転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢

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第5章 ゴッデス大陸

第56話 ダンジョンから出て

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 自分ばかり働かせ宴会を開いていた兄たちを叩き潰したアースは一人地上へと戻っていた。

「まったく! 信じらんないな! 俺が八股大蛇と戦っている間に宴会とか!」

 アースは兄たちにダンジョンで一から鍛え直すように告げた。その際自分に勝つことができたら許すとも。これであの三人も真面目に働くだろう。

 地上へと戻ったアースは今、獣人の町と人間の町の中間地点に立っていた。その地点からはすでに各都市に向かい街道が通っている。

「さてと……、スタンピードの心配もなくなったし、本来の目的に戻るとしますかね」

 本来の目的、それはこの場所を人間と獣人がお互いに差別される事なく楽しく暮らせる町を作る事だ。そして願わくばこの地の全てがそうなって欲しいとアースは考えている。獣人側からしたらここはかつて自分達が追いやられた地であり、それでも一から開墾し、生活出来るようになった地でもある。今さら自分達を追いやった人間が何をと言わん気持ちもわからないでもない。

 しかしそれではお互いいつまで経っても相手を認める事はないだろう。筋から言えば獣人の味方をして当たり前だが、出来るなら全員が仲良く暮らして欲しい。

 そう言う思いでアースは動いていた。中には愚かな者もいるだろう。だがそれで種全体に悪印象をもっては醜い戦が止まらなくなり、結果星は死んでしまうだろう。 それでは神から転生させてもらった意味がなくなってしまう。

 ここは今一度広い視野を持ち、どうすれば世界が真の平和を得られるか、そろそろこの問題に取り組むべきなのかもしれない。

 アースは人と獣人、その両方の特性を受け入れられる町作りを始めた。

 まず、基本この地に住居は設置しない。全ての民がこの場に地に来て楽しむ事だけを目指す。
 
「作るのは飲食街、宿泊地、観光街、自然特区かな。町は円形にして四つ、いや中心地にコロシアムを作って五つにわけよう」

 このコロシアムでは様々な大会を催せる他、問題が起こった際はお互いの矜持をかけて一対一で戦い白黒をつけさせると言う目的もあった。その際はコロシアムを結界で覆い、仮に致死ダメージを受けても命に別状がないように工夫をこらす。お互いに全てを吐き出しあえば遺恨はなくなるだろうと踏んでいる。
 
 まずは飲食街。ここは人間の料理と獣人の料理を楽しめる場所にする。最初は自分らの料理しか食べないだろうが、その内相手側の料理とはどんなものか気になり、お互いに足を運ぶようになるかもしれない。それが進めばお互いの料理が融合した新しい料理もできるかもしれない。これが純粋に楽しみだ。

 宿泊地は言わずもがな宿泊する場所だ。獣人と人間の町からはそれほど離れてはいないが、どうしても泊まりでゆっくりしたいという客もいるだろう。従業員探さなきゃな。

 次は観光街だ。ここは観光というよりは娯楽に溢れた場所にする。まぁいわゆる夜の街だ。酒はトラブルも多いが上手く使えば本音で話し合えるようになる魔法のツールでもある。これで上手くいってくれたらありがたい。

 そして最後は自然特区だ。ここには芝生を敷き花壇や噴水、足湯等を用意する。日々の仕事や喧騒から離れ、四季の景色を楽しめる場所にする。疲れや苛立ちは争いに繋がりやすい。その疲れをここでゆっくり過ごし癒してもらう事が目的だ。

「一先ずこんな所かな。後はこれをガラオンとライハに伝えて完成だ。各地からここで働けるキャストを送ってもらえないか聞いてみよう」

  魔法とは本当に便利な物だ。特にアースの持つ土魔法は便利で、土をあらゆる形に変えたり、大地にある命を操作する事ができる。建物も魔法で成分を弄りコンクリートに似た壁にし、ガラスも作り出せる。わずかでも土にその成分が入っていれば魔力でその質量を増やす事ができる。事開発に至ってはアースの持つ土の力は絶大な効果を示すのである。

 アースはまずガラオンの所に向かった。

「中間地点に町……ですか」
「うん、そう。人間と獣人が交流するための町を作ったんだよ。まだ家はないんだけどね。店舗や施設はもう作ってあるんだ。そこで働ける者がいないかなと」

 ガラオンはアースの提案を承諾する。

「酒場と食堂、それに宿で働く者でよろしいかな?」
「うん、まずはその辺りで。後々新しい商売とか始めたい者を送ってくれても構わないよ」
「わかりました。すぐに選定し向かわせましょう」
「よろしくね~」

 ガラオンから承諾を得たアースは次にライハの所へと向かう。

「あそこに町を……。なるほど、目的は交流かな?」
「そうですね。作ったばかりでまだ働き手がいないんですよ。あそこはいずれ人間と獣人が一緒に暮らせる町にする予定です。なので今はまだプレオープンのような感じですね」
「そうか。話はわかった。働きたい者がいたら送ろう。アースはその町にいるのか?」
「そうですね。しばらくは様子を見たいかなと」
「わかった。アースがいるなら問題が起きても大丈夫だな。明日から向かわせるとしよう」

 何か利用されそうな気もするが人を送ってくれるなら首を縦に振るしかない。

 そして数日後、やはり問題が起きた。

「だからここは俺達獣人が先に店を開いたんだって言ってるだろ!」
「先に声が掛かったのが獣人らしいじゃないか! そんな立地の良い店舗ばかり押さえやがって!」
「早い者勝ちだろうが。後から来たお前らが悪い」
「なにおうっ!」

 たまらずアースが止めに入る。

「ちょっと待て。店舗は道を挟んで人間と獣人で分けたはすだ。なんで争ってんだ? 条件は同じだろ?」
「あ、アースさん! 聞いて下さいよ。獣人の奴ら……先に来て歓楽街側の店舗を押さえてたんです!」
「……それの何が悪い?」
「悪いでしょ!? 食べたら遊びに行きたくなるのが普通です! 対してこちら側は公園しかないじゃないですか!」

 アースは人間にこう告げた。

「よく考えてくれ。食べてすぐ遊ぶなんて身体に悪いだろ? 食べたらゆっくり休みたくなる。昼なら芝生に寝転んだりして休みたくならないか?」
「……あ」
「ここはそれぞれが楽しく過ごすための町なんだ。中には食べてすぐ遊びに行く者もいるだろう。だがな……そんな若者だけが来るわけじゃない。日々の疲れを癒しに来る者も一定数いるはずなんだよ。特に足湯なんかは足の疲れを癒してくれるし、自然豊かな公園はゆっくり話をしたい恋人たちの憩いの場になる。俺はどこに店を構えても上手く回るように設計したつもりなんだけどな」
「……す、すみません……。目先の利益だけにとらわれていました。そうですよね、なにも客全員が遊びのために来るんじゃなかった。その辺りをもう少し考えてみます……」
「そうしてくれ」

 まだオープン前だと言うにも関わらず問題ばかりのスタートだ。それほど人間と獣人の仲は悪い。アースは大きな争いにならぬよう気を配るのであった。
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