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第1章 はじまり
第03話 冒険者組合へ
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村から街道を歩く事二日、アインは隣町【アーリィ】に到着した。世界は狂ってしまったが、魔国クリミナルから遠いこの地方はまだ平穏を保っていた。だがそれでも盗賊の類が増えた気はする。この二日間で襲われる事三回。いずれも五人から六人組の盗賊だった。
「ちくしょう! 離せやっ! 俺らは盗賊だぞ! 魔国クリミナルの宣言に逆らう気かテメェッ!」
「魔国クリミナルか。もちろん逆らうがそれが何か?」
「ぐっ!?」
アインは盗賊を縛り上げていた縄を引く。
「何が欲望のまま好き放題しろだ。それじゃ人間とは言えないだろう。欲望のまま生きる奴は獣だ。人間は理性で欲望を抑える事が出来るから人間なんだよ。それが出来ないお前らは犬畜生同然だ。精々牢屋の中で犯した罪を償うんだな」
「……はっ、そうなりゃ良いがなぁ?」
「なんだと?」
盗賊たちはやけに自身に満ちていた。まるで自分たちは捕まらないといったような態度だった。そしてそれは身柄引き渡しの時に起きた。
「こいつらを解放する? 本気で言っているのか?」
「ああ。盗賊は罪に問われない。お前ら、もう行って良いぞ」
盗賊たちはアインに捨て台詞を吐き諸手を挙げ町を出て行った。アインは引き渡した町の警備兵に食ってかかった。
「ふざけるな! 俺は奴らに襲われたんだぞ!? なぜ盗賊を野放しにしておく!」
「そう言う決まりだから仕方ないんだ。犯罪者を捕まえたら魔国クリミナルに目を付けられる。これは国王の勅命だ。もし逆らうなら牢屋に入るのはお前だ」
「なっ!?」
アインは開いた口が塞がらなかった。犯罪者を捕まえた正しき者が牢屋に入れられる。とても許容できるものではなかった。そんなアインに警備兵の男がこっそりと耳打ちした。
「次からは捕まえるんじゃなくその場で殺すんだ」
「え?」
「捕まえても意味がないんだよ。俺だって盗賊は憎い。町をよく見ろ」
アインは町の様子を見る。そこはかつて訪れた様相と異なり、暗い雰囲気に包まれていた。
「奴ら盗賊に略奪されたんだ。女子どもは攫われ、金目の物は全部持っていかれた。今は正しき者が苦しむ時代なんだよ。それでも抗いたいならこっそり抗うしかないんだ」
「もしや……あなたも奴らに?」
警備兵の手は固く握り締められ、血が滲んでいた。
「ああ。妻と子を攫われた。なぁ、俺がさっきどんな気持ちで奴らを逃がしたと思う。正直殺してやりたい気分だったよ。だが、こんな場所で手を出したら俺が終わっちまう。それが今の世界だ」
そう言い、警備兵はアインから離れた。
「今は冒険者組合も聖神教会も一部の国を除いて開店休業状態だ。表向きはな」
「表向き?」
警備兵はポケットから紙切れを取り出しアインに手渡した。
「冒険者組合は今レジスタンスとして陰で動いている」
「レジスタンス?」
「そうだ。この国は魔国クリミナルに反抗する気はないため、冒険者組合は表立って活動はできない。だから今は密かに活動を続けているんだよ。そして……俺もレジスタンスの一員だ」
そう告げ、警備兵は首から下げた十字架を取り出して見せた。
「それは聖神教会の?」
「ああ。表立って活動できない国では冒険者組合と聖神教会が手を組んでいる。俺は見込みがありそうな奴を見つけてアジトを知らせる役目を担っている。盗賊を捕まえたって事はお前さん、魔国クリミナルに従う気はないんだろ?」
「当たり前だ。あの国は……いや魔王ディザームは俺が倒す! あいつは俺から全てを奪った元凶だ。決して許しはしない!」
そんなアインを見た警備兵はかすかに希望を見た。
「ならその場所に行ってくれ。そこにこの国の冒険者組合組長がいる。そこで今の状況を学ぶんだ」
「ありがとう。それと、さっきは怒鳴ってしまい申し訳なかった!」
「ははっ、良いってことよ。むしろ人柄がわかって良かった。お前さん、今の時代じゃ珍しいくらい正しい心を持ってるみたいだな。名を聞いても良いか?」
アインは右手を差し出しながら名を名乗った。
「俺はアイン。近い将来魔王を倒す者だ」
「アイ……ン? ははっ、かつての勇者と同じ名か! お前の今後に期待するよ、アイン」
「ああ。こんな間違った世界は必ず正さねばならない。それが俺の使命だ」
「勇者みたいな事いうんだなぁ。頑張ってくれよ!」
そうしてアインは警備兵の男から手渡された紙切れを頼りに、冒険者組合へと向かった。
「かつて冒険者といえば危険な依頼をいくつもこなし、迷宮や魔物から宝を得ては世界を潤していたというのに……いまや密かに活動する事しかできないのか。でも……俺達紅蓮の焔ほどではないにしろ、強い者達はいたはず。どこにいったんだろうな」
地図を片手に目的地へと着いたアインは目の前の建物を見上げる。
「酒場だな。えっと何々……」
紙切れには地図の他に合言葉が記されていた。その合言葉を注文の際店員に伝えると別室に案内されるらしい。
アインは建付けの悪くなった扉を開き中に入る。
「いらっしゃいませ~。お好きな先にどうぞ~」
さすがに昼から飲んだくれている者はおらず、酒場の中にはアインの他に客はいなかった。アインはカウンター席に座り注文をとりにきたウエイトレスにこう告げた。
「ご注文はお決まりですか~?」
「……迷える子羊を」
それを聞いたウエイトレスの表情が一瞬にして真面目なものへと変わる。
「かしこまりました~。その前に、あちらでお支払いしてきて下さいね~」
「? わかった」
アインはウエイトレスが指差した扉を開き中に入った。すると目の前に鉄の扉があり、開くと地下へと続く階段が現れた。
「この先に進めって事かな。よし」
アインは薄暗い中階段を下りていくのだった。
「ちくしょう! 離せやっ! 俺らは盗賊だぞ! 魔国クリミナルの宣言に逆らう気かテメェッ!」
「魔国クリミナルか。もちろん逆らうがそれが何か?」
「ぐっ!?」
アインは盗賊を縛り上げていた縄を引く。
「何が欲望のまま好き放題しろだ。それじゃ人間とは言えないだろう。欲望のまま生きる奴は獣だ。人間は理性で欲望を抑える事が出来るから人間なんだよ。それが出来ないお前らは犬畜生同然だ。精々牢屋の中で犯した罪を償うんだな」
「……はっ、そうなりゃ良いがなぁ?」
「なんだと?」
盗賊たちはやけに自身に満ちていた。まるで自分たちは捕まらないといったような態度だった。そしてそれは身柄引き渡しの時に起きた。
「こいつらを解放する? 本気で言っているのか?」
「ああ。盗賊は罪に問われない。お前ら、もう行って良いぞ」
盗賊たちはアインに捨て台詞を吐き諸手を挙げ町を出て行った。アインは引き渡した町の警備兵に食ってかかった。
「ふざけるな! 俺は奴らに襲われたんだぞ!? なぜ盗賊を野放しにしておく!」
「そう言う決まりだから仕方ないんだ。犯罪者を捕まえたら魔国クリミナルに目を付けられる。これは国王の勅命だ。もし逆らうなら牢屋に入るのはお前だ」
「なっ!?」
アインは開いた口が塞がらなかった。犯罪者を捕まえた正しき者が牢屋に入れられる。とても許容できるものではなかった。そんなアインに警備兵の男がこっそりと耳打ちした。
「次からは捕まえるんじゃなくその場で殺すんだ」
「え?」
「捕まえても意味がないんだよ。俺だって盗賊は憎い。町をよく見ろ」
アインは町の様子を見る。そこはかつて訪れた様相と異なり、暗い雰囲気に包まれていた。
「奴ら盗賊に略奪されたんだ。女子どもは攫われ、金目の物は全部持っていかれた。今は正しき者が苦しむ時代なんだよ。それでも抗いたいならこっそり抗うしかないんだ」
「もしや……あなたも奴らに?」
警備兵の手は固く握り締められ、血が滲んでいた。
「ああ。妻と子を攫われた。なぁ、俺がさっきどんな気持ちで奴らを逃がしたと思う。正直殺してやりたい気分だったよ。だが、こんな場所で手を出したら俺が終わっちまう。それが今の世界だ」
そう言い、警備兵はアインから離れた。
「今は冒険者組合も聖神教会も一部の国を除いて開店休業状態だ。表向きはな」
「表向き?」
警備兵はポケットから紙切れを取り出しアインに手渡した。
「冒険者組合は今レジスタンスとして陰で動いている」
「レジスタンス?」
「そうだ。この国は魔国クリミナルに反抗する気はないため、冒険者組合は表立って活動はできない。だから今は密かに活動を続けているんだよ。そして……俺もレジスタンスの一員だ」
そう告げ、警備兵は首から下げた十字架を取り出して見せた。
「それは聖神教会の?」
「ああ。表立って活動できない国では冒険者組合と聖神教会が手を組んでいる。俺は見込みがありそうな奴を見つけてアジトを知らせる役目を担っている。盗賊を捕まえたって事はお前さん、魔国クリミナルに従う気はないんだろ?」
「当たり前だ。あの国は……いや魔王ディザームは俺が倒す! あいつは俺から全てを奪った元凶だ。決して許しはしない!」
そんなアインを見た警備兵はかすかに希望を見た。
「ならその場所に行ってくれ。そこにこの国の冒険者組合組長がいる。そこで今の状況を学ぶんだ」
「ありがとう。それと、さっきは怒鳴ってしまい申し訳なかった!」
「ははっ、良いってことよ。むしろ人柄がわかって良かった。お前さん、今の時代じゃ珍しいくらい正しい心を持ってるみたいだな。名を聞いても良いか?」
アインは右手を差し出しながら名を名乗った。
「俺はアイン。近い将来魔王を倒す者だ」
「アイ……ン? ははっ、かつての勇者と同じ名か! お前の今後に期待するよ、アイン」
「ああ。こんな間違った世界は必ず正さねばならない。それが俺の使命だ」
「勇者みたいな事いうんだなぁ。頑張ってくれよ!」
そうしてアインは警備兵の男から手渡された紙切れを頼りに、冒険者組合へと向かった。
「かつて冒険者といえば危険な依頼をいくつもこなし、迷宮や魔物から宝を得ては世界を潤していたというのに……いまや密かに活動する事しかできないのか。でも……俺達紅蓮の焔ほどではないにしろ、強い者達はいたはず。どこにいったんだろうな」
地図を片手に目的地へと着いたアインは目の前の建物を見上げる。
「酒場だな。えっと何々……」
紙切れには地図の他に合言葉が記されていた。その合言葉を注文の際店員に伝えると別室に案内されるらしい。
アインは建付けの悪くなった扉を開き中に入る。
「いらっしゃいませ~。お好きな先にどうぞ~」
さすがに昼から飲んだくれている者はおらず、酒場の中にはアインの他に客はいなかった。アインはカウンター席に座り注文をとりにきたウエイトレスにこう告げた。
「ご注文はお決まりですか~?」
「……迷える子羊を」
それを聞いたウエイトレスの表情が一瞬にして真面目なものへと変わる。
「かしこまりました~。その前に、あちらでお支払いしてきて下さいね~」
「? わかった」
アインはウエイトレスが指差した扉を開き中に入った。すると目の前に鉄の扉があり、開くと地下へと続く階段が現れた。
「この先に進めって事かな。よし」
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