「ああ、あれは新しい船だよ。魔道船って言ってね。風がなくても走れる船なんだよ」
「は、はぁ?」
「アース? 天井の光は?」
「あれは魔道ライト。魔光石を使った魔道具だよ」
「アース? まさかこれ君が?」
「ん? うん。全部俺の作品だよ。魔族達がようやく落ち着いたからさ、俺も本業に戻ろうかってね」
「本業??」
「うん」
アースは三体の竜に向かってこう言った。
「俺は地竜アース。職業は魔道具技師だよ。よろしくね、兄さん、姉さん?」
三体の竜はポカーンとしつつ、アースを見るのであった。
そんなある日、エルフの住む区画を作っていたアースの下に見張り役の魔族が大慌てで駆け込んできた。
「アースさまぁぁぁぁっ! た、大変ですっ!」
「ん~? どうしたの?」
「ふ、船です! 船団が海に!!」
「な、なんだって!? わかった、すぐ行く!!」
アースはその姿を竜へと戻し、急ぎ外壁の上へと向かった。そして外壁に立ったアースは先頭に並ぶ三つの船の船首にありえないものを目にする。
「……ん~? んん? いや、まさか……! あ、あれって……!?」
そう驚いていると、船首の者たちも外壁に立つアースに気付いたのか、同時に翼を広げ船から空へと浮かび上がった。
「俺は火竜バーン!」
「私は水竜アクア!」
「僕は風竜ヴァン!」
「えぇぇぇぇぇ……」
アースは兄達がゴーデス大陸にいると聞いていた。だがその兄達が今まさに目の前に浮かんでいる。
「お前が地竜だろ? 初めましてだな?」
「あ、あぁ。俺が地竜のアースだ」
「アースか。ならアースよ」
火竜はアースに頭を下げた。
「な、なに!?」
「頼むっ! あの船にいる獣人らをデモン大陸で面倒見ちゃくれねぇか!」
「……え? じ、獣人? あの船には獣人が乗ってるの? 確か獣人ってゴーデス大陸にいるんじゃ……」
水竜がアースに言った。
「ゴーデス大陸はもうダメなのよ。三大陸の人間連合軍が毎日のように攻めてきててね……。いくら私達竜が三体いても物量には敵わなかったのよ」
風竜が半ば怒りながらアースに愚痴をこぼす。
「本当にさぁっ! 奴らゴキブリみたく次々沸いてくるんだもんっ! 休む暇もなくてさぁっ!」
「……そう言うわけでな、俺たちは獣人の生き残りを引き連れて撤退してきたんだよ。頼むアース。助けちゃくれねぇか?」
三体の言葉を受け、アースが口を開いた。
「引き取るのは構わないよ。でも……絶対に争わないって誓える? 今ようやく魔族が落ち着いてその数を増やし始めたんだ。それに、近々エルフも呼ぶつもりだし。もし獣人が争いを起こすなら引き取る事は出来ない」
「ああ、争いなんてさせねぇよ。獣人は俺らが責任をもって監督する。だから土地だけなんとか貸してくれ」
「わかった。あれを見て」
「ん?」
アースは三体に外壁で囲った大地を指差して見せる。
「ありゃあ……街か?」
「そう。あの外壁の内部、海に近い南側を魔族が。そして森に近い西側をエルフが使う予定なんだ。残ってるのは東側だけなんだけど……あそこで大丈夫かな?」
「ああ。あんだけありゃ十分だ。獣人もあの十隻の船、各船に百人しか乗ってねぇ。総勢千名しか残っちゃいねぇからな」
「わかった。じゃああの東側の外壁まで船を誘導してくれるかな? 俺は外壁の上で待ってるからさ」
「ん? ああ」
そう言い、アースは東側の外壁へと移動した。三体の竜はそれぞれの船に戻る。
「火竜殿、どうなりましたか?」
「ああ、受け入れてくれるってよ」
「おぉっ! ありがたいっ!」
「ただし、壁の中には魔族とエルフが住む事になっている。そいつらには絶対に手を出すな。もし出したら俺がお前らを消し炭にしなきゃならなくなった」
「……我らは受け入れてられる身。どうして手を出せましょうか」
「その言葉、忘れんなよ?」
「はっ!」
そうして船団はアースの待つ東側へと移動し、崖の前で制止した。
「アース! 来たぞ~! どうすんだ~?」
「今開けるから待ってて!」
アースが何やらカチャカチャと外壁の一部を弄りスイッチを押す。すると船の前にある岸壁がゴゴゴゴと音をたてヅレていった。
「「「……は? な、なんだこれ!?」」」
中は船が余裕で通れる広さの洞窟になっていた。
「そこから入ってきて! 奥にドッグがあるから船はそこに! 全部入ったら入り口を戻して下に行くから待ってて!」
「お、おうっ! よし、行くぞ!」
十隻の船が並び洞窟に入る。全部入ったのを見届けたアースは再びスイッチを押し、入り口を閉じる。閉じると岸壁は入り口など無いかのようにピタリと閉じた。そして中は暗いかと思ったが、天井に光源が並び、まるで外のように明るい。
「こ、こりゃいったいなんなんだ?」
「凄いわねぇ……。誰がどうやって作ったのかしら?」
「まさかアース? まさかねぇ~」
道なりに進むと、奥には接岸出来る岸と造船ドッグが並んでいた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
「あ、きた。お~い!」
アースが階段から降りて行くと丁度船が到着していた。
「船は適当につけちゃって!」
そこに先に竜達が降りアースを囲んだ。
「ア、アース。こりゃいったいなんだ!? あの鉄の塊はいったい……」
「ああ、あれは新しい船だよ。魔道船って言ってね。風がなくても走れる船なんだよ」
「は、はぁ?」
「アース? 天井の光は?」
「あれは魔道ライト。魔光石を使った魔道具だよ」
「アース? まさかこれ君が?」
「ん? うん。全部俺の作品だよ。魔族達がようやく落ち着いたからさ、俺も本業に戻ろうかってね」
「本業??」
「うん」
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