異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢

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第一章 始まり

第26話 錬金術師組合

 王家に洗髪料を献上し商品に王家の印を刻むことが許可された。これは錬金術師史上でも初のことで、リーフの噂は首都だけに留まらず商人伝いに国中へと広まっていった。

 加えて冷え性が改善した王妃は各国代表との会合にも積極的に顔を出すようになったらしく、その場で王妃が他国に宣伝しまくったものだから注文がパンクしそうなほど工房は大忙しだ。

「リヒト助手! どうなってるですかぁぁぁっ!? 作っても作っても追いつかないです!」
「だから忙しくなると言ったでしょう? 俺も手伝ってるんだから働く働く」
「ひぃぃ~……ってリヒト助手? い、いつから一人で作れるようになったです?」

 この数日でパスタ麺やら調味料やらを錬金しまくったおかげで俺の錬金術師レベルは一瞬でリーフを追い抜きマスターしてしまっていた。その副産物として閑古鳥が鳴いていた渡り鳥のやどり木亭は大繁盛、あちらも忙しさに目を回しているがファルコは感動しながらパワフルに頑張っている。

「やってたらできるようになったんですよ。それから稼いだお金は貯めておいて下さいよ」
「使う暇なんてないです。でもなんでです?」
「それは国中から錬金術師が殺到するからですよ」
「へ?」

 目を丸くするリーフに理由を告げた。

「これまで錬金術師は虐げられてきました。けど今回の件で錬金術師の可能性が広まった。自分も作りたいと思う錬金術師がここに集まってくるんですよ」
「え? え?」
「そうなったらこの工房だと狭すぎて仕事になりません。新しく工房を建てる必要があります。そのためにお金は貯めておいて下さいよ先生」
「わ、私これからどうなるです~~っ!?」

 この数日後、予想していた通り数人の錬金術師が工房にやってきた。リーフは忙しそうだったので俺が代わりに面接をする。

「あの、ここが王家に認められた錬金術師の工房でしょうか?」
「そうですよ。王家の印は無断で使用したら死罪になる。これがその品です」
「これが……っ! わ、私を雇って下さい! 錬金術のレベルは12あります! 雑用でもなんでもします!」
「良いですよ。ただし条件があります」

 ここで雇う条件。それはレシピを絶対に外へと漏らさないことだ。一度漏れたら類似品や模倣品で溢れ輸出できなくなってしまう。いずれレシピは販売する予定だが今はまだその時ではない。そして万が一情報を漏らした場合は氏名などを王家に伝え国家反逆罪として扱われると伝えた。

「かまいません! 錬金術師として胸を張って歩けるなら!」
「わかりました。では明日からきて下さい。お待ちしてえります」
「あ、ありがとうございます!」

 それから何人か面接にやってきたがどの錬金術師も虐げられてきた過去を理由に、仕事をできるならかまわないと意気込みを見せてきた。俺は手を抜くことなく人柄を重視し面接を進めた。その中には錬金術レベル20の老婆もおり、その場で採用を伝えた。

「こちらからお願いします! ぜひ工房で働いて下さい!」
「ふぇっふぇっふぇっ。もちろんじゃとも。あんたがここの責任者かい?」
「いえ、俺はただの手伝いです。そして俺はあなたのような人を待っていました」
「ワシのような?」
「はい。洗髪料はレベル15あれば一人で作れます。あなたにはこれから立ち上げるリーフを組合長とする【錬金術師組合】の補佐官として働いてもらいたくて」

 老婆はニヤリと笑った。

「錬金術師組合のう……。とんでないことを考えとるねぇ」
「せっかく錬金術師の立場が向上したんです。これを無駄にするのは勿体ないでしょう。軌道に乗れば全ての悩める錬金術師達を救えます」
「ふぇっふぇっふぇっ。お人好しじゃのう。あいわかった、老い先短いワシじゃができることは力を貸そう」
「ありがとうございます。あなたには未熟な錬金術師達の指導をお願いしますね」
「任せんしゃい」

 リーフより錬金術のレベルが高い者は何人かいた。虐げげられていても錬金術が好きで錬金術一筋で生きてきた変わり者。そんな人達がいるだろうと予想していたが、予想通り工房にきてくれたことは感謝しかない。

 俺は王家に手紙を送り面会の許可をもらった。

「ほう、この首都に錬金術師達の巨大工房を?」
「はい。今国内各地から燻っていた錬金術師達が集まりつつあります。そこで新たに錬金術師組合を創設し、さらなる品々を開発、販売していきたく考えております」
「ふむ」

 陛下は何やら考えながら俺を見ている。

「しかしお主は冒険者ギルドの職員見習いなのだろう? なぜ錬金術師に肩入れしておるのだ?」
「いや、それはその……」
「ははっ、よい。調べはついておる。お主は冒険者ギルド職員見習いではないのだろう?」
「……はい。俺はただの冒険者です」

 陛下は顎を撫でながらニヤリと笑っている。

「お主のことは全て調べさせてもらった。エイズーム王国からロゼット村に流れ着き、まずは薬師として働いていた。さらに村では狩人もしていたそうだなぁ? して、首都にきてからは錬金術師か。本当のお主はいったい何者なのだ? 全て語ってもらおうか」

 全て調べられている。小国だと思い侮っていた。すでに全て調べ尽くされているのだろう。陛下の笑みはそれを俺に伝えるには十分だった。

「エイズーム王国が勇者召喚をしたことは把握されてますか?」
「うむ。四人の勇者が召喚されたそうだな」
「ええ、表向きは。本当は五人です」
「ほう」
「その五人目が私なのですが、勇者という職業がなく追放されたのです」
「……やはりか。お主は異世界から召喚された者であったか」

 やはり全て調べられていた。陛下は真剣な眼差しで俺を見る。

「お主は勇者ではないのだろうが何か特殊なスキルを持っているのだろう。だが詮索はせん。いらぬ詮索をして国から去られては困るからな。国に残ってもらえるならば錬金術師組合とやらの立ち上げは許可するし、巨大工房も国家事業として急ぎ建設させよう」
「まさかそこまで買っていただけるとは」
「ははっ。なに、お主は恩人だからな。それに……まだまだこの世界にはない品々を産み出す可能性がある。我らにも一枚噛ませてもらえんか?」
「取引ですか」
「そうだ。国が後ろ盾になる。これは間違いなく国を守るためになる事業だ。工房には騎士も派遣しよう。製法の流出には気をつけるのだぞ?」
「はい、私も同じ考えでした。騎士派遣の旨は組合長となるリーフ殿にしかと伝えさせていただきます」

 すると陛下は首を傾げた。

「んん? お主が組合長ではないのか?」
「いえいえ。お調べになったのでしょう? 私はしがない冒険者です。錬金術だけでなくまだまだやりたいことはたくさんありまして」
「なるほどなぁ。渡り鳥の止まり木亭だったか。最近飯が美味いらしいな。お主か」
「はい。異世界の料理を再現してます」
「気になるなぁ。お忍びで妻と行こうかの」
「でしたら今度の定休日にでも。最高の料理でおもてなしいたしますよ」
「うむ。期待しておるぞリヒト殿。はっはっは!」

 こうしてこの世界に錬金術師組合が設立されることとなった。職業のせいで悩める者が減ればいいという俺の考えはひとまず達成されることになるのだった。
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