転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢

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第4章 侵略

第49話 人間の町

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 アースはライハ達に案内され人間の町に向かった。ライハが通りを歩くと民衆から歓声が上がる。

「ずいぶん人気者のようだね」
「……そんな事はない。私はこの歓声は私がやらなければならない事をきちんとこなしているからだと受けている。民に喜ばれずにして何が王か」

 アースはその考え方を気に入った。

「……どうやらあなたは良い人間のようだ。威嚇するような真似してすまなかった。だが、こちらもグラディス帝国に侵略されかけたんだ。少しくらいは大目に見てもらえるとありがたい」
「事情はわかっている。この地を帝国から解放出来たのはそちらに全戦力が向いたからこそ。逆に感謝しているよ」

 アースはライハに尋ねた。

「一つ質問しても良いかな?」
「なんなりと」
「グラディス帝国の人間はどうした? 兵士は死んだがその家族や戦えない者などはこの地に残ったままだっただろう?」

 ライハはアースの質問に正直に答えた。

「帝国の民はそのままこちらで保護している。生活の基盤が出来上がるまでは税金を免除し、我が連合国が補償金を提供している」
「へぇ~。殺さなかったんだ」
「当たり前だ。そう簡単に命を奪うなどあってはならない。もし抵抗があれば戦になっていたかもしれないが、戦力のない帝国の民はすぐさま降伏し、私達に統治される道を選択したのだ。その心意気を汲み、私達は帝国の民を保護する事にした」

 アースは感心していた。

「……全ての人間があなたみたいな考え方なら戦はなくなるのかもしれないな」
「それはないだろう」
「え?」

 ライハはアースに何故人は戦をするのか口にした。

「人は増えすぎた。だが土地や資源には限りがある。住む場所がなければ、食べる物がなければ人は簡単に狂ってしまう。デモン大陸へと侵攻した理由も、獣人をこの大陸に追いやったのもそれが理由だ。今はかつての人口の半分くらいだが、やがてまた人が増えれば争いは繰り返されるだろう」
「……でもデモン大陸は死の大地だよ?」
「それはない」

 ライハはそう言い切った。

「何故……そう思う」
「お前はデモン大陸に魔族、エルフ、竜、獣人が住んでいると言った。大陸の半分以上が死んだあの大陸でそんなに生物が住めるわけがない。お前は何らかの手段で死の大地を復活させたのではないか?」

 アースはライハの頭の良さに驚いていた。

「……すごいな、あんた。たった一言からそこまで読む?」
「ふっ、そうでなければ王など、ましてや連合国の頭など務まらんよ。でだ、本当に死の大地は復活したのか?」
「……ああ。隠しても意味はないし、正直に答えよう。死の大地は俺が復活させた。俺は地竜、大地の事に関してはなんでも出来るとだけ言っておこう」
「地竜……か。なるほどな」

 ライハはアースに尋ねた。 

「例えばだが……、死の大地は黒い砂地だったはずだ。その砂は栄養も何もなく、水は全て吸収し、草木は一切育たない。それと同じような大陸が南にもある。これは普通の砂漠地帯なのだが……、お前の力でその大地を豊かに出来るか?」
「出来るよ。最初から砂漠地帯だったわけじゃないならね」
「なるほど……。となると……南のバーミリオン王国も何とか出来るかもしれん」
「南?」

 ライハは南の大陸のほぼ全てを治めるバーミリオン王 国についてアースに説明した。

「南の大陸は今バーミリオン王国と言う強国が治めている。その南の大陸は死の大地に似た土地でな、大半が砂と岩で埋まっているのだ」
「へぇ……」
「私達は今バーミリオン王国に取引を持ち掛けようとしている。物資などを支援する代わりに戦をしないと確約させたいのだ」
「それこの国大丈夫なの?」
「……無理してでもやらなければならんのだ。民を平和な暮らしへと導くためにはな。っと、話ばかりで町の案内が疎かになっていたな。まだ仮の状態だがどうだろうか?」

 アースは話をしながらも町をしっかり見ていた。作りは簡素だが皆幸せそうに暮らしているのが見受けられた。そしてちらほらと商人らしき人の姿も見えた。

「あの商人の品はどこから?」
「あれは大陸中央にあるダンジョンがある町からだ。ダンジョンでは様々な物資が手に入るからな。最近岩の下から発見されたのだ」
「へぇ……、ダンジョンがあるのか。ならこの景気の良さにも頷ける。潜っているのは国の騎士かな?」
「ああ。精鋭を全て投入している。それでもまだまだ足りないのだがな……」

 ストレージのない人間達では宝を持ち運べる量も少なく、効率が悪いのだろう。デモン大陸があっと言う間に栄えたのはアースのスキルがあってこそだった。

「そんなんで南の強国と取り引きなんて出来るの?」
「正直に言うと厳しい。自分らの生活もまだ安定していないからな。そこでだ、アース殿。どうか私達と同盟を組んではもらえないだろうか?」
「同盟? 本気? 俺達は人間の敵だった種族だよ?」
「それも過去の話だ。今は未来について話をしている。どうだろう、こちらは一切デモン大陸には近付かない。代わりに我らに協力してはもらえないだろうか」

 そう言い、ライハはアースに頭を下げた。

「ちょ、ライハはん! うちらの頭のあんたが何軽々しく頭下げとんねん! それやと同盟やなくなるやろが!」
「そうです! 同盟とは対等な関係の上で成り立つもの、一方が頭を下げるなど……!」
「それでもだ。私達だけでは手が回らないのはわかっているだろう」
「しかし……!」

 アースは言った。

「ストップ。同盟なんたらの話をするならさ、ちゃんと話をまとめてから来てよ。何日かはこの町にいるからさ。その間どうしたいかちゃんと話をまとめて来てくれ。こっちはデモン大陸に近付かなければ同盟は結んでも構わない。今一度方針を話し合って来てくれ」
「アース殿!」

 アースはライハ達の実りない口論に付き合いきれなくなり、火竜達を連れその場を離れるのであった。
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