無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

文字の大きさ
21 / 85
第02章 エンドーサ王国編

08 獣人

しおりを挟む
 呼び止められた蓮太が振り返ると獣人達は皆、片膝を地につけ頭を下げていた。

「な、なに?」
「あなたは私達の命の恩人ですっ!」
「いや、大げさだな!?」
「なにを言われますか。あのままでは私達は延々見せ物にされ、満足に食事も与えられず朽ちていたでしょう。何より憎きバハロス人に意趣返しできた事が嬉しくてたまらないのです!」

 どうやら相当鬱憤がたまっていたらしい。

「私達は何もしていないのにいきなりバハロス帝国から侵略されました。王は処刑され、兵士は全員火炙りにされました。私達にはもう帰る場所すらないのです! もしご迷惑でないのならば……私達をあなたの奴隷として使ってはもらえないでしょうか!」
「いやいや、せっかく自由になれたのに自ら奴隷に志願するとか何言ってんの!? 好きな所に行って好きな事すれば良いじゃん」

 だが獣人達は諦めなかった。

「やはり……私達が獣人だからそばには置けないのですか?」
「いや、俺はそんな偏見もってないし、むしろ今すぐもふりた……いや、なんでもない」

 そう言いかけた言葉を獣人の男は聞き逃さなかった。

「なるほど。ならば……」
「ん? ちょ……」

 男は仲間の中から三人の獣人を選び前に出した。

「犬型、猫型、羊型のメスにございます。しばらく水浴びもできておりませんでしたから今は多少ゴワついておりますが、綺麗にすれば毛はフサフサ、抱いて眠れば癒される事間違いなしでしょう」
「や、止めろっ! そんな誘惑には乗らないぞっ!」
「なるほどなるほど。三人とも、主様をどう思うか申してみるのだ」

 すると三人はもじもじしながら思いを口にし始めた。

「ワン、ワタシは……主様の抱き枕になりたいワンッ」
「うっ」
「ニャア~……、私はご主人と日向でゴロゴロしたいニャア~」 
「うぅっ」
「メェ~……、私は逆にご主人様を包んであげたいメェ~」
「うぅぅぅっ!」

 蓮太は動物好きだった。地球ではペット禁止の部屋だったため、動物を飼う事が出来なかった。飼う時間もなかったのだが。

「何なら他にもいますよ? この中から好きな獣人を選んでくれて構いません。買われた以上は私達は主様の物ですから」
「だから買ってないんだって」
「いやいや、あの場で契約は成立してますよ。どうか私達を助けると思ってなんとか!」
「助けるって……。本当に行く場所がないのか?」
「はい。私達の国があった場所はもうバハロス帝国の土地です。私達は兵士と違い、訓練もしていませんのでそれほど強くもありません」

 必死に嘆願する獣人達を見捨てる事など動物好きの蓮太にできるはずもなかった。

「わ、わかったよ。ただし、一つだけ言っておく」
「なんでしょうか」
「俺は今エルフ達の王をしているんだ」
「エルフですか!?」
「そうだ。もしエルフと仲が悪いなら悪いがお前達とは暮らせ──」

 獣人達は蓮太の言葉を遮るように蓮太の周りに群がった。

「まさかエルフまで救っておられたとは!」
「さすが主様だワンッ」
「ニャア、エルフ達は亜人だから私達の仲間ニャア~」
「エルフも人間とは敵対関係にありますが、獣人とは敵対していなかったメェ~」
「ちょっ、近いっ! んで猫! すり寄るな! もふるぞ!?」
「……ニャンッ」

 猫はちょっとざらつく舌で蓮太の頬を舐めた。そこから先の記憶はない。蓮太は猫を小脇に抱え、茂みの中に入る。そして二時間後。

「んじゃエルフの所に行きますか」
「おやおや、ずいぶんスッキリなされたようで……」
「動物好きだからな俺は」

 その陰で三人はなにやら話し合っていた。

「主様はどうだったワン?」
「す、凄いテクニックだったニャン……、首の下を撫でる指技と尻尾の付け根を擦る指技が極上だったニャア~……」
「さ、最後までしたメェ~?」
「もちろんニャア~。凄かったニャン」
「「……ズルい!」」

 三人娘はおいておき、蓮太は獣人の男に言った。

「とにかくだ、お前達は俺が引き取るよ。今からエルフの所に飛ぶ。全員手を繋いでくれ」
「飛ぶ?」
「ああ、俺は【転移】を使える。エルフの国は俺が作った安全地帯だからな。そこなら安心して暮らせるだろう」
「……わかりました。皆、隣の者と手を繋ぐのだ!」
「「「「はいっ!」」」」

 そうして獣人総勢百人が手を繋ぐ。なぜか正面から猫が抱きつき、左右には犬と羊ががっしり抱きついていたが今は我慢する。

「主様、指示通りに」
「うん、じゃあ飛ぶよ。【転移】!」

 蓮太は獣人達を連れエルフの国へと戻った。

「はい、到着だ」
「な、なん……と! あれは世界樹では!?」
「ああ、うん。あれも俺がやった」
「主様はもしや神様でしょうか?」
「いいや、普通の人間……なぁ、三人とももう離れてくれない?」
「いやニャン」
「わ、ワタシも欲しいワンッ」
「今夜は寒くなりそうなので私を布団に……メェ」

 実は語尾作っているのではと思ったがそれ所ではなかった。

「レンタ様?」
「レンタ? な、なんだその獣人達は」
「あ、長にリージュ!」

 もふもふに誘惑されている所に長達がやってきた。

「いや、実はな……」

 蓮太は二人にイシュガルの町であった事を話した。

「な、なん……だと! 獣人の国がバハロス帝国に!? では獣王が負けたのか!?」
「はい。奥方と王女を人質に取られ……」
「なんて卑怯な……。しかも兵士を火炙りだなんて……。よく無事でしたね」
「いえ、こうして助かったのは主様のお陰です。もし主様がいなければ私達も死に絶えていたでしょう」
「……許せんな」

 リージュは静かに怒りを表していた。

「とにかくだ、今エンドーサには奴隷商人に扮したバハロス帝国兵が何とか手を出させようと色々やってるみたいでな。多分奴隷になってる獣人もまだいるはずだ。全員とは言わないまでも何とか全員救いたい。そしてできたらここに住まわせたいのだが……」
「もちろん構いませんわ。まだ空いている土地も沢山ありますし、獣人は仲間ですから」
「そっか。じゃあ獣人達を頼むよ。俺は残りの獣人を何とか救ってくるからさ」
「大丈夫か? もうすぐ夜だぞ?」
「……そうだな。明日にするか。とりあえず住む家だけ建ててくるからその間に風呂に案内してくれるかな?」
「わかった。皆さん、私についてきてくれ。今から汚れを落として綺麗にする」
「「「「はいっ!」」」」

 そうして蓮太は空き地に獣人達の家を建ててやった。そしてその日の夜、蓮太から金塊を受け取ったバハロス帝国兵達はというと。

「ははははっ、これを持ち帰ったら陛下に褒めてもらえるぞ!」
「これだけありゃあ勲章間違いなしだろ! まさかゴミ同然の獣がこんな金塊に化けるとはなっ」
「戦の火種になれば儲けもんだったが……意外に稼げ……なっ!? なんだこりゃっ!?」
「どう──は? はぁぁぁぁぁっ!?」

 押し車に積んでいた金塊が気付くと石の山に変わっていた。

「バ、バカな! なんだこれっ! ただの石じゃねぇかっ!」
「さっきまでは確かに金塊だったぞ!?」
「や、やられた! ちくしょうっ! 騙されたっ!」
「俺達は……奴隷を奪われ延々重い石を運んでたって事……か?」
「ちくしょぉぉぉっ! あの冒険者めぇぇぇっ!」
「ど、どうするよ! こんなの陛下にバレたら……」
「ひ、引き返すぞ! あのクソ野郎を探しだしてぶっ殺す! 帝国兵を舐める野郎は皆殺しだっ!」
「「「殺るか」」」

 帝国兵達は国境手前でハメられた事に気付き、怒りに震えながらイシュガルの町へと引き返していくのだった。 
しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...