職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

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第2章 ゴルドランド王国侵攻編

02 エルドリング領と神官

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 エルドリング領。ここはアーレスが育ってきた領地であり、職業を得るまで多くの民はアーレスを慕っていた。しかし神官によりアーレスが精霊使いだと流布され、国王から国外追放が宣言された途端、その態度は一変。あれほど慕っていた民はアーレスなどいなかった事にし、その弟であるヨハネスを慕うようになっていた。

「ヨハネス様! この地を頼みますよ!」
「ヨハネス様! 今朝家の畑で採れた野菜持ってって下さい!」
「ヨハネス様~! また遊びにきて下さいね~」

 ヨハネスが町に顔を出すと民が群がり持ち上げる。そのせいか純粋だったヨハネスは増長していた。慕ってくる民に御手付きをし、民からの賄賂も喜んで受け入れるダメ貴族へと成り下がってしまった。

「これがあの追放者が見ていた景色か……。くくくっ、最高じゃないか! あの追放者はやはり愚かだった。こんな最高な環境にいながら民から渡される物を全て断っていたって言うんだからなぁ。店は無料で飲み食いできるし快楽にも困らない……。ああ、時期領主がこんなにも素晴らしい地位にあったなんて! はははははっ」
「ヨハネス様~、今日は誰の家で遊ばれるのですか~?」
「そうだなぁ……ん?」

 両手に話の状態で町を練り歩くヨハネスの前方から領地を警備している兵士が鬼の様な形相で駆けてきた。

「た、大変だぁぁぁぁぁっ! ま、魔族だっ! 魔族の群れが攻めてきたっ!!」
「皆逃げろっ! 逃げろぉぉぉぉぉっ!」
「は? 魔族の……群れ?」

 兵士の後ろを見るが何も見えない。ヨハネスは叫ぶ兵士を嘲笑いながら言った。

「魔族なんてどこにもいな──え?」

 兵士がヨハネスの脇を通り抜けたと同時に、ヨハネスの視界を埋め尽くすように魔族が町の中に雪崩れ込んできた。

「さあ、悪魔軍よ! 建物を破壊しなさいっ! 宴の始まりですよっ!」
「「「「オォォォォォォォォォォッ!」」」」
「獣魔軍! 町にある全ての食糧を回収よ!」
「「「「ガァァァァァァァァッ!!」」」」
「……不死軍、侵攻開始。逆らう者、骸に変えて」
「「「「コォォォォォォォ……」」」」
「堕天使軍は町から一人も逃がさないようにね~」
「「「「はいっ!」」」」

 平和だったエルドリング領は瞬く間に戦場となり、町は混乱を極めた。ラフィエル率いる堕天使軍が町を封鎖し、ベリアル率いる悪魔軍が家屋を破壊していく。そしてレザニア率いる獣魔軍があらゆる食糧を回収し、ウルスラ率いる不死軍が逆らう者を命亡き者へと変えていく。その後方に魔王アリアと、アーレスが控えていた。

「アーレスよ、楽しいか?」
「……ああ、最高だよ。俺が連行されていく様を嘲笑っていた奴らがこうして慌てふためく様を見るのは気分が晴れる。……ん?」
「に、兄さ……いや! 追放者アーレス!!」

 最高の気分で町が破壊されていく様を見ていたアーレスの前にヨハネスが立った。

「ん? お前は……ああ、ヨハネスか。何してんだ?」
「貴様こそっ!! 僕の領地で何をしているっ!! なんなんだこの魔族はっ!!」
「何をしているだと? みたらわかるだろ。復讐だよ復讐。俺は俺を陥れ、裏切った人間どもに裁きを与えにきたんだよ」
「さ、裁きだ? ふ、ふざけるなっ!! 精霊神様に不敬を働いたのは貴様だろうっ!! 裁かれるべきは貴様だアーレス!!」

 そう叫んだヨハネスは腰に下げていた剣を抜いた。両隣にいた女は腰を抜かし、四つん這いになりながら離れようとしていた。

「一対一の勝負だ追放者アーレス! 僕が勝ったら魔族を退かせろッ!!」
「はぁ? 退かせろだと? お前、何様のつもりだ? 昔から俺に何一つ勝てた事はなかった癖に。俺がいなくなり、父親の期待を受け気が大きくなったのか?」
「う、うるさいッ!! いつまでも昔の僕だと思うなよッ! 僕は時期領主なんだ!」

 そこで魔王アリアとミリアムがアーレスの隣に並ぶ。

「アーレスよ、受けてやったらどうじゃ?」
「え?」
「そうですよ~。アーレスさんがあ~んな雑魚に負けるわけないし。っていうか、こっちが勝ったら何かもらえるの? あの雑魚自分の条件しか言ってないよね?」
「……ああ、そうだった。ヨハネス、俺が勝ったらお前は何を差し出すんだ? 魔族を退かせるに値する条件を提示してみろよ」
「え? それは……」

 ヨハネスは急に勢いを失い口ごもった。そしてその視線の先にはミリアムがいた。

「なに見てるんですか、人間」
「あ、いやっ! 条件……条件だったな。ま、町にある食糧を全て──」

 そこに獣魔軍を率いレザニアが戻ってきた。

「アリア様、食糧の回収終わりました~」
「うむ」

 さらにベリアルとウルスラも戻ってきた。

「戻った。この町にもう生きてる人間いない。そいつだけ」
「ハハハハッ、見逃しましたねウルスラ。神殿の地下にまだいましたよ」
「ヒィィィィッ、た、助けてくれッ!」

 ベリアルは一人の男をヨハネスの隣に放り投げた。

「あいつは……神官! ベリアル、よく見つけてきたな! ハハハハハハッ!」
「お、おぉぉぉ! アーレス様よりお褒め頂けるとはッ! あぁぁ……ッ、逝きそう──だッ!」

 ベリアルは身を抱え悶えていた。アーレスはそんなベリアルを華麗にスルーし、神官を睨む。

「思えばあんたが始まりだったな」
「ヒッ」

 アーレスはヨハネスを無視し、腰を抜かした神官の前にしゃがみ込んだ。

「あんたのおかげで俺の人生は波乱万丈なものに変わっちまったよ。あんたは精霊使いがどんな職業かちゃんと知ってて騒いだんだろ?」
「え?」
「まさか知らないはずはないよなぁ? 精霊使いは精霊を使役する職業じゃなく、精霊の力を使うだけの職業だって知ってて俺を犯罪者にしたんだよな?」
「そ、そそそそそれは──」
「しっかり答えろよ、なぁ? あんたのおかげで俺の人生メチャクチャだ。精霊の力を使うだけの職業がどうして不敬をはたらいた事になる。答えろコラァァァァッ!!」
「ヒィィィィッ、すみませんすみませんすみませんッ!」

 神官は慌てふためきながら土下座を始めた。

「わ、私は精霊使いが何かなど知りませんでした!」
「……なに?」
「き、教国のお達しだったのです!」
「教国……ああ、聖フランチェスカ教国か」
「は、はいっ! 教国の命令により、職業に【精霊】や【英霊】、【神】と付いた者は全て犯罪者にせよとの事でして……」
「な、なん……だと!?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!?」
 
 アーレスは片手で神官の胸ぐらを掴み持ち上げた。

「ふざけるなッ!! その理屈なら剣神や武神、果ては精霊視まで犯罪者じゃないか! お前ら……一体何を企んでいる!!」
「わ、わかりませんッ! 私は地方の一神官にしかすぎませんのでッ! ぐ、ぐるじぃぃぃっ!」

 世界中に神殿を設置している聖フランチェスカ教国。世界はこの教国によって支配されていると言われても過言ではない。その教国が不正をはたらき、将来有望であるはずの職業持ちを排除していたのである。

「一つ聞く。この話は国王も知っているのか」
「い、いえっ! 国王は教国の決定に従っているに過ぎませんっ。犯罪者となった理由までは知らないはず──」
「な、なにを言っているのだ神官殿! それではアーレスは犯罪者ではなくなって──」

 ヨハネスは目に見えて自信を失っていく。

「ざ、罪状は国王が決められますっ! く、国によっては処刑されたり、生涯投獄されたりと……あぁっ!」

 アーレスは神官を地面に放り投げた。

「俺が……俺の人生が狂ったのは貴様らのせいか……。ハハッ、ハハハハハッ!!」
「ア、アーレス?」

 アーレスは気が狂ったかのように腹を抱えて嗤った。

「あぁ、わかった。俺の敵は教国だったんだな」
「ヒッ──! そ、それは……!」

 アーレスは手にダークソードを発現させ、神官に向ける。

「貴様のした事は赦せないが……感謝もしている。おかげで魔族を率いる魔王と出会えた。感謝の印として、苦しまない様に殺してやるよ。死ね」
「あ──」

 アーレスのダークソードが伸び、神官の額を貫いた。

「アーレス!!」
「黙ってろヨハネス。お前も殺すぞ」
「あ、うぁ……っ」

 アーレスはダークソードを消し、生き絶えた神官の躯にダークフレイムを放つ。アーレスを断罪した神官は地獄の業火に包まれて天へと還っていった。

「神官を殺した……。アーレス! お前は今全ての人類を敵に回したんだぞ!!」
「それがどうした」
「え? ど、どうしたって……」  

 アーレスは感情のない表情のまま、ヨハネスに向け手をかざすのだった。 
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