仲間に裏切られた勇者、事実を知り奮い立つ! ~世界を救う勇者アインの物語~

夜夢

文字の大きさ
8 / 33
第1章 はじまり

第08話 王都フレメリア

しおりを挟む
 計画はこうだ。まずはアリアに可能な限り被害に遭った者を集めさせる。そして主犯格である第二王子【ガレイル・マードレック】。この人物をアインがスキルで操り、加害者全てを集めさせ、アリアの集めてきた被害者の前に突き出す。そこから断罪が始まる。おそらく加害者達には二度と幸福な未来は訪れないだろう。

 林の奥で一泊した二人はそれぞれ計画に沿って行動を開始する事にした。

「ではアイン。私は被害者たちを集め王都近くの村で待つ」
「ああ。俺は今から王都に行き第二王子と加害者全員を連れてくるよ」

 さも当然のように告げるアインを心配し、アリアはもう一度確認した。

「本当に大丈夫なのだろうな。止めるなら今だぞ?」
「大丈夫だよ。正しい者がばかを見る現実など歪んでいるからな。これは魔王ディザームに対する反撃の狼煙だ。誰もが言いなりになるわけではないと知らしめる」
「わかった。そこまで決意しているならもう止めんよ。この国は狭い。被害者も直ぐに見つかるだろう。一ヶ月だ、その間で全員集める。合流は今から一か月後、場所は王都近郊の村【クランベル】だ」
「ああ。じゃあ行動開始だ」

 二人は拳を合わせ目的に向かい動き出した。アリアはまず西に向かい、アインは当初の予定通り北にある王都へと向かう。途中合流予定のクランベルの様子を確認し、一泊した後王都を目指した。

 アリアと別れてから三日後、アインはマードレック王国王都【フレメリア】に到着した。

「いつぶりの王都だっけ。あまり変わってないな」

 アインは町の様子をみて懐かしさを覚えていた。しかし、建物は当時のまま変わらず残っていたが、住民の様子は当時とは全くかけ離れていた。住人達には活気がなく、路上に座り込む者も多くいた。

「なぁ兄ちゃん……昨日から何にも食ってねぇんだよぉ……。なにか食うもん持ってねぇか?」

 ここで施しを与える事は容易だ。だがそれでは一時の救済にしかならず、真の意味で目の前の生活困窮者を救済する事にはならない。アインは地面に座り込む男にこう言った。

「俺は今あなたを救う事ができない。だが、食べる事に困っているなら聖神教会に行けば良いはずだ。教会では炊き出しをしているのではないか?」
「教会……か。そんなもんここにはもうねぇよ」
「え? き、教会がない!? そんなバカな! 教会はどの町にも必ずあるはずだ! 今も魔国と戦っているだろう?」

 地面に座る男は項垂れながらこう告げた。

「第二王子だよ。あいつが教会に火を放った」
「な、なんだと!?」
「あの野郎は魔国に恭順の意を示しやがったんだ。一昨日奴は騎士団を率いて国王を投獄し、兄である第一王子を殺害した」

 男は人生に疲れたような表情でアインに言った。

「世界で一番魔国から遠いこの国ですらこんな状態だぁ……。俺ぁこの国を出た事がねぇから知らねぇがよぉ、この世界はもうお終いだ。勇者アインも死に、その仲間だった奴らが世界を支配してんだ。冒険者組合? 聖神教会? 所詮勇者アインの足元にも及ばなかった奴らが力を合わせた所で勝ち目なんてあるわけがねぇ。もう食いもんは良いわ……。俺は無惨に殺されるより餓死を選ぶわ……」

 そんな男にアインはこう尋ねた。

「諦める前に一つ尋ねる。あんたはこうなる前何をしていたんだ?」
「ああ? 俺は焼き討ちされた教会で建物の管理をしていた管理人だよ。俺以外の教会関係者は騎士団に連行されてっちまった。俺は運よく買出しに出てたから難を免れたが……。司祭様やシスター、子どもらは全員連れて行かれたんだ」
「……そうか。第二王子はそこまで愚かだったか」
「ああ。魔国に従うフリをしていた国王は投獄され、後を継ぐはずだった第一王子は死んだ。もう数日もしたら第二王子が国王として名乗りを挙げるだろうよ。まぁ……俺はその頃もう死んでるだろうがな」

 アインは死んだ目をした男に手を差し伸べた。

「まだ人生を諦めるには早いぞ?」
「あ?」
「俺の手をとるんだ。そしたら奇跡が拝めるかもしれないぞ?」
「奇跡だ? はぁ、何言ってんだあんた。奇跡なんてもんはありゃしねぇんだよ。神を信仰していた司祭様でさえ捕まったんだぞ」
「それは俺がいなかったからだ。必ず俺がこの国を正しい姿に戻してやる。それを見届けてまだ死にたいと思うならその時は好きにしたら良い。さ、手をとれ。まずは教会から元に戻して見せよう」

 男は怪しみながらもどうせ短い余生だと割り切り、アインの手をとった。そして地面から男を引き起こしたアインは教会の跡地に向かった。

「あんた、もしかしてこの町に来たことが?」
「昔な。教会の場所は変わらずか?」
「ああ。町はずれの荒地だ」

 そうして二人は町はずれにあった教会の跡地に向かう。そして教会の跡地を見たアインは眉をひそめた。

「第二王子は神を神とも思わぬ愚者のようだな。教会に火を放つなどと……。愚かな者には必ず神罰が下るだろう」
「ああ、是非ともそう思うよ。ところで……俺はもう限界なんだがな。奇跡とやらを拝ませてくれるなら早くしてくれないか?」
「おっと、そうだったな。では今からお見せしよう。さあ刮目せよ!」

 アインは焼け落ちた瓦礫に向かい手をかざした。

「なぁ、本当に教会は焼け落ちたのか? あんたの見間違いじゃなかったか?」
「はぁっ!? はぁぁぁぁぁっ!? 嘘だろっ!? なんで瓦礫が元通りに!? 俺はついに死んじまったのかっ!?」
「はははっ、大丈夫だ。あんたはまだ生きているし、目の前の教会も現実だ。中でも確かめてきたらどうだ?」
「ゆ、夢だ……。これは夢にちげぇねぇ……」

 男はフラフラと教会の中に進み、一時間後に戻ってきた。その手には食べ物があり、死んだ目も生き返っていた。

「あんた、いったい何をした!? 確かに教会は焼け落ち、思い出も何もかも失われたはずだ! それがこんな……! 俺が買出しに出た時のままじゃないか! これが現実!? 俺が都合の良い夢を見ているだけじゃないのか!?」
「何度も言うがこれはまぎれもなく現実だ。俺のスキルで修復したんだよ。そして……連れ去られた司祭やシスター、それに子ども達も俺が必ず救い出す。奇跡はまだまだ続くぞ。あんたはここで待っていいてくれ。俺を信じてな」
「……頼む! 皆を助けてやってくれっ! 俺達は慎ましく穏やかに暮らしていただけなんだ! 神は正しき者に救いの手を差し伸べてくれるんだろう!?」
「ああ。もうすぐ全てが元通りになる。これで子どもたちのために食材でも買っておいてくれ」

 そう言い、アインは男に金を手渡した。

「あ、あんたが神じゃないのか……! こんな奇跡があるのか……っ!」
「正しく生きてきたご褒美じゃないかな。現に今から愚か者には罰が下るだろうからな。では後を任せた」
「あ、ああっ!」

 アインは夜まで町の中に潜み、深夜王城へと侵入するのだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...