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第四章 迷子編
第78話 夢
これは夢だ。ベッドに沈み込む直前まで聞いていたルナの話に引きずられたのだろう。辺りは真っ白な世界。その中央には結晶の中で立ったまま動かない男がいた。
「やぁ、はじめまして。いや、久しぶりって言ったら良いかな理人」
「頭の中に声が……いや、それよりあんたは? 何故俺の名を知っているんだ?」
男は動かない。どうやら念話のようなものなのだろう。
「知ってるも何も……同級生だったじゃないか僕たち」
「同級生? 名前は?」
「音無 麗音。小学校時代三ヶ月同じクラスにいたじゃないか。忘れるなんて酷いな」
「音無……麗音? 思い出した! 二年の時に転校してきた麗音か! すぐにまた転校していったからすっかり忘れてた」
目の前の男はかつての同級生だ。それが何故ここにいるかわからない。麗音とは三ヶ月だけ一緒に過ごした。すぐに転校していったのでそれほど深い仲じゃない。ただ、麗音は誰にでも優しく勇気ある者だった。
「麗音……いや、まさか勇者レオン?」
「正解。また会えて嬉しいよ理人。まさか理人までこの世界に来てたなんて驚いたよ僕」
「それはこっちのセリフだよ。っていうか同じ歳なのにどうなってるんだ?」
「僕が転生した話はルナから聞いただろう?」
「え? あ、あぁ。ってわかるのか?」
「わかるよ。僕も持ってるんだ、異世界知識倉庫」
「そうなのか」
俺は召喚された身。だが麗音は転生した身。
「麗音……お前死んでたのか」
「そうだね。中学校に入ったくらいかな。道を歩いてたらトラックがね」
「お前……トラック転生者かよ。ぶはっ」
「笑いごとじゃないよもう! いきなり目の前にトラックだよ!? そりゃもう怖いのなんの!」
それからお互い昔話に華を咲かせた。
「つまりなにか? 麗音は地球で死んだあとこの世界の千年前に転生したってことか」
「うん。それから随分努力したよ。僕のスキルは努力と誰にも見えない異世界知識倉庫だけだったからね。生まれた所は小さな村でさ……職業もなにもなかった僕は親に捨てられたんだ」
「……苦労したんだな」
「まぁね。それから冒険者になって頑張ったんだよ。稼げるようになってからすぐに異世界知識倉庫月額版にしてさ、修行したんだ」
そこから先はルナから聞いた話と同じだった。だが俺には麗音がなぜ自分の身を犠牲にしてまで魔族たちを世界から隔離したかわからない。
「なんでだよ。麗音は迫害されてきたんだろ? そんな奴らを守るために自分の身を犠牲にする意味がわからない」
「なんでだろうね……。僕にもわからないよ」
「は?」
「全ての人間が僕を蔑んだわけじゃないし、中には善い人もいた。その人たちを守るって決めたら勝手に動いてたんだ」
「お前……まぁ、そうだよな。お前は俺と違ってイジメも見て見ぬ振りしないし、止めに入る奴だったもんな」
「あはは。理人」
響く声が真剣みを増した。
「本当なら君には危険を冒して欲しくない。君は北の大陸にくるつもりだろう?」
「いや、行かないが?」
「え? いや、その……来るつもりだよね? え?」
俺は麗音に言った。
「行かないよ。ヤルダバオトがなにか企んでたから阻止しただけだよ。切断師を手に入れたのも時空魔導師を手に入れたのも対抗できる手段を身に着けるためだ。麗音には悪いと思うけど北の大陸には行かない。ましてや結界を切る気もないよ」
そう断言すると麗音は爆笑した。
「は、あははははっ! 確かに理人はそういう奴だった! 良い人そうに見えるけど合理的で……自分がバカにされた時だけ反抗する。そんな奴だったね」
「だってバカにされたらムカつくじゃん」
「あははははっ。そっか……来ないんだ。それならいい」
「麗音?」
冷静になった麗音は北の大陸について語り始めた。
「理人、北の大陸にいる魔王は絶対に外に出したらダメだ。僕が封じ込めたことで怒り狂ってるからね」
「倒せなかったのか?」
「うん、無理だった。魔王は不死でさ。倒してもいずれ復活しちゃうんだ。しかも倒されて復活したら強さが倍になるんだよね」
「どこのサ◯ヤ人だよそれ」
「ははっ、懐かしいな。でさ、結局倒す手段がなくて封印することしかできなかったんだ。だから……僕の張った結界は絶対に破っちゃダメだ。北の大陸にいる魔族や魔物は増え過ぎてる。外に出たら世界なんて一ヶ月もかからず滅亡しちゃうよ」
一ヶ月で世界が滅ぶ。それが事実なら何がなんでも結界を斬るわけにはいかない。
「まぁ、斬ったとしても開くのは一瞬だけだけどね。僕の結界には修復機能もあるし」
「そうなのか」
「うん。だからさ……無茶はしないで。僕はこの世界が好きなんだ。だって凄くファンタジーだろ? 物語の世界でしかなかった魔法とかさ! 亜人とか最初に見た時は驚いたよ」
「亜人? 俺まだ見てない」
「見たら驚くよ! だから……僕が救った世界を再び戦火に巻き込みたくないんだ。いいかい理人、北の大陸には絶対来ないように! 僕は動けないけど辛くはないからね。理人……また」
「麗音!」
視界が霞んでいく。全てが白く染まった瞬間、俺は目を覚ましていた。
「ん……ここは……ベッド? 麗音!」
俺はベッドから飛び起き辺りを見回した。そこはいつも通りの部屋だ。麗音はいない。
「夢……なんだろうな。麗音がレオンか。あいつ……たった一人で頑張ったんだな」
俺は身支度を整え扉に手をかけた。
「北の大陸には来るな……か。忘れたのか麗音。俺ってさ、天邪鬼なんだぜ。来るなって言われたら行くに決まってんだろ。だがまだ時じゃない。不死の魔王をぶっ倒せる手段を手に入れたら助けに行ってやるよ麗音。それまで辛抱してくれ」
俺は決意を新たに扉を開くのだった。
「やぁ、はじめまして。いや、久しぶりって言ったら良いかな理人」
「頭の中に声が……いや、それよりあんたは? 何故俺の名を知っているんだ?」
男は動かない。どうやら念話のようなものなのだろう。
「知ってるも何も……同級生だったじゃないか僕たち」
「同級生? 名前は?」
「音無 麗音。小学校時代三ヶ月同じクラスにいたじゃないか。忘れるなんて酷いな」
「音無……麗音? 思い出した! 二年の時に転校してきた麗音か! すぐにまた転校していったからすっかり忘れてた」
目の前の男はかつての同級生だ。それが何故ここにいるかわからない。麗音とは三ヶ月だけ一緒に過ごした。すぐに転校していったのでそれほど深い仲じゃない。ただ、麗音は誰にでも優しく勇気ある者だった。
「麗音……いや、まさか勇者レオン?」
「正解。また会えて嬉しいよ理人。まさか理人までこの世界に来てたなんて驚いたよ僕」
「それはこっちのセリフだよ。っていうか同じ歳なのにどうなってるんだ?」
「僕が転生した話はルナから聞いただろう?」
「え? あ、あぁ。ってわかるのか?」
「わかるよ。僕も持ってるんだ、異世界知識倉庫」
「そうなのか」
俺は召喚された身。だが麗音は転生した身。
「麗音……お前死んでたのか」
「そうだね。中学校に入ったくらいかな。道を歩いてたらトラックがね」
「お前……トラック転生者かよ。ぶはっ」
「笑いごとじゃないよもう! いきなり目の前にトラックだよ!? そりゃもう怖いのなんの!」
それからお互い昔話に華を咲かせた。
「つまりなにか? 麗音は地球で死んだあとこの世界の千年前に転生したってことか」
「うん。それから随分努力したよ。僕のスキルは努力と誰にも見えない異世界知識倉庫だけだったからね。生まれた所は小さな村でさ……職業もなにもなかった僕は親に捨てられたんだ」
「……苦労したんだな」
「まぁね。それから冒険者になって頑張ったんだよ。稼げるようになってからすぐに異世界知識倉庫月額版にしてさ、修行したんだ」
そこから先はルナから聞いた話と同じだった。だが俺には麗音がなぜ自分の身を犠牲にしてまで魔族たちを世界から隔離したかわからない。
「なんでだよ。麗音は迫害されてきたんだろ? そんな奴らを守るために自分の身を犠牲にする意味がわからない」
「なんでだろうね……。僕にもわからないよ」
「は?」
「全ての人間が僕を蔑んだわけじゃないし、中には善い人もいた。その人たちを守るって決めたら勝手に動いてたんだ」
「お前……まぁ、そうだよな。お前は俺と違ってイジメも見て見ぬ振りしないし、止めに入る奴だったもんな」
「あはは。理人」
響く声が真剣みを増した。
「本当なら君には危険を冒して欲しくない。君は北の大陸にくるつもりだろう?」
「いや、行かないが?」
「え? いや、その……来るつもりだよね? え?」
俺は麗音に言った。
「行かないよ。ヤルダバオトがなにか企んでたから阻止しただけだよ。切断師を手に入れたのも時空魔導師を手に入れたのも対抗できる手段を身に着けるためだ。麗音には悪いと思うけど北の大陸には行かない。ましてや結界を切る気もないよ」
そう断言すると麗音は爆笑した。
「は、あははははっ! 確かに理人はそういう奴だった! 良い人そうに見えるけど合理的で……自分がバカにされた時だけ反抗する。そんな奴だったね」
「だってバカにされたらムカつくじゃん」
「あははははっ。そっか……来ないんだ。それならいい」
「麗音?」
冷静になった麗音は北の大陸について語り始めた。
「理人、北の大陸にいる魔王は絶対に外に出したらダメだ。僕が封じ込めたことで怒り狂ってるからね」
「倒せなかったのか?」
「うん、無理だった。魔王は不死でさ。倒してもいずれ復活しちゃうんだ。しかも倒されて復活したら強さが倍になるんだよね」
「どこのサ◯ヤ人だよそれ」
「ははっ、懐かしいな。でさ、結局倒す手段がなくて封印することしかできなかったんだ。だから……僕の張った結界は絶対に破っちゃダメだ。北の大陸にいる魔族や魔物は増え過ぎてる。外に出たら世界なんて一ヶ月もかからず滅亡しちゃうよ」
一ヶ月で世界が滅ぶ。それが事実なら何がなんでも結界を斬るわけにはいかない。
「まぁ、斬ったとしても開くのは一瞬だけだけどね。僕の結界には修復機能もあるし」
「そうなのか」
「うん。だからさ……無茶はしないで。僕はこの世界が好きなんだ。だって凄くファンタジーだろ? 物語の世界でしかなかった魔法とかさ! 亜人とか最初に見た時は驚いたよ」
「亜人? 俺まだ見てない」
「見たら驚くよ! だから……僕が救った世界を再び戦火に巻き込みたくないんだ。いいかい理人、北の大陸には絶対来ないように! 僕は動けないけど辛くはないからね。理人……また」
「麗音!」
視界が霞んでいく。全てが白く染まった瞬間、俺は目を覚ましていた。
「ん……ここは……ベッド? 麗音!」
俺はベッドから飛び起き辺りを見回した。そこはいつも通りの部屋だ。麗音はいない。
「夢……なんだろうな。麗音がレオンか。あいつ……たった一人で頑張ったんだな」
俺は身支度を整え扉に手をかけた。
「北の大陸には来るな……か。忘れたのか麗音。俺ってさ、天邪鬼なんだぜ。来るなって言われたら行くに決まってんだろ。だがまだ時じゃない。不死の魔王をぶっ倒せる手段を手に入れたら助けに行ってやるよ麗音。それまで辛抱してくれ」
俺は決意を新たに扉を開くのだった。
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