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仮面女の行く末は。
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「私が望む最高のハッピーエンドのために。」
彼女はそう言い放つと、私の目の前から去っていった。
突然何なんだ。というかあの女は誰なんだ。
必死に頭をフル回転させ、考える。
私がぼけーっとしていたときにどこからか突然あらわれたあの女。
ココアのような色の髪は腰まで伸びており、目はこれでもかっというくらいでかい。
女子の中でもかなり小柄だったと思う。
私があの女について覚えているのはそれくらいだ。
うーん。思い出せない。あんな奴いたっけ。
考えることが面倒くさくなり、頭を振って切り替えることにした。
「ねぇ皆聞いてよ!オルガさんが私を階段から突き飛ばしたの!」
「おかげで私、怪我しちゃったの!ひどいでしょ!?」
あの女がまた現れた。しかも今日は手首に包帯を巻いているらしい。
私の所属するクラスに押しかけ、大声で喚き散らしている。
てか、オルガって誰?えーと、私の名前はリズヴェット・オルガ。あれれ、私じゃん。
大抵、リズヴェットさんと呼ばれるのでオルガさんと言われてもいまいちしっくりこない。
いやそれよりこいつ私に階段から突き飛ばされたとか言ってんだけど。
いやいや。先日初めてあったばかりではないですか。
初対面のか弱そうな女子を突き飛ばすほど卑しい性格はしていない。
それに今あったのが2回目なのだ。先日は、奴(あの女)から突然話しかけてきたというのに。
ひどい話だ。嘘をつくにも程がある。やれやれ。
「セレスを傷つけたのは貴様か。」
セレスって誰?
「答えろ、この悪女!」
うわー、口悪ぃなこのイケメン。所詮は顔だけか。
「答えろと言っているんだ!」
その時、リズヴェットの左頬に凄まじい衝撃が走った。
「っ!」
どうやら顔だけイケメンにビンタされたらしかった。
マジかよ。女にビンタするとかマジ顔だけじゃん。
でもなんであたいにビンタすんねん!
もしかして、悪女って私のこと?嘘だろ。
じゃあキモ女はセレスって名前なのか!
「きゃあ!私のためにそんな汚いことしないで!」
うわ声キモ。鼓膜に痛いキンキンした声でセレスとかいう名前の女は叫んだ。
いや、顔だけイケメンとキンキンココアに挟まれてる私どうすればいいの。
「セレス!」
「セレス!」
「セレス!」
うわ、さらに3人イケメンがでてきたんだけど。
セレス良かったわねー。てかセレスってレタスに響き似てるな。
「こんな悪女にかまってないで帰ろう?」
旦那、かまってきたのはそっちでやんす。
イケメン達の中の1人がそう言うと、セレスは勝ち誇った笑みを私にむけた。
うわ何あの顔。泥の中に顔押し付けられた豚みたい。ぶっさ。
このとき、まだリズヴェットは知らなかった。
セレスの邪な企みを。
「おはようー。」
リズヴェットが挨拶をしても返すクラスメイトはいない。
リズヴェットは疲れているのかな、とたいして気にしなかったが、これは悪夢の前兆だった。
授業中、リズヴェットの机の上には小さい紙きれの山しかなかった。
前から横から斜めから、次々とリズヴェットに対する罵倒・暴言が書かれた紙きれが投げられる。
そしてその紙きれがのっている机もリズヴェットに対する罵倒・暴言が所狭しと殴り書きされている。
机の中にあるはずの教科書やノートはなく、ビリビリになってごみ箱に捨てられていた。
周りからリズヴェットを嘲笑う笑い声が聞こえる。
だがその声はどれも震えていてリズヴェットには本来の効果が発揮されなかったが。
さてと、どうしようか。
これは世でいう[いじめ]だ。
自分が被害者になるとは思っていなかったが、起きてしまった以上は仕方がない。
何かしてしまったのか。
元々口数は少ない方だが、クラスメイトはそれを承知のはず。
今更になってウザくなったという可能性は低いだろう。
そもそもクラスメイトにそんな器の狭い奴はいない。
どれだけ考えても浮かばない。
そうなると残る手段は1つ。
誰かに聞く、だ。
といってもクラスメイトの誰かに聞いて快く答えてくれるとは思っていない。
この雰囲気の中話しかけに行っても気まずいだけだろう。
それなら、あいつに頼るまでだ。
「おい、助けろ。」
「えー?それが人に頼む態度ぉー?」
相変わらずキモい。
こいつはリズ・ルディアーノ。昔からの幼馴染で、語尾に母音をつける雲のような男だ。
だが、他人からの評価は気にせず、自分の好きなことをして生きている。
そこは私も尊敬する所だ。
いじめられている奴は見かけると誰これ構わず助け、皆が嫌っている奴にも平気で話しかける。
そんなことをしていればいじめられそうなものだが、リズがいじめられたことは1度もなかった。
むしろ、好かれていたくらいである。
「私の状況は知ってるでしょ?」
「まぁねぇー♪」
「なら話が早い。助けろ。」
「やぁだ。」
「は?」
「だから嫌だ。」
衝撃だった。リズはこれまで誰も見捨てたことはなかったのに。
ましてや、こんな冷たい言い方をされたことはなかった。
リズの凍ってしまいそうな程冷たい瞳が私をみつめた。
その瞳には威圧感があり、言葉を失ってしまう。
それと同時に私を冷静にさせた。
なんだ、こいつもそうなのか。
今までリズに抱いていた尊敬が一瞬にして消え去った。今は尊敬の欠片1つさえも残っていない。
それどころか嫌悪さえ抱く。今まで私はこんな奴を信頼していたのか、と。
激しく燃えていた炎が突然降ってきた雨によって一瞬で消えてしまったようだ。
目の前のリズが先程とは打って変わって全くの別人にみえる。
私はいつも1人だった。
両親がそれを気がかりに思い、精神科に入院させられたくらいには。
別に私はそのことを気にしてはいなかった。
無感情だったからかもしれない。
むしろ1人でいた方が楽だ、と考えていた。
実際、無駄な気を使わなくていいし、好きなこともできる。
生まれた時からよく仕事の都合で出張に行く両親の影響か、その考えが自然と染みついてしまったのかもしれない。
そんな私の考えは保育園児にしては大人びすぎていたらしく、
先生からも同級生たちからも敬遠されていた。
そしてその私に話しかけてきたのがこの男、リズであった。
保育園の頃から破天荒な性格をしていたリズ。
保育園児にして異才を放っていた私とリズは奇才児同士、気の通じる所があったのかよく話すようになった。
よく話すようになったといってもリズから一方的に、だが。
私は私でそれが嬉しかったのかもしれない。
与えられたことのない温かい感情に心が浸っていたかったのかもしれない。
兎に角、私はその感情に甘えたかったのだと思う。
リズの不器用な優しさが溶けそうなほどに甘く、胸に棘が刺さったように痛かった。
私はその感覚に酔ってしまった。
永遠に欲しいと望んでしまった。
それがリズにとってはただの私の我儘で息苦しいものだったのかもしれない。
だからこんな酷いことをいうのか。
そうだったのならもういらない。
私は私の望んだものをくれるモノが欲しいだけ。
リズはモノになることを選ばなかった。
なら捨てるまで。
「ねぇ悪女さん。早くこの舞台から消え去ってくれない?
あなたがいるといつまでたってもハッピーエンドがこないのよ。
あなたって相当しぶといのね。でもあがいても無駄。
この世界では私はヒロインで私が絶対なの。」
何言ってんのこいつ。舞台?エンド?ヒロイン?なんだよそれ。
自己中にも程があるわ。
おいおい、嘘だろ。
気づいたらイケメン生徒会様たちに囲まれてんだけど。
私、いじめられて興奮する趣味はないからちょっと…。
「やーっとエンドに辿り着けるわ。」
また、キモココアが訳の分からない台詞を吐く。
エンド、エンドうっせぇつぅの。
「おい悪女。セレスが可哀そうだろ。早く消えろ。」
俺様で嫌いだけど、やるときはしっかりやる頼りになる生徒会長。
「お前は生きてて悪いと思わないのか。セレスのために死ねよ悪女。」
普段はクールだけど眼鏡の奥の情熱的な瞳がカッコいいと思った副会長。
「君みたいな悪女が生きててセレスをいじめてるってことに吐き気を覚えるよ♪」
毎日違う女を連れ歩いているけど誰に対しても平等に接する所は尊敬してた書記。
「皆、お前が消えることを望んでんだよ。やることは分かるよな?悪女。」
昔は弱い奴だったけど努力だけで全校生徒に信頼されるまでに至った心からすごいと思う会計。
人が黙ってりゃあれこれ言いやがって。
「「さっさと消えろよ、悪女。」」
悪女悪女悪女。お前ら私の名前を知らないのか?
「リズヴェット・オルガ。」
「貴様の名前など知っている。悪女。」
あぁ、そう。
もう、どうなっても構わない。
私は今だけ自分を解放することにした。
「なんで私がこのくそ女のために死ななきゃいけないんだ。」
生徒会長に問い詰める。
副会長に問い詰める。
書記に問い詰める。
会計に問い詰める。
「はは、誰も理由なんて持ってないのね。」
それでよく人の命をバカにできたものね。
だって何も言えないんだもの。
あんた達が死んだほうがいいんじゃない。
ねぇ、セレス。ここが、この世界があなたのためにあるのなら。
「ハッピーエンド、ねぇ。」
あなたの舞台というなら。
あなたがヒロインで、私は悪女なのでしょう。
「な、何よ!」
やっとあなたの言っていることが分かったわ。
あなたが姫で私は悪い魔女。そして彼らはあなたを救い、私を滅ぼす王子様。
この舞台に私の居場所なんて最初からなかったのね。
ただ姫を引き立たせるだけのつまらない役。
そんな役、いらない。
だったら自ら飛び降りてやるわ。
こんなくそ舞台。
「ㇵハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
でもね、セレス。
あなたの望む通りにはしない。
してやらない。
「舞台なんて壊せばいいのよ!」
「私が台本を書きかえればいい!」
「戻れないように!後悔し続ければいい!」
私以外が息を呑む音がした。
「私は望んでいない。」
こんな世界など。
「だけど。」
去るなら素敵な土産を残さなくては。
「何がいい?」
こいつらの心に一生残るような
刻まれるような
忘れたくても忘れられないような
呪縛として永遠に縛り付けられるような
「あなた達が望むものをあげるわ。」
そばにあった窓ガラスを割り、床に落ちた破片を1枚取る。
その破片を首の傍にもっていき、素早く首にあて動かす。
どうせ消えるなら忘れられないような死をあげる。
目の前で首をかっ切ったら、忘れたくても忘れられなくなるでしょう?
ねぇリズ。今更そんな泣きそうな顔しないでよ。あんたは私を見捨てたじゃない。
「違う、冗談だったのに… 僕を見て欲しいだけだったのに…!」
冗談?笑わせないでよ。もう手遅れよ。
「違うこんなエンドじゃない!違う違う違う!!」
バカね。あなたがこんなエンドにしたのよ。
他の奴らも間抜けな面して。
望むものをただあげただけなのに。
喜んでもらえなかったかしら、私からの最高の贈り物。
「私が望む最高のハッピーエンドのために。」
誰かがそう呟いた。
彼女はそう言い放つと、私の目の前から去っていった。
突然何なんだ。というかあの女は誰なんだ。
必死に頭をフル回転させ、考える。
私がぼけーっとしていたときにどこからか突然あらわれたあの女。
ココアのような色の髪は腰まで伸びており、目はこれでもかっというくらいでかい。
女子の中でもかなり小柄だったと思う。
私があの女について覚えているのはそれくらいだ。
うーん。思い出せない。あんな奴いたっけ。
考えることが面倒くさくなり、頭を振って切り替えることにした。
「ねぇ皆聞いてよ!オルガさんが私を階段から突き飛ばしたの!」
「おかげで私、怪我しちゃったの!ひどいでしょ!?」
あの女がまた現れた。しかも今日は手首に包帯を巻いているらしい。
私の所属するクラスに押しかけ、大声で喚き散らしている。
てか、オルガって誰?えーと、私の名前はリズヴェット・オルガ。あれれ、私じゃん。
大抵、リズヴェットさんと呼ばれるのでオルガさんと言われてもいまいちしっくりこない。
いやそれよりこいつ私に階段から突き飛ばされたとか言ってんだけど。
いやいや。先日初めてあったばかりではないですか。
初対面のか弱そうな女子を突き飛ばすほど卑しい性格はしていない。
それに今あったのが2回目なのだ。先日は、奴(あの女)から突然話しかけてきたというのに。
ひどい話だ。嘘をつくにも程がある。やれやれ。
「セレスを傷つけたのは貴様か。」
セレスって誰?
「答えろ、この悪女!」
うわー、口悪ぃなこのイケメン。所詮は顔だけか。
「答えろと言っているんだ!」
その時、リズヴェットの左頬に凄まじい衝撃が走った。
「っ!」
どうやら顔だけイケメンにビンタされたらしかった。
マジかよ。女にビンタするとかマジ顔だけじゃん。
でもなんであたいにビンタすんねん!
もしかして、悪女って私のこと?嘘だろ。
じゃあキモ女はセレスって名前なのか!
「きゃあ!私のためにそんな汚いことしないで!」
うわ声キモ。鼓膜に痛いキンキンした声でセレスとかいう名前の女は叫んだ。
いや、顔だけイケメンとキンキンココアに挟まれてる私どうすればいいの。
「セレス!」
「セレス!」
「セレス!」
うわ、さらに3人イケメンがでてきたんだけど。
セレス良かったわねー。てかセレスってレタスに響き似てるな。
「こんな悪女にかまってないで帰ろう?」
旦那、かまってきたのはそっちでやんす。
イケメン達の中の1人がそう言うと、セレスは勝ち誇った笑みを私にむけた。
うわ何あの顔。泥の中に顔押し付けられた豚みたい。ぶっさ。
このとき、まだリズヴェットは知らなかった。
セレスの邪な企みを。
「おはようー。」
リズヴェットが挨拶をしても返すクラスメイトはいない。
リズヴェットは疲れているのかな、とたいして気にしなかったが、これは悪夢の前兆だった。
授業中、リズヴェットの机の上には小さい紙きれの山しかなかった。
前から横から斜めから、次々とリズヴェットに対する罵倒・暴言が書かれた紙きれが投げられる。
そしてその紙きれがのっている机もリズヴェットに対する罵倒・暴言が所狭しと殴り書きされている。
机の中にあるはずの教科書やノートはなく、ビリビリになってごみ箱に捨てられていた。
周りからリズヴェットを嘲笑う笑い声が聞こえる。
だがその声はどれも震えていてリズヴェットには本来の効果が発揮されなかったが。
さてと、どうしようか。
これは世でいう[いじめ]だ。
自分が被害者になるとは思っていなかったが、起きてしまった以上は仕方がない。
何かしてしまったのか。
元々口数は少ない方だが、クラスメイトはそれを承知のはず。
今更になってウザくなったという可能性は低いだろう。
そもそもクラスメイトにそんな器の狭い奴はいない。
どれだけ考えても浮かばない。
そうなると残る手段は1つ。
誰かに聞く、だ。
といってもクラスメイトの誰かに聞いて快く答えてくれるとは思っていない。
この雰囲気の中話しかけに行っても気まずいだけだろう。
それなら、あいつに頼るまでだ。
「おい、助けろ。」
「えー?それが人に頼む態度ぉー?」
相変わらずキモい。
こいつはリズ・ルディアーノ。昔からの幼馴染で、語尾に母音をつける雲のような男だ。
だが、他人からの評価は気にせず、自分の好きなことをして生きている。
そこは私も尊敬する所だ。
いじめられている奴は見かけると誰これ構わず助け、皆が嫌っている奴にも平気で話しかける。
そんなことをしていればいじめられそうなものだが、リズがいじめられたことは1度もなかった。
むしろ、好かれていたくらいである。
「私の状況は知ってるでしょ?」
「まぁねぇー♪」
「なら話が早い。助けろ。」
「やぁだ。」
「は?」
「だから嫌だ。」
衝撃だった。リズはこれまで誰も見捨てたことはなかったのに。
ましてや、こんな冷たい言い方をされたことはなかった。
リズの凍ってしまいそうな程冷たい瞳が私をみつめた。
その瞳には威圧感があり、言葉を失ってしまう。
それと同時に私を冷静にさせた。
なんだ、こいつもそうなのか。
今までリズに抱いていた尊敬が一瞬にして消え去った。今は尊敬の欠片1つさえも残っていない。
それどころか嫌悪さえ抱く。今まで私はこんな奴を信頼していたのか、と。
激しく燃えていた炎が突然降ってきた雨によって一瞬で消えてしまったようだ。
目の前のリズが先程とは打って変わって全くの別人にみえる。
私はいつも1人だった。
両親がそれを気がかりに思い、精神科に入院させられたくらいには。
別に私はそのことを気にしてはいなかった。
無感情だったからかもしれない。
むしろ1人でいた方が楽だ、と考えていた。
実際、無駄な気を使わなくていいし、好きなこともできる。
生まれた時からよく仕事の都合で出張に行く両親の影響か、その考えが自然と染みついてしまったのかもしれない。
そんな私の考えは保育園児にしては大人びすぎていたらしく、
先生からも同級生たちからも敬遠されていた。
そしてその私に話しかけてきたのがこの男、リズであった。
保育園の頃から破天荒な性格をしていたリズ。
保育園児にして異才を放っていた私とリズは奇才児同士、気の通じる所があったのかよく話すようになった。
よく話すようになったといってもリズから一方的に、だが。
私は私でそれが嬉しかったのかもしれない。
与えられたことのない温かい感情に心が浸っていたかったのかもしれない。
兎に角、私はその感情に甘えたかったのだと思う。
リズの不器用な優しさが溶けそうなほどに甘く、胸に棘が刺さったように痛かった。
私はその感覚に酔ってしまった。
永遠に欲しいと望んでしまった。
それがリズにとってはただの私の我儘で息苦しいものだったのかもしれない。
だからこんな酷いことをいうのか。
そうだったのならもういらない。
私は私の望んだものをくれるモノが欲しいだけ。
リズはモノになることを選ばなかった。
なら捨てるまで。
「ねぇ悪女さん。早くこの舞台から消え去ってくれない?
あなたがいるといつまでたってもハッピーエンドがこないのよ。
あなたって相当しぶといのね。でもあがいても無駄。
この世界では私はヒロインで私が絶対なの。」
何言ってんのこいつ。舞台?エンド?ヒロイン?なんだよそれ。
自己中にも程があるわ。
おいおい、嘘だろ。
気づいたらイケメン生徒会様たちに囲まれてんだけど。
私、いじめられて興奮する趣味はないからちょっと…。
「やーっとエンドに辿り着けるわ。」
また、キモココアが訳の分からない台詞を吐く。
エンド、エンドうっせぇつぅの。
「おい悪女。セレスが可哀そうだろ。早く消えろ。」
俺様で嫌いだけど、やるときはしっかりやる頼りになる生徒会長。
「お前は生きてて悪いと思わないのか。セレスのために死ねよ悪女。」
普段はクールだけど眼鏡の奥の情熱的な瞳がカッコいいと思った副会長。
「君みたいな悪女が生きててセレスをいじめてるってことに吐き気を覚えるよ♪」
毎日違う女を連れ歩いているけど誰に対しても平等に接する所は尊敬してた書記。
「皆、お前が消えることを望んでんだよ。やることは分かるよな?悪女。」
昔は弱い奴だったけど努力だけで全校生徒に信頼されるまでに至った心からすごいと思う会計。
人が黙ってりゃあれこれ言いやがって。
「「さっさと消えろよ、悪女。」」
悪女悪女悪女。お前ら私の名前を知らないのか?
「リズヴェット・オルガ。」
「貴様の名前など知っている。悪女。」
あぁ、そう。
もう、どうなっても構わない。
私は今だけ自分を解放することにした。
「なんで私がこのくそ女のために死ななきゃいけないんだ。」
生徒会長に問い詰める。
副会長に問い詰める。
書記に問い詰める。
会計に問い詰める。
「はは、誰も理由なんて持ってないのね。」
それでよく人の命をバカにできたものね。
だって何も言えないんだもの。
あんた達が死んだほうがいいんじゃない。
ねぇ、セレス。ここが、この世界があなたのためにあるのなら。
「ハッピーエンド、ねぇ。」
あなたの舞台というなら。
あなたがヒロインで、私は悪女なのでしょう。
「な、何よ!」
やっとあなたの言っていることが分かったわ。
あなたが姫で私は悪い魔女。そして彼らはあなたを救い、私を滅ぼす王子様。
この舞台に私の居場所なんて最初からなかったのね。
ただ姫を引き立たせるだけのつまらない役。
そんな役、いらない。
だったら自ら飛び降りてやるわ。
こんなくそ舞台。
「ㇵハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
でもね、セレス。
あなたの望む通りにはしない。
してやらない。
「舞台なんて壊せばいいのよ!」
「私が台本を書きかえればいい!」
「戻れないように!後悔し続ければいい!」
私以外が息を呑む音がした。
「私は望んでいない。」
こんな世界など。
「だけど。」
去るなら素敵な土産を残さなくては。
「何がいい?」
こいつらの心に一生残るような
刻まれるような
忘れたくても忘れられないような
呪縛として永遠に縛り付けられるような
「あなた達が望むものをあげるわ。」
そばにあった窓ガラスを割り、床に落ちた破片を1枚取る。
その破片を首の傍にもっていき、素早く首にあて動かす。
どうせ消えるなら忘れられないような死をあげる。
目の前で首をかっ切ったら、忘れたくても忘れられなくなるでしょう?
ねぇリズ。今更そんな泣きそうな顔しないでよ。あんたは私を見捨てたじゃない。
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冗談?笑わせないでよ。もう手遅れよ。
「違うこんなエンドじゃない!違う違う違う!!」
バカね。あなたがこんなエンドにしたのよ。
他の奴らも間抜けな面して。
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