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第1章 はじまり
第16話 ガーデン帝国の現状
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久しぶりにまともな食事を摂り、柔らかいベッドで寝た翌日の朝、アインは宿を出て町の様子を見て回った。
「開いてる店は武具屋と道具屋、市場は閉まってるな。農家は売りに出さずに自分らで消費してるのか」
売値が変わらず買った側が十倍儲かるなど誰も売らないだろう。肉は魔物を狩れば手に入るが野菜ばかりはどうにもならない。
「貴族や金持ちは今の現状が自分の首を絞めてるだけだと気付かないのか、はたまた金や権力にものを言わせて弱者から搾取しているのか……。どちらにしろこの国に未来はないだろうな」
冒険者組合も聖神教会も見るも無惨に破壊し尽くされており、冒険者風の者も教会関係者も見当たらない。
「これが続けば近い内に国は滅びるだろうな。ん?」
「おら、早く歩けよ」
「うぅぅ……」
何やら首輪と手枷を嵌められた者が数人、いかつい男に鎖を引かれ歩かされていた。
「ったくトロくせぇな! 商品じゃなかったら殴ってるとこだぜっ!」
「……奴隷か」
「あん? 何見てんだ。まさか買いてぇのか? なら店に来いよ。金があんなら売ってやるぜ。おらっ、早くしやがれ!」
そうして男は自分の店に奴隷を引きずっていった。
「金がない者は家族を奴隷商人に売る……だったか。どこかの村か町から連れて来られたんだろうな」
そんな時だった。町の住民が今引きずられていった人物に見覚えがあったらしい。
「今の子……最後まで皇帝に従った領主様の娘じゃ……」
「はぁ? それはないだろ。確か一族全員処刑されたって聞いたぜ?」
「いや、俺御者時代に見たことあるからわかるんだよ。確かにあの子を隣国の学園に連れてったんだよ。三年前にな」
「へぇ~……。じゃあその学園とやらから帰省して捕まっちまったわけか。ついてねぇなぁ」
「生かしているのは家族全員殺られた反応を見るためだろうな。本当に魔族は心の底から腐ってやがる」
この話を聞いたアインは直ぐ様駆け出し、奴隷商人のあとを追った。
「待ってくれ!」
「あぁん? なんだ、さっきの奴か。何か用か?」
「すまないが俺にその子を売ってくれないか?」
「え?」
「あん? こいつを?」
「あぐっ」
男が鎖を引き女の子を地面に転がした。
「おいっ!」
「なんだよ? こいつはまだウチの商品だ。どう扱おうが俺の自由だ。で? あんたはこいつを買いたいんだっけ?」
「ああ。譲ってくれ」
そう告げると男は下衆な笑みを浮かべた。
「しょうがねぇな~。店に来いよ。売ってやっから」
「わかった」
そして男の案内で店に入り、そこで売買契約を結んだ。
「んじゃ商談成立な」
「待て」
「あ?」
アインはスキルを使った。
「払ったのは百万ゴルドだろ。釣りをもらってない」
「……ちっ。ちょっと待ってろよ。ほら九十九万ゴルドだ」
「確かに」
アインは現実を改変し、女の子を一万ゴルドで救い出した。
「えぇぇ……? なんで……??」
買われた女の子は目の前のやり取りを見て混乱していた。
「さ、行こうか」
「え? あ、はい」
「待ちな!」
「なにか?」
店を出ようとした二人を男が止めた。
「まだ奴隷紋を刻んでねぇだろ。そのまま行ったら逃げられるぜ。まあ、あんたがそれでも構わないってんなら刻まない事もできるがよ」
「いらないよ。さ、行こう」
「は、はいっ!」
「何に使うかわからねぇが返品はなしで頼むぜ~ひひひひっ」
アインは最後に男を睨み店を出た。
「さて、まずは服を買わないとな。行こうか」
「え? 服ですか……?」
「そんなボロ布じゃ恥ずかしいだろう?」
女の子は薄汚れたボロ布を頭から被っていただけだった。さすがに女の子にこの格好をさせたまま連れて歩く気はない。アインは女の子を連れ服屋に行き、女の子に好きな服を選ばせた。
「ほ、本当に買っていただいても良いんですか?」
「ああ。好きな服を選んでくれ。あ、できたら動きやすい服が良いな。旅をするような服で」
「わ、わかりました。あの、ローブでも良いですか? 私、魔法学園の生徒だったので」
「魔法学園ね。なら君は魔法使いか」
「はい。でも……あまり才能はなくて……」
「そこはまた後から詳しく聞こう。とりあえずじゃあ魔法使いっぽい服装で」
「はいっ!」
そして購入時、アインは再びスキルを使い正規の値段で購入した。これを見て再び女の子が首を傾げた。
「あ、あの~……わ、私の時もですが、なんであんなに安く買えたんですか?」
「それはまだ秘密かな。もっと親しくなったらいつか教えるよ」
「は、はあ……」
そして買い物を済ませたアインは宿に戻った。
「女将、悪いがもう一泊だ。昨日の部屋は空いてる?」
「ああ、空いてるよ。なんだい、奴隷でも買ってきたのかい?」
「まあそんなとこ。食事付きで頼むよ」
「はいよ」
鍵を受け取り酒場に連れて行く。そして店主に頼み女の子に食事を摂らせた。
「ま、まともな食事なんて久しぶりですっ」
「慌てなくて良いよ。誰も盗らないからゆっくり食べてくれ」
「は、はいっ!」
アインの前には温いエールと串焼き肉の盛り合わせがあった。
「兄さん、なかなか可愛い奴隷買ってきたじゃねぇの。今夜はお楽しみかい?」
「ぶふっ!?」
店主の言葉を耳にした女の子がむせた。
「あのなぁ。そんな事するわけないだろ。どう見てもまだ子どもじゃないか」
「いやいや、世の中には子どもの方が良いって奴もいるしよ、兄さんもその口かと……」
「勘弁してくれ。俺は子どもに興味ないよ」
「わ、私小さいけど十五歳ですから!」
「「え?」」
女の子の年齢を聞いた俺と店主は同時に驚いた。
「嬢ちゃん、そのナリで成人してんのか!?」
「嘘だろう? どう見ても十二か十三……」
「十五ですっ! 見た目はお母さんがドワーフだから……」
「ドワーフ……ハーフか!」
「は、はい」
ドワーフの女は成長が遅い。そして晩年になると一気に老け込む特徴がある。
「なるほどなぁ。いや、待てよ? 確かドワーフって魔法苦手だったような……」
「うぅ……、はい」
魔法にもいくつか種類があり、ドワーフは鍛冶に使う魔法は得意だがそれ以外の魔法はからっきしだ。
「……よくそれで魔法学園に入れたな」
「私の入った学園はお金さえ払えば在籍できる学園だったので……」
「その辺りも詳しく聞く必要があるな」
その後アインは久しぶりに満足する食事を摂った女の子を連れ、宿の部屋に入るのだった。
「開いてる店は武具屋と道具屋、市場は閉まってるな。農家は売りに出さずに自分らで消費してるのか」
売値が変わらず買った側が十倍儲かるなど誰も売らないだろう。肉は魔物を狩れば手に入るが野菜ばかりはどうにもならない。
「貴族や金持ちは今の現状が自分の首を絞めてるだけだと気付かないのか、はたまた金や権力にものを言わせて弱者から搾取しているのか……。どちらにしろこの国に未来はないだろうな」
冒険者組合も聖神教会も見るも無惨に破壊し尽くされており、冒険者風の者も教会関係者も見当たらない。
「これが続けば近い内に国は滅びるだろうな。ん?」
「おら、早く歩けよ」
「うぅぅ……」
何やら首輪と手枷を嵌められた者が数人、いかつい男に鎖を引かれ歩かされていた。
「ったくトロくせぇな! 商品じゃなかったら殴ってるとこだぜっ!」
「……奴隷か」
「あん? 何見てんだ。まさか買いてぇのか? なら店に来いよ。金があんなら売ってやるぜ。おらっ、早くしやがれ!」
そうして男は自分の店に奴隷を引きずっていった。
「金がない者は家族を奴隷商人に売る……だったか。どこかの村か町から連れて来られたんだろうな」
そんな時だった。町の住民が今引きずられていった人物に見覚えがあったらしい。
「今の子……最後まで皇帝に従った領主様の娘じゃ……」
「はぁ? それはないだろ。確か一族全員処刑されたって聞いたぜ?」
「いや、俺御者時代に見たことあるからわかるんだよ。確かにあの子を隣国の学園に連れてったんだよ。三年前にな」
「へぇ~……。じゃあその学園とやらから帰省して捕まっちまったわけか。ついてねぇなぁ」
「生かしているのは家族全員殺られた反応を見るためだろうな。本当に魔族は心の底から腐ってやがる」
この話を聞いたアインは直ぐ様駆け出し、奴隷商人のあとを追った。
「待ってくれ!」
「あぁん? なんだ、さっきの奴か。何か用か?」
「すまないが俺にその子を売ってくれないか?」
「え?」
「あん? こいつを?」
「あぐっ」
男が鎖を引き女の子を地面に転がした。
「おいっ!」
「なんだよ? こいつはまだウチの商品だ。どう扱おうが俺の自由だ。で? あんたはこいつを買いたいんだっけ?」
「ああ。譲ってくれ」
そう告げると男は下衆な笑みを浮かべた。
「しょうがねぇな~。店に来いよ。売ってやっから」
「わかった」
そして男の案内で店に入り、そこで売買契約を結んだ。
「んじゃ商談成立な」
「待て」
「あ?」
アインはスキルを使った。
「払ったのは百万ゴルドだろ。釣りをもらってない」
「……ちっ。ちょっと待ってろよ。ほら九十九万ゴルドだ」
「確かに」
アインは現実を改変し、女の子を一万ゴルドで救い出した。
「えぇぇ……? なんで……??」
買われた女の子は目の前のやり取りを見て混乱していた。
「さ、行こうか」
「え? あ、はい」
「待ちな!」
「なにか?」
店を出ようとした二人を男が止めた。
「まだ奴隷紋を刻んでねぇだろ。そのまま行ったら逃げられるぜ。まあ、あんたがそれでも構わないってんなら刻まない事もできるがよ」
「いらないよ。さ、行こう」
「は、はいっ!」
「何に使うかわからねぇが返品はなしで頼むぜ~ひひひひっ」
アインは最後に男を睨み店を出た。
「さて、まずは服を買わないとな。行こうか」
「え? 服ですか……?」
「そんなボロ布じゃ恥ずかしいだろう?」
女の子は薄汚れたボロ布を頭から被っていただけだった。さすがに女の子にこの格好をさせたまま連れて歩く気はない。アインは女の子を連れ服屋に行き、女の子に好きな服を選ばせた。
「ほ、本当に買っていただいても良いんですか?」
「ああ。好きな服を選んでくれ。あ、できたら動きやすい服が良いな。旅をするような服で」
「わ、わかりました。あの、ローブでも良いですか? 私、魔法学園の生徒だったので」
「魔法学園ね。なら君は魔法使いか」
「はい。でも……あまり才能はなくて……」
「そこはまた後から詳しく聞こう。とりあえずじゃあ魔法使いっぽい服装で」
「はいっ!」
そして購入時、アインは再びスキルを使い正規の値段で購入した。これを見て再び女の子が首を傾げた。
「あ、あの~……わ、私の時もですが、なんであんなに安く買えたんですか?」
「それはまだ秘密かな。もっと親しくなったらいつか教えるよ」
「は、はあ……」
そして買い物を済ませたアインは宿に戻った。
「女将、悪いがもう一泊だ。昨日の部屋は空いてる?」
「ああ、空いてるよ。なんだい、奴隷でも買ってきたのかい?」
「まあそんなとこ。食事付きで頼むよ」
「はいよ」
鍵を受け取り酒場に連れて行く。そして店主に頼み女の子に食事を摂らせた。
「ま、まともな食事なんて久しぶりですっ」
「慌てなくて良いよ。誰も盗らないからゆっくり食べてくれ」
「は、はいっ!」
アインの前には温いエールと串焼き肉の盛り合わせがあった。
「兄さん、なかなか可愛い奴隷買ってきたじゃねぇの。今夜はお楽しみかい?」
「ぶふっ!?」
店主の言葉を耳にした女の子がむせた。
「あのなぁ。そんな事するわけないだろ。どう見てもまだ子どもじゃないか」
「いやいや、世の中には子どもの方が良いって奴もいるしよ、兄さんもその口かと……」
「勘弁してくれ。俺は子どもに興味ないよ」
「わ、私小さいけど十五歳ですから!」
「「え?」」
女の子の年齢を聞いた俺と店主は同時に驚いた。
「嬢ちゃん、そのナリで成人してんのか!?」
「嘘だろう? どう見ても十二か十三……」
「十五ですっ! 見た目はお母さんがドワーフだから……」
「ドワーフ……ハーフか!」
「は、はい」
ドワーフの女は成長が遅い。そして晩年になると一気に老け込む特徴がある。
「なるほどなぁ。いや、待てよ? 確かドワーフって魔法苦手だったような……」
「うぅ……、はい」
魔法にもいくつか種類があり、ドワーフは鍛冶に使う魔法は得意だがそれ以外の魔法はからっきしだ。
「……よくそれで魔法学園に入れたな」
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