幕末の剣士、異世界に往く~最強の剣士は異世界でも最強でした~

夜夢

文字の大きさ
17 / 63
第一章 最初の国エルローズにて

第17話 爆進!

しおりを挟む
 現在地下五十階。そのボス部屋に総一朗はいた。

「うはははははっ! 美味しすぎるぜこの階層!」
《ガ……ガガッ……》

 ボスはアイアンゴーレムだ。だが弱点は丸出し、動きも単調、素早さを売りにする総一朗の相手にはならなかった。

 加えてこのボスからはたまに虹色の箱が出る。中には大量の黒金貨が詰まった袋やレアな装備品、果ては書物セットやカプセルが詰まったカプセルボールと、地下五十階で総一朗の目的はほぼ果たされた。

「う~ん、とりあえず潜ってから三日か。また扉の前に戻ってアイテム整理でもするか」

 総一朗は入り口の扉を開きボス部屋の前に戻る。そして魔導ベッドで横になりながらアイテム整理を始めた。

「これもう一生のんびり暮らせるんじゃないか?」

 手に入れた黒金貨だけでも数千枚、さらに魔剣などレア装備が山のように手に入った。目的である魔導具も揃い、書物は鑑定し使えそうな物は全て使っている。

「なんつーか……スキルってなぁズルだな。こんなので強くなれたら誰も厳しい修行なんてしなくなるんじゃないか? いや、もしかするとスキルが必要になるような強敵でもいるのか? わからんなぁ……」

 いくら考えた所でこの世界についてわかるわけもない。未だにヴェロームとデリル村、そしてこのダンジョンしか知らないのだ。

「それにしても変だな。一向に他の冒険者の姿がねぇ。もっと下にいるのか?」

 前回も今回も早朝から潜ってきた総一朗には知る由もなかった。

 現在地下三十階。

 「ほ、ほほほほ骨ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? 弁慶! 骨が走ってるよっ!?」
「えぇぇぇい! 地獄かここはっ!」

 弁慶達は地下三十階でスケルトン相手に奮闘していた。見ると周りにも冒険者の姿がある。

「あいつら強ぇなぁ~……」
「仲間に入ってくんないかなぁ……」
「あいつら……いや、あの大男だけでも仲間になってくれたらスケルトンキングも倒せそうなんだけどなぁ」
「魔剣欲しいよなぁ……」

 冒険者はいないわけではなかった。この国の冒険者では地下三十階層まで到達する事が精一杯だったのである。それを考えると総一朗が助けた冒険者はかなり優秀な部類に入る。

「こ、怖いよ弁慶! もう戻ろ! ね!?」
「ご主人、何を言われますか! 総一朗は地下四十一階層から始めているのですぞ! 我も負けてはいられませんっ!」
「も、もうイヤァァァァァァァァッ!?」

 義経は妖怪の類いが苦手らしい。もはや完全にお荷物になっていた。

「ぬぅぅぅ……、仕方ない。いったん戻りましょう。ダンジョンに潜り三日、そろそろ総一朗の奴も戻る頃でしょう」
「そうだよねっ! は、早く帰ろうよっ!」
「帰るにも次の階層に下りねば。さ、ご主人。もう少し耐えてくだされ」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」

 そうして進む事地下三十一階、弁慶達はダンジョンから地上へと帰還した。

「む? 総一朗?」
「おう、弁慶。お前達も戻ったか」
「ああ。今な」
「何階まで下りた?」

 すると義経が視線を反らした。

「地下三十一階だ」
「三十一階だぁ? いやいや、お前らの強さならもっといけただろ?」

 そう告げると弁慶は義経の方をチラリと見た。それで総一郎は察した。

「ああ、なるほど。あの骨が怖かったんだな?」
「うむ。そこまでは順調に進めていたのだがな、三十一階に入ってからは全く進めんかった」
「ううう……」

 総一郎は落ち込む義経に向けこう言った。

「まぁ……歩いて襲ってくる骨だもんな。その階層はずっとそうだぜ。地下四十階のボスもデカい骨だしな」
「ふぇぇぇ……、そんなの無理だよぉ~!」
「ふぅむ……。義経、お前くらいになると目を閉じても敵の気配がわかるんじゃね?」
「え? うん」
「なら目を瞑れば良いだろ。で、魔法で倒せば?」
「あ! そっか! 魔法!」

 どうやら光明が見えたようだ。すると弁慶が総一郎に尋ねてきた。

「お主は何階まで下りたのだ? スタートが地下四十一階ならばさらに下りたのだろう?」
「ああ、俺は地下五十一階だ」
「む? 三日で十階層しか下りられなかったのか?」
「いや、ほとんどの時間を地下五十階層のボスと戦ってたんだよ。雑魚と戦うよりボスと戦った方が宝もレアな物が手に入るしな。今の俺はちょっとした大金持ちだぜ」
「雑魚戦よりボス戦か! 確かにボスを倒した時は金色の箱が……」

 総一郎はニヤリと笑った。

「それだよ。地下五十階のボスは結構な確率で虹色の宝箱を落とす。中身はレア物ばかりよ」
「むぅぅ……ズルいぞお主! 我もその階層に行くぞ!」
「ははは、ご主人様を何とかするんだな」

 そして総一郎は二人に尋ねた。

「俺は一度村に戻るがお前たちはどうする?」
「ふむ……。我らはもう一度潜る。主にはなんとか頑張ってもらい地下四十階までは攻略しておきたい。これでは我らがお主に寄生していると思われかねんからな」
「そうかい。ま、潜る前に書物を使ってスキルを身に着けていきな。多少はマシになるかもよ」
「マシとか言うな。ご主人は妖の類でなければ恐れたりせん」
「はっはっは! ま、良いさ。俺は村に戻り家の代金を払っておく。家の場所は――」 

 家の場所を二人に教え、総一郎はデリル村に、二人はその場で書物を吟味し始めた。どうやら二人も鑑定を手に入れたらしい。

「よっし、ターニャのお母様待ってて下さいねぇ~! 今行くぜっ!」

 総一郎は全速力でデリル村を目指し疾走するのだった。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...