職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

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第3章 打倒、聖フランチェスカ教国編

19 諸悪の根源

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 教皇親衛騎士隊を排除し、内二人を奴隷に加えたアーレスはいよいよ復讐すべき最後の敵である聖フランチェスカ教国教皇、メイギス・フラジャイルの待つだろう間の前に立った。

「思えば全ては教皇の言葉から始まったのだな。いよいよだ……。今の人生に不満はないが……あるべきだった人生を狂わされたツケを払ってもらうぞ」

 教皇の犠牲者は世界中に数多いる。アーレスはその内の一人に過ぎないが、こうして教皇に手が届く位置までたどり着けたのはアーレスただ一人だけだ。アーレスは全ての犠牲者の苦しみを背負い、最後の扉を開いた。

 扉を開くと奥に祭壇があり、巨大な神像を見上げる肥えた男が立っていた。アーレスが進むと男は背を向けたまま口を開いた。

「今……精霊神様より神託が下った」
「へぇ。それは興味あるな。聞かせろよ、稀代の詐欺師さんよ」

 教皇はようやく振り向きアーレスを睨む。

「ふん、ワシが詐欺師なら貴様はなんだ。ワシの配下を何人殺した。そして……何人犯した」
「「っ!」」

 教皇はマドカとアニエスに侮蔑の視線を向ける。

「敵に犯され仲間になったか? 賢神や勇者ともあろう者が……ワシを裏切り悪に下ったのかっ!!」

 二人はうつむき声を発しなかった。なぜならアーレスが代わりに口を開いたからだ。

「ははははっ、おいおい。鏡見たことあるのかお前」
「なんだと?」

 アーレスは教皇を見て嗤いながら言った。

「どうせ抱かれるなら俺のような良い男の方がいいだろ。なあ、お前達」
「「あっ……」」

 アーレスは二人を両腕に抱え胸を鷲掴みにした。

「アーレスさまぁっ、今は──」
「ち、ちょっとぉっ! 豚に見られたくないんだけどっ」
「ぶ、豚だと!? 貴様ぁぁぁっ!! 拾ってやった恩を仇で返す気かっ!!」

 マドカは教皇を睨み付け怒りを口にした。

「拾って……やったですって? 国を使って私を無理矢理召喚させたのはあなたでしょっ!! しかももう元の世界に還せないって!」
「だからこの世界での生き方を教えてやっただろうが」

 教皇は両手を左右に広げ、アーレス達を嘲笑うように笑った。

「この世界を支配しているのは聖フランチェスカ教国っ! そしてぇぇぇ……そのトップはこのワシ! 聖者メイギス・フラジャイルだっ! 例え職業を授ける秘密が暴かれようと……世界を統べる神である精霊神の神託を授かる事ができるのはワシのみだっ!! ワシを殺せばこの地上世界は精霊神の加護を失うだろうっ!」
「はぁ? それがどうした」
「な、なにっ!?」

 アーレスは二人を下がらせ一歩、また一歩と教皇に近付いていく。

「別に精霊神の加護を失ったとしても地上世界は変わらないだろ」
「な……に?」
「なあ、あんた本当は精霊神の声なんて聞こえないんじゃないか?」
「なっ!?」

 教皇は取り乱しながら声を張り上げた。

「バ、バカを言うなっ!! ワシは聖者だぞっ! 当然聞こえておるわっ!!」
「ほ~う。だがそいつはおかしな話だな」
「は?」

 アーレスは言った。

「実はな、今地上世界に邪神ヘルと酒呑童子が降臨してるんだわ」
「……は? 邪神ヘルに……酒呑童子? 誰だそれは」
「精霊神に幽閉されてた三柱の内二柱だよ。そいつら曰く……精霊神はここしばらく神託を授けてないってよ」
「ぐっ!」
「精霊神は地上世界に全く興味がないそうだ。あ~あ、詐欺がバレちゃったな。さあ、どう出る。まだ何か言い繕うか?」

 教皇はワナワナと震え、祭壇にあった杖に手をかけた。

「はははははははっ! ああそうだっ! ワシはただの一度も精霊神の声など聞いた事がないわっ!」
「お? 開き直ったか?」
「黙れいっ! はぁ……はぁ……っ! こうなったら貴様らを消すしかあるまい……。今の話を知るのは貴様らだけだからなっ! 貴様らを消してもう一度世界を手にするっ!! 聖者の力を舐めるなよ若造がっ!!」

 アーレスは杖を構える教皇を憐れみ、呆れたポーズで溜め息を吐いた。

「やれやれ、最後は力か。だが……その力ですら貴様は俺に届かない。貴様こそ……精霊使いを舐めるなよっ!!」
「貴様を殺して全て元通りだっ!!」

 ついに最後の戦いが幕を開ける。

「ワシが聖者といわれる由縁──特と味わえっ!! 神聖魔法!! 【ホーリーサークル】!!」

 教皇の杖が光り光の輪が五つ浮かび上がる。

「この輪は全てを切り裂くッ!! 輪切りにしてくれるわぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……やってみな。ほら」
「くっ──くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 アーレスは棒立ちになったまま光の輪を迎える。

「アーレスさまぁぁぁぁぁぁっ!」
「な、なんで防御すらしないのっ!?」
「ははははははっ! クリーンヒィィィィット! 若造め、輪切りになって反省するがいいわっ! はははははは──は?」

 巻き起こった煙が晴れた光景を見た教皇は驚き震え上がった。

「……ふん、聖者の力とはこんなものか」
「な、なななな──む、無傷……だと!? 確かにワシの魔法は当たったはずだ!!」
「ああ、当たったよ。だが……貴様の魔法はどうやら俺の胸当て一枚切り裂けない威力らしいな」

 教皇は怒り金切り声をあげる。

「ふ、ふざけるなぁっ! ワシの魔法はこれまで何人も断罪してきたのだぞ!!」
「断罪? バカを言うなよ。貴様のは断罪じゃないだろう? 貴様は自分に都合の悪い人間、気に食わない人間、従わない人間をただ自分のために殺してきたクズ野郎だろ」
「ク、クズだとっ!?」
「そうさ。で、攻撃はもう終わりか? 気が済むまで撃ってこいよ、クズ野郎」
「こ──殺してやるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 教皇はありったけの魔力を開放し、アーレスに向け次々と魔法を放っていくのだった。
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