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第1章 はじまり
第28話 港町
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エンドリクセンを倒したアインは皇帝の証であろう王冠を手にリーリエの所へと向かった。
「すまんリーリエ。倒したら死体も残らず消えてしまってな。これしか倒した証が残らなかった」
「それは王冠ですか? 皇帝は王冠を被っていませんが」
「なんだと? じゃあこれは?」
「多分……あの魔族が自分で作ったんじゃないでしょうか」
「……なんだ、ゴミか。ならもう必要ない──」
「あ、待って下さい!」
アインは王冠を投げ捨てようとしたがリーリエに止められた。
「どうした?」
「それ、エルムさん達なら見た事あると思うので倒した証になるんじゃないかな~って。それに……多分それ、売れば結構な額になるんじゃないかなぁ」
「そうか。じゃあこれはリーリエに預けておくよ。好きに使って良いぞ」
「わ、私にですか!?」
「俺には必要のない物だからな。そして……」
アインはリーリエに向かい真剣な面持ちでこう告げた。
「リーリエ、ここでお別れだ」
「──え? お別……れ?」
「この国にからもう驚異は去った。俺は当初の目的を果たすためにこのまま帝都を抜け北に向かう。これは考えたくない事だが……もしかするとエンドリクセンのように魔国クリミナルから派兵されている魔族がいるかもしれない。そして……おそらくエンドリクセンの消滅はディザームも察知しているはずだ。ゆっくりしている暇などないのだよ」
「──っ、そう……ですね」
リーリエの瞳に涙が浮かぶ。
「でも……国を救ったのに誰からも祝福されないなんて……」
「祝福や称賛を受けるためにやった事ではない。俺はな、困っている者を助けられればそれで良いんだ。リーリエ、俺が願うのは平和だ。もし俺に恩を感じているならガーデン帝国を平和な国にし、隣国を助けてやれるような国にしていって欲しい。今回の戦争で争いとはいかに恐ろしいものか身に染みたはずだ。そして平和のありがたみもな」
「はいっ! エルムさん達と話し合って良い国にしていきます! わっ」
アインはリーリエの頭を撫でてやった。
「それで良い。もし何かに困ったらマードレック王国を頼れ。俺の名を出せば必ず助けてくれるはずだからな」
「……はいっ! アインさん……本当にありがとうございましたっ! この恩は絶対に忘れませんっ! そして……いつかまたこの国にいらして下さい!」
リーリエの声が震えている。瞳からは大粒の涙が溢れ落ちていた。
「今度いらした時には平和で綺麗な国をお見せしますからっ!」
「……ああ、リーリエ達が作る国を楽しみにしているよ。創造は破壊より難しいからな。大変だぞ?」
「大丈夫です! これからアインさんが成そうとしている事に比べたら全然です! アインさん……死なないで下さいね!」
「……ああ。俺はもう死なないよ。必ずまたここに戻るよ。じゃあ……またな、リーリエ」
「──はいっ!」
その後、リーリエはエンドリクセンの王冠を手に要塞へと帰還し、国から驚異が去った事を伝えた。そして最初にエンドリクセンに立ち向かう事を決めたリーリエは皆に認められ、国の代表になった。そして国の名を新たに【アイリーエ王国】へと変え、初代女王となるのだが、それはまだ先の話だ。
そしてリーリエと別れたアインは帝都に向かいつつ、破壊された町や村を修繕しながら北上していき、ついにローレン大陸最北端の港町【アジガシア】へと到着した。ここはガーデン帝国の隣国【ブルレスト王国】。漁業が盛んな国だ。
「ようやく最初の大陸が終わるか。エンドリクセンを倒してやたらレベルも上がったし、減った魔物の肉も補充できた。次の大陸に渡る準備は万端だな。さて、中央大陸行きの船は……」
アインは港町を散策し船の発着所に向かった。そして何とか発着所を見つけたが、ここでまた問題が起きた。
「船が出ていない? なぜだ!」
「なぜと言われてもなぁ。海を見たらわかるだろ。あっちに桟橋があるからそこから海を見てみな」
「むう……」
アインは海を見るため桟橋に向かった。この国の海は綺麗な事で有名だ。海洋資源も豊富で、市場には獲れたての海の幸が並ぶのだが、少し様子がおかしかった。
「今日は休みなのか? どこもやってないな」
市場の棚は空で、人気が全くない。アインは首を傾げつつ桟橋に向かい、そこで初めて市場がやっていない理由を知った。
「な、なんだこの海は……。あの綺麗だった海はどこに!?」
「なんだ兄ちゃん、昔の海知ってんのか?」
「え?」
海を見て驚いていると酒瓶を片手に酔っ払った漁師風の男が話し掛けてきた。
「酷いもんだろ……この辺りの海は死んじまったんだ。こいつらのせいでなっ!」
「え?」
漁師は手にしていた串焼き肉を海に向かって放り投げた。すると海面に魚影が見え、次の瞬間海面から魔物が飛び出してきた。
「っ! キラーフィッシュ!? それに巨大ウツボーン! ジェットシャークまで!! どれもこの辺りにはいなかった魔物じゃないか!」
「ああ。この一帯はあいつらに占領されちまったんだよ。海産物は全滅、船を出そうものなら船底に穴を開けられ海の藻屑、この町はもう終わりだ。中央大陸には渡れねぇ。王も打つ手なしで毎日頭を抱えてるよ」
「……なぜガウス大陸周辺にしかいない魔物が……。まさか……これもディザームの仕業か」
「知らねぇよ……。とにかく、船は出せねぇぞ。中央大陸には向えねぇ。残念だったな、兄ちゃん」
そう言い、漁師風の男は町の方へと戻って行ったのだった。
「すまんリーリエ。倒したら死体も残らず消えてしまってな。これしか倒した証が残らなかった」
「それは王冠ですか? 皇帝は王冠を被っていませんが」
「なんだと? じゃあこれは?」
「多分……あの魔族が自分で作ったんじゃないでしょうか」
「……なんだ、ゴミか。ならもう必要ない──」
「あ、待って下さい!」
アインは王冠を投げ捨てようとしたがリーリエに止められた。
「どうした?」
「それ、エルムさん達なら見た事あると思うので倒した証になるんじゃないかな~って。それに……多分それ、売れば結構な額になるんじゃないかなぁ」
「そうか。じゃあこれはリーリエに預けておくよ。好きに使って良いぞ」
「わ、私にですか!?」
「俺には必要のない物だからな。そして……」
アインはリーリエに向かい真剣な面持ちでこう告げた。
「リーリエ、ここでお別れだ」
「──え? お別……れ?」
「この国にからもう驚異は去った。俺は当初の目的を果たすためにこのまま帝都を抜け北に向かう。これは考えたくない事だが……もしかするとエンドリクセンのように魔国クリミナルから派兵されている魔族がいるかもしれない。そして……おそらくエンドリクセンの消滅はディザームも察知しているはずだ。ゆっくりしている暇などないのだよ」
「──っ、そう……ですね」
リーリエの瞳に涙が浮かぶ。
「でも……国を救ったのに誰からも祝福されないなんて……」
「祝福や称賛を受けるためにやった事ではない。俺はな、困っている者を助けられればそれで良いんだ。リーリエ、俺が願うのは平和だ。もし俺に恩を感じているならガーデン帝国を平和な国にし、隣国を助けてやれるような国にしていって欲しい。今回の戦争で争いとはいかに恐ろしいものか身に染みたはずだ。そして平和のありがたみもな」
「はいっ! エルムさん達と話し合って良い国にしていきます! わっ」
アインはリーリエの頭を撫でてやった。
「それで良い。もし何かに困ったらマードレック王国を頼れ。俺の名を出せば必ず助けてくれるはずだからな」
「……はいっ! アインさん……本当にありがとうございましたっ! この恩は絶対に忘れませんっ! そして……いつかまたこの国にいらして下さい!」
リーリエの声が震えている。瞳からは大粒の涙が溢れ落ちていた。
「今度いらした時には平和で綺麗な国をお見せしますからっ!」
「……ああ、リーリエ達が作る国を楽しみにしているよ。創造は破壊より難しいからな。大変だぞ?」
「大丈夫です! これからアインさんが成そうとしている事に比べたら全然です! アインさん……死なないで下さいね!」
「……ああ。俺はもう死なないよ。必ずまたここに戻るよ。じゃあ……またな、リーリエ」
「──はいっ!」
その後、リーリエはエンドリクセンの王冠を手に要塞へと帰還し、国から驚異が去った事を伝えた。そして最初にエンドリクセンに立ち向かう事を決めたリーリエは皆に認められ、国の代表になった。そして国の名を新たに【アイリーエ王国】へと変え、初代女王となるのだが、それはまだ先の話だ。
そしてリーリエと別れたアインは帝都に向かいつつ、破壊された町や村を修繕しながら北上していき、ついにローレン大陸最北端の港町【アジガシア】へと到着した。ここはガーデン帝国の隣国【ブルレスト王国】。漁業が盛んな国だ。
「ようやく最初の大陸が終わるか。エンドリクセンを倒してやたらレベルも上がったし、減った魔物の肉も補充できた。次の大陸に渡る準備は万端だな。さて、中央大陸行きの船は……」
アインは港町を散策し船の発着所に向かった。そして何とか発着所を見つけたが、ここでまた問題が起きた。
「船が出ていない? なぜだ!」
「なぜと言われてもなぁ。海を見たらわかるだろ。あっちに桟橋があるからそこから海を見てみな」
「むう……」
アインは海を見るため桟橋に向かった。この国の海は綺麗な事で有名だ。海洋資源も豊富で、市場には獲れたての海の幸が並ぶのだが、少し様子がおかしかった。
「今日は休みなのか? どこもやってないな」
市場の棚は空で、人気が全くない。アインは首を傾げつつ桟橋に向かい、そこで初めて市場がやっていない理由を知った。
「な、なんだこの海は……。あの綺麗だった海はどこに!?」
「なんだ兄ちゃん、昔の海知ってんのか?」
「え?」
海を見て驚いていると酒瓶を片手に酔っ払った漁師風の男が話し掛けてきた。
「酷いもんだろ……この辺りの海は死んじまったんだ。こいつらのせいでなっ!」
「え?」
漁師は手にしていた串焼き肉を海に向かって放り投げた。すると海面に魚影が見え、次の瞬間海面から魔物が飛び出してきた。
「っ! キラーフィッシュ!? それに巨大ウツボーン! ジェットシャークまで!! どれもこの辺りにはいなかった魔物じゃないか!」
「ああ。この一帯はあいつらに占領されちまったんだよ。海産物は全滅、船を出そうものなら船底に穴を開けられ海の藻屑、この町はもう終わりだ。中央大陸には渡れねぇ。王も打つ手なしで毎日頭を抱えてるよ」
「……なぜガウス大陸周辺にしかいない魔物が……。まさか……これもディザームの仕業か」
「知らねぇよ……。とにかく、船は出せねぇぞ。中央大陸には向えねぇ。残念だったな、兄ちゃん」
そう言い、漁師風の男は町の方へと戻って行ったのだった。
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