異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢

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第一章 始まり

第27話 成長

 王と謁見し錬金術師組合の発足を確約してもらった翌日、首都郊外に巨大工房の建築が始まった。その完成までの間に錬金術師達を面接し組合員を確保していった。

 リーフはいきなり告げられたとんでも話に絶望していたが全ての錬金術師達のためと説得したら渋々納得し組合長の立場を呑んでくれた。

「や、やるからには手は抜かないです! あと、手助けして下さいです!」
「もちろん。作るだけ作って放置はしないよ。工房は離れるけど首都にはいるからさ。頼りたい時はいつでも渡り鳥のやどり木亭にきてよ」
「わかったです!」

 最後に次なる新商品【化粧水】と【ミネラルファンデーション】、【フェイスパック】を渡した。

「こ、これは!」
「次の新商品だよ。レシピはこれだ。今のリーフでも問題なく作れるはずだよ。あとまだレベルが低い錬金術師でも作れるからさ。これでレベル上げさせてやってくれるか?」

 リーフは受け取った新商品を調べて驚いている。

「このファンデーション……水銀入ってないです?」
「水銀は肌に悪いからね。これは天然素材から抽出した成分で作ってるから肌に良いし石けんで落とせるんだよ。貴族とかゴリゴリに塗ってるファンデーションと違ってサッと塗れて肌に優しく簡単に落ちる。爆売れ間違いナシのヒット商品だよ」
「ごくり……。あ、ありがとうリヒト助手! 錬金術師組合名誉顧問にしてあげるです!」
「あはは、ありがたいな。とまぁ、今後も新商品は伝えていくから販売しながらお客様の声を集めてくれ。どんな商品が望まれてるかしりたいからさ」
「わかったです!」

 こうして俺は工房を離れ渡り鳥の止まり木亭へと戻った。

「おう、おかえりリヒト。錬金術師なんたらはどうした?」
「リーフに丸投げしてきたよ。それよりファルコにとんでもない知らせが」
「おん?」

 俺はファルコに両陛下がお忍びで食事をしにくる旨を伝えた。

「は? え? 国王夫妻が家にくる? な、何言ってんだお前!? じ、冗談だろ!?」
「俺を調べる過程でこの店の評判を耳にしたらしくてね。まぁ仕方ないよな。今やこの店は首都一だし他にはない料理ばかりだしな」
「じ、冗談じゃねぇ! ミスったら処刑されちまわぁっ!」
「陛下はそんな方じゃないよ。俺も手伝うからさ、最高の食事を提供しようじゃないか」
「……頼む。俺はまだ一人じゃ無理だ」
「いけると思うんだけどなぁ。じゃあいつくるかわからないしこれから毎日特訓しようか」
「お、おうっ!」

 練習を始めて一ヶ月、毎日朝から晩まで料理に没頭しているうちに料理人レベルはマスターとなった。これでマスターしたジョブは四つだ。下級職ばかりだが何かを極めることは楽しくて仕方なかった。

 そんなある日の正午、変装しているが明らかに一般人と違うオーラを放った二人が渡り鳥の止まり木亭に顔を出した。普段は満席だが今日は他に客がいない。気配を探ると厨房にファルコ以外の気配が一つ。店の外に強者の気配が十あった。

「やってるかい?」
「お待ちしておりました」
「うむ。ようやく時間ができたのでな。妻と噂の料理を楽しみにきたよ」
「ありがとうございます。本日はなにを食されますか?」
「この店で一番人気の品を。酒は……」
「あなた?」
「んんっ! さ、酒はよい。何か飲み物を」
「かしこまりました。奥様は……おや?」

 王妃の顔を見ると前回見た色とは違い自然な色合いになり輝きも増していた。

「なるほど。お使いになられましたか」
「やっぱりアレはリヒトさんが考えた商品だったのね! ふふっ、アレは素晴らしいわ。社交界でも若返ったんじゃないってみんなに言われるのよ~」
「作らせた甲斐があります。以前の化粧品はあまり質がよくない品に見えましたので。どうぞ今後ともご贔屓に」
「もちろんよ! もうアレは手放せないわっ」

 それから厨房に戻りファルコと共に前菜にサラダを出し、王にはチーズインハンバーグセット、王妃にはトロトロ玉子の半熟オムライスデミグラスソースがけを提供した。飲み物は冬真っ只中なのでチャイもどきを提供した。もどきな理由は原材料そのものが探しても見つからなかったからだ。似た成分の物を独自ブレンドで配合しチャイに似た味わいを作り出してみた。

「ぬぉっ!? 見ろお前! 肉の中にチーズが入っておるぞ! しかもなんだこの柔らかい肉は!? 何種類かの肉が混じっているな」
「はい。オーク、コカトリス、ファングボアを配合しております。配合する具合で食感から味まで変えることができますので飽きがきませんよ」
「私の料理も素晴らしいわっ! トロトロの玉子とソースが合ってるの!」
「そちらは火加減が難しくソースは当店オリジナルにございます。ですがこれらのレシピは献上いたしましょう」

 すると王が俺を制してきた。

「いや、それはならん。この料理は価値がある。いくら我とてそこまで厚かましくはないぞ」
「いえいえ。陛下には今後ともお世話になりますし、なにより気軽に食べにはこられないでしょう?」
「う……む。しかしだな」
「なにもタダで献上するわけではございません。陛下には私の秘密を話しました。今後目立つでしょうし万が一貴族達から突かれた場合に助力いただきたく」
「なるほどな。錬金術に料理、これだけでも話題には事欠かないだろう。まさか我を防波堤にしようっはな。はっはっは」
「いえいえ、善意からの取引です。嫌な思いをすれば他国に渡るかもしれませんしねぇ」
「なりません! あなた、約束を!」

 どうやら王妃は心底新商品の虜になってしまったらしい。女性の美に対する執念は恐ろしいな。

「わ、わかっておるわ。後ろ盾でも防波堤でもなってやるわい。何かあったらこれを使え」

 王はテーブルに王家の紋章が入った短剣を置いた。

「これは?」
「それは王家の短剣だ。王が信頼を寄せる者にしか渡さぬ短剣だ。紋章を謀ることは死罪を意味する。どんな貴族だろうがそれを見せるだけで退くだろう」
「それはまた。ありがとうございます」
「かまわぬよ。で、我がここまでしたのだ。勝手に国からいなくなるような真似はしないでくれよ? 妻に殺されてしまうからなぁ」
「あなた!」

 王妃は頬を膨らませ王の肩を叩いていた。

「もちろんですよ。これからも良き関係を続けましょう」

 最後にチャイもどきをお代わりし両陛下は城へと戻っていった。俺は厨房で固まるファルコに問い掛ける。

「ファルコさぁ、せめて厨房から出てきてよ」
「無理に決まってんだろ!? よく緊張しないで話せるなお前!?」
「もう何回も顔合わせてるからねぇ。多少は気を使うけど緊張するまではないかな」
「……お前の心臓が羨ましいぜ。はぁぁ……酒でも飲まなきゃやってらんねぇな」
「ならツマミでも作ろうか。今日は俺が店やるよ」
「任せたわ。俺はもう疲れちまったぜ……」

 その後売り上げは過去一になったが酔って潰れたファルコは知る由もなかったのだった。
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