転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢

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第5章 ゴッデス大陸

第57話 友愛の町

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 人間と獣人の町がオープンして一ヶ月。町には働き手となる人間や獣人が住むようになり少しずつ賑わいを見せ始めていた。

 最初の場所争いのような争いもあれ以降なく、町は静けさを保っている。だが未だに種族交流はない。人間は人間、獣人は獣人とだけ組み、対立が根強い事を示している。

 アースは頭を抱えていた。

「う~ん……。何か仲良くなる方法はないものかねぇ……」 

 最近は観光客も少しずつ見られるようになった。だが人間は人間の店に、獣人は獣人の店にと徹底して二分された状態だった。

 そこでアースは一つのイベントを開催する事にした。アースは町で働く従業員を全員集めイベントについて説明を始める。

「「「「町コン??」」」」
「うん、町コンを開催する」

 人間の一人が手を挙げる。

「町コンってなんです?」
「町コンって言うのは町が主宰して男女の出会いをサポートするイベントなんだよ」
「はぁ……」
「まず、君達にはいつも通り店を開いてもらう。けど店の前に一つ看板を出して欲しいんだ」
「看板?」

 アースはチラシを張り付けた板を自分の横に置いた。そしてそこにはこう書かれていた。

「「「異種族の方半額? ま、マジですか!?」」」 
「うん。マジ」

 アースの答えに双方から声があがる。

「なんでそんな事を? 今まで通りで良いじゃないですか。人間は人間同士の方が楽しいに決まってますよ」
「あぁっ!? そりゃこっちもだ! なんで人間なんか相手にしなきゃならねんだよ! やってられっか!」

 その時だった。アースの手刀が轟音を響かせ机を真っ二つに叩き割った。そして笑顔でこう集まった者達に継げた。

「はははは。わかんないかなぁ~。ここは人間と獣人が仲良く暮らせる町にするって最初から言ってるじゃないか。いつまでもバカやってたら追い出しちゃうよ? 別に働き手はお前達じゃなきゃならないってわけじゃないんだ。仲良く出来ないなら出来ない理由を言え。いい加減にしろよお前ら。俺がいつまでも笑ってると思うなよ」

 普段はほとんど怒る事のないアースがこの時ばかりは本気で怒った。それを受け集まった者達は一瞬で静まり返った。

「お前らさ、いつまでそんな不毛な争いを続ける気だ? 確かに獣人からしたら人間は自分達が住んでいた場所を奪った相手だとは思うよ? だけど今は戻ってこれただろ?」

 獣人は大恩あるアースに対し何も言えなかった。

「んで人間だ。お前らいつまで自分が一番偉いとか思ってるわけ? 俺はどちらかと言うと獣人の味方だ。そちらが折れないならこの大陸はあるべき持ち主に返す事になるんだよ? ライハには悪いが俺はやると言ったら徹底的にやる。その原因がお前達になるんだ。それでも良いのか?」

 人間達は少しアースを舐めていた。普段は温厚で人型になっているためか、侮っていたようだ。いくら前世が人間とはいえアースも怒る時は怒る。ましてや侵略者側の人間が歩み寄る姿勢を見せないのは許せなかった。

「か、勘弁して下さいよぉ……。そんな事になっちまったら俺達全国民に殺されちまいますよぉ……」
「なら歩み寄れ。ここでやっていきたいんだろ? いつまでいがみ合うつもりだ。悪いのは人間側だ。お前らから歩み寄らないでどうする。まずは謝罪、それから握手! 早くしろ」
「「「「は、はい……」」」」

 人間達は獣人達の前に立ち頭を下げた。

「も、申し訳なかった。俺達も本気で嫌ってるわけじゃないんだ。ただ国がな……。ほら、人間にも色々いるだろう? 中には獣人と仲良くしてると悪く言ってくる奴もいるんだよ。俺達だって客商売だ。一度悪評がたっちまったら客が寄り付かなくなっちまう。この大陸はまだまだ人間の方が多いし、獣人は俺達の店には入らないだろう?」
「それは仕方ないだろ。あんたらは侵略者なんだからな。アースさんがいなかったら俺達はこの大陸にすら戻れず、下手したら全員死んでたかもしれないんだ。だが俺達も鬼じゃない。そちらが誠心誠意謝るってんなら過去は水に流すとは言わないまでも協力してやる事は出来る。例えば次の店にオススメとかしたりよ」
「あ、あんた達……」

 獣人の男が言った。

「だからよ、やってみようぜ。アースさんが言う町コンとか言うのをよ」
「あ、ああ! なんとしても客を連れていくよ! もしいなかったら俺達が行くよ!」

 そうして人間と獣人は手を取り合った。それを見てアースは手を叩いた。

「やれば出来るじゃないか。お前達に足りなかったのは話し合いだ。じゃあ町コンについて説明するぞ。みんな席についてくれ」

 集まったみんなが席についたのを確認し、アースは説明を始めた。

「まず、通常町コンってのは女性は格安で男性から少し高めの会費を集めてチケットを売るんだ。で、チケット一枚につき店で町コンセットを提供するシステムなんだけど……」

 みんなは黙って話を聞く。

「俺の提供するサービスはちょっと違う。女性は基本無料、女性が飲み食いした分は俺が精算する。そして男性だが、男性の場合異種族の店で飲食した場合のみ俺が半分支払う」
「アースさんが支払うんですか?」
「ああ。これはお前達を信用してるから言ってるんだ。まさか客の性別や飲食代を誤魔化すような真似をする奴はいないだろ? このイベントはお前達の協力がなければ成り立たないんだ。これを期に人間と獣人の仲を深めていければと思っている。この第一回が成功したら第二回、三回と続けていき、この町を真の意味で人間と獣人の癒しの町として売り出していきたいと思っている。だから一緒に頑張ろう」
「「「「は、はいっ!」」」」

 こうして一応は仲直りした人間と獣人の従業員をまとめ上げ、アースは世界始めてのイベントの開催決定を宣言するのだった。
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