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第1章
<4話>オッサンと兎探偵(其の2)
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個人的に僕は、休み時間ほど
残酷な時間はないと思っている。
いや、確かに話相手がいる
『幸せな者達』からしたら、
この時間は義務教育期間の中での
友人達と交流を深められる
小規模なオアシスなのかもしれない。
しかし僕のような『1人者』から
してみれば、
自身の孤独が周囲に浮き彫りになる
この時間は
決して気持ちのいいものではないし、
更に僕がこの時間を嫌悪する理由は、
僕のようなものにとって、この時間は
正に『暇』との戦いだからである。
『暇』とは即ち『退屈』である。
『青春の時は金なり』が主流の社会人から
みれば、僕の今の悩みは
学生という時間の富裕層が
悪びれることなく宣う
贅沢発言の最高潮であり、
恐らくこの言葉を会社の収益のために
心血そして時間を燃やして
働いている皆様に聞かれれば、
僕はたちまち吊るし上げられるだろうが
本当に、
『退屈は猫どころか人を殺す』のだ。
実際、フセが現れるまで、
僕は抜け殻のような生活を送っていたし
いざいじめが無くなったとしても、
僕に近づこうなんて猛者は
小早川入院後の今現在現れない。
(わかるよみんなその気持ち、
そりゃ人を病院送りにしたやつなんて、
関わりたくないよね。)
つらつらと腐ったような自論を
書き連ねてしまったが、
要するに今僕は学校で話し相手がおらず(本当に死んでしまうのではないかというくらい)暇なのである。
『そんなこと言うんだったら、
勉強とかしたらいいのに。
君成績中の下くらいなんだろ?
そんなんじゃ高校行けないよ?』
本を読み終わり、机に突っ伏して
寝たふりに興じていた僕の顔を
覗き込むように、フセがコメントする。
「・・・わかってないなあ、
学生というものを。
いくら暇だからって、
ようやく課題テスト終わって、
試験まで1ヶ月以上あるのに勉強なんか
誰が好き好んでするか。
昨日家で30分やったからいいだろ?」
『ふ~ん、そう。
じゃあ超簡単な問題、
<昨日買った蜜柑は全て腐っていた。>
英語で言って。』
・・・わからない、さっぱり。
『おいおいおい、しっかりしてくれよ。
これ『2年生レベル』の問題だぜ?
これわからないのに
よく進級できたもんだね、
逆に感心するよ。』
一生のうちに柴犬に頭の悪さを貶される
という経験をする人が、
果たして何人いるのだろうか。
答えに詰まる僕を
ニヤニヤしながらフセが
見物していた(ように見えた)その時、
ガラリと扉が鳴り開き、
教頭先生が顔を出したかと思うと、
「義経君、ちょっと応接室に来て。
来客があるから。」と僕に告げた。
来客自体は事情聴取が何度かあったから
ここ最近では
特に珍しくも無くなっていた。
至って冷静に僕は立ち上がり、
教室を出ようとした時、
思い出したように
「そういえば、さっきの答えって何?」
と問うと、フセは面倒臭そうに、
『ああ、あれね、
面白かったよありがとう。』と返した。
頭に浮かんだクエスチョンマークが
消えない僕に向かって、
フセはまだ気づかない?というような
表情で言い捨てた。
『いや~、習ったかどうかも忘れるとは
君は相当記憶力が薄弱なようだね。
『高校2年生』の内容が
『中学2年生』に
解けるわけないだろ。』
滑稽なものを見せてもらったよ、と
満足げなフセの顔をにらみながら、
僕は犬用口輪の購入を真剣に考えた。
そんなこんなで、僕が教頭先生に
連れられ、客人に謁見しに行くため
廊下を歩いている時だった。
訪問者のことを考えていた僕に、
突如として何かがぶつかった、
もちろんこけたりはしなかったが、
若干よろめいて視点のブレた
僕の視覚がとらえたものは、
僕の顎くらいの身長
(元々僕は171cmと、身長が高い方だから
この少女も割と背が高い方
なのかもしれない。)
の女の子だった。
顔は分からなかったが
歳は恐らく
僕と同じ中学生くらいだろうと思った。
この時僕が彼女のことを
印象に残すことが出来た要因は、
ズバリ彼女の服装にあった。
制服が通例の中学校では、
特殊な白い長袖と
赤色の膝を超える長さのスカートという要するに私服で、
何より、前が見えてるのか
心配になるくらいに
深くかぶったうさ耳つきの鹿撃帽なんて
思春期の女子中学生が
果たしてつけるものなのだろうか?
僕はこの時、
よろめいた身体を修正しながら
『変わった服装だなあ』ということで、
彼女の事を何と無く覚えていたのだが、
その時に一瞬、違和感を感じた。
何というか、
『自分と似た容姿の人にあった』
という感じがしたのだ。
(断っておくが、
僕はボサボサ黒髪のメガネ、
その子は帽子をしていてもわかる
腕の関節くらいまで伸びた
茶色がかったロングで、
勿論容姿において共通点はあまりない)
まあ結果として、
一応その感じは当たっていたわけだが。
ーーー応接間に入ると、
そこには無精髭を生やし、
革ジャンにジーパンを履いた男性が
ソファーに踏ん反り返っていた。
そして僕の入室に気づき、
大慌てで座り方を整え、話しかける。
「いや~ごめんね、突然呼び出して。」
僕は黙って、
お前誰だよオーラを出しながら
その男を見つめる。
(しょうがないじゃん、
名乗ってもらってないんだもの。)
横ではフセも同じような視線を
男に投げていた。
自身が名乗っていないことに、
ようやく気付いたらしいその男は、
「あ、ごめんごめん、俺は三好善一、私立探偵だよ。」
と楽しそうに自己紹介した。
「・・・何のご用ですか?」
いや、聞かなくても分かっている。
小早川の件に違いない。
親が探偵を雇ったということは、
学校でも囁かれていたのだから。
そして三好探偵は、予想通り
「ああ、少し前に此処で起きた事件に
ついて少しばかり聴き取り調査をね。
怪事件だよねえ、発狂した少年、
現場には凶器なし、
目撃者がいたのに犯人は見つからず、
被害者の足には謎の紋様のような痣。
まあ、仕事とはいえ、
未だに病院のベットの上で
いつ来るか分からない
地獄の痛みに怯えて、
まともに会話すらできない、
哀れなイケメン君のためだ。
しっかりやらないとね。」
と笑顔で切り出した。
「君は特別だ。
いつも一緒にいて、
何せ目撃者で、
おまけに・・・別の目撃者、
えーと、
一条君と今川君とか言ったかな。
彼らは君が小早川君をあんな風にしたと
証言したそうだね。
つまり容疑者でもあるわけだ。」
僕は何を言っているのか、
というような顔をする。
「警察の人が調べても、
凶器なんて見つからなかったし、
そもそも被害者の小早川だって、
怪我なんか
してないらしいじゃないですか。
もう勘弁して下さい、
僕があいつといつも一緒にいたのは、
あいつが僕を
虐めの標的にしてたからなんです。
正直あいつの事は
思い出すのも嫌なんです。」
と僕はぶっきらぼうに吐き捨てた。
嘘はついていない。実際そうだ。
小早川は怪我なんてしていない
(痛みと衝撃を『貼り付けた』から、
僕が能力を解除するまで、
彼は肉体が切断される
痛みを再生され続け、
延々と感じていたはずだが)し、
後半も全て真実だ。
あいつに虐められた記憶
は思い出すだけで
軽く吐き気を覚える。
確か、誰かに嘘を信じさせるのに
効果的な方法は、
適度に真実を織り交ぜる事というのを
聞いたことがあるが、
どうやら本当なのかもしれない。
「・・・なるほどね。
どうやら君の話に
嘘はないみたいだね。」
探偵は納得したようで、
目を瞑ってウンウンと頷いた。
「うん、もうOKだよ、ありがとう。」
どうやら尋問は終了したようだ。
僕が席を立ち、部屋から出ようとした
その時、探偵は徐に口を開き、僕にある質問をした。
「あ、最後に一つ。
此処に来る途中、
女の子とぶつからなかった?
鹿撃帽かぶってる子。」
勿論僕にはその記憶があった。
「ああ、はい。」と答えると、
探偵は
「やっぱり~!
ごめんね、今日姪を連れてきててさ、
どっかいっちゃったと思ってたら、
校舎内徘徊なんてしてたのか~!
まあ、トイレに行くっていってから
戻ってきてないから、
大方道に迷ったんだろうな。」
と大声で教えてくれた。
なるほど、あの子はこの人の姪か。
しかし仕事に姪を連れてくる意味とは?
「は、はあ・・・。」
僕は反応に困ったまま、応接間を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰もいなくなった応接間で、
三好はポツリと呟いた。
「よし、あいつこれで全員に触れたな。
もうあいつ犯人突き止めてるな。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
出口で待機していた教頭先生と
二言三言話したのち、
僕は自教室に戻るべく足を動かした。
そして20歩くらい言ったところで、
突然僕の前を人に立ちふさがった。
その人は、さっきの女の子だった。
ただ、少し違うのは、
寝ていたはずの鹿撃帽についたうさ耳が
重力に逆らって、
ピンとたっていた。
彼女は鼻同士がぶつかりそうな
超至近距離で、
僕のことをじっと見つめている。
「・・・あの、なんですか・・・?」
僕は空気に耐えきれずに
また、彼女の奇行の意図を探るべく
なんとか口を開く。
するとその大人しそうな外見を
裏切るように、
活発な口調の言葉が飛び出した。
「お前義経赤斗だよな?
ようやく見つけたと思ったら
すぐどっか行っちまうんだから、
何事かと思ったら、
三好のおっさんのとこか。
はん、相変わらず事情聴取なんか
しょーもないことやってやがるぜ。
僕ならそんなのやらなくても
一発だってのにさ。
なあ、お前ちょっとこいよ。
そんで話聞かせてもらうぜ。
だってこの事件の犯人お前だろ。
あと、そこの犬も一緒にこい。」
この時、僕は3つの衝撃を受けた。
『名乗っていない名を当てられた衝撃』
『僕が犯人だと一瞬で見抜かれた衝撃』
そして何より、
『見えないはずのフセに
話しかけた衝撃』である。
僕は激しく動揺しながらも、
何とか口を開く。
「き・・・君は一体・・・。」
何者、と言う前に
向こうがまくし立てる。
「え?みてわかんないわけ?鈍いなあ。
『僕』の名はピノで、
『私』の名前は斯波葉月。
シンジュウ探偵ってやつさ。
もう1人のシンジュウの
宿り主・義経赤斗。
お前の話を是非
聞かせてもらいたいな。」
そう言って『彼女』とおそらく『彼』
は、柔らかく微笑んだ。
残酷な時間はないと思っている。
いや、確かに話相手がいる
『幸せな者達』からしたら、
この時間は義務教育期間の中での
友人達と交流を深められる
小規模なオアシスなのかもしれない。
しかし僕のような『1人者』から
してみれば、
自身の孤独が周囲に浮き彫りになる
この時間は
決して気持ちのいいものではないし、
更に僕がこの時間を嫌悪する理由は、
僕のようなものにとって、この時間は
正に『暇』との戦いだからである。
『暇』とは即ち『退屈』である。
『青春の時は金なり』が主流の社会人から
みれば、僕の今の悩みは
学生という時間の富裕層が
悪びれることなく宣う
贅沢発言の最高潮であり、
恐らくこの言葉を会社の収益のために
心血そして時間を燃やして
働いている皆様に聞かれれば、
僕はたちまち吊るし上げられるだろうが
本当に、
『退屈は猫どころか人を殺す』のだ。
実際、フセが現れるまで、
僕は抜け殻のような生活を送っていたし
いざいじめが無くなったとしても、
僕に近づこうなんて猛者は
小早川入院後の今現在現れない。
(わかるよみんなその気持ち、
そりゃ人を病院送りにしたやつなんて、
関わりたくないよね。)
つらつらと腐ったような自論を
書き連ねてしまったが、
要するに今僕は学校で話し相手がおらず(本当に死んでしまうのではないかというくらい)暇なのである。
『そんなこと言うんだったら、
勉強とかしたらいいのに。
君成績中の下くらいなんだろ?
そんなんじゃ高校行けないよ?』
本を読み終わり、机に突っ伏して
寝たふりに興じていた僕の顔を
覗き込むように、フセがコメントする。
「・・・わかってないなあ、
学生というものを。
いくら暇だからって、
ようやく課題テスト終わって、
試験まで1ヶ月以上あるのに勉強なんか
誰が好き好んでするか。
昨日家で30分やったからいいだろ?」
『ふ~ん、そう。
じゃあ超簡単な問題、
<昨日買った蜜柑は全て腐っていた。>
英語で言って。』
・・・わからない、さっぱり。
『おいおいおい、しっかりしてくれよ。
これ『2年生レベル』の問題だぜ?
これわからないのに
よく進級できたもんだね、
逆に感心するよ。』
一生のうちに柴犬に頭の悪さを貶される
という経験をする人が、
果たして何人いるのだろうか。
答えに詰まる僕を
ニヤニヤしながらフセが
見物していた(ように見えた)その時、
ガラリと扉が鳴り開き、
教頭先生が顔を出したかと思うと、
「義経君、ちょっと応接室に来て。
来客があるから。」と僕に告げた。
来客自体は事情聴取が何度かあったから
ここ最近では
特に珍しくも無くなっていた。
至って冷静に僕は立ち上がり、
教室を出ようとした時、
思い出したように
「そういえば、さっきの答えって何?」
と問うと、フセは面倒臭そうに、
『ああ、あれね、
面白かったよありがとう。』と返した。
頭に浮かんだクエスチョンマークが
消えない僕に向かって、
フセはまだ気づかない?というような
表情で言い捨てた。
『いや~、習ったかどうかも忘れるとは
君は相当記憶力が薄弱なようだね。
『高校2年生』の内容が
『中学2年生』に
解けるわけないだろ。』
滑稽なものを見せてもらったよ、と
満足げなフセの顔をにらみながら、
僕は犬用口輪の購入を真剣に考えた。
そんなこんなで、僕が教頭先生に
連れられ、客人に謁見しに行くため
廊下を歩いている時だった。
訪問者のことを考えていた僕に、
突如として何かがぶつかった、
もちろんこけたりはしなかったが、
若干よろめいて視点のブレた
僕の視覚がとらえたものは、
僕の顎くらいの身長
(元々僕は171cmと、身長が高い方だから
この少女も割と背が高い方
なのかもしれない。)
の女の子だった。
顔は分からなかったが
歳は恐らく
僕と同じ中学生くらいだろうと思った。
この時僕が彼女のことを
印象に残すことが出来た要因は、
ズバリ彼女の服装にあった。
制服が通例の中学校では、
特殊な白い長袖と
赤色の膝を超える長さのスカートという要するに私服で、
何より、前が見えてるのか
心配になるくらいに
深くかぶったうさ耳つきの鹿撃帽なんて
思春期の女子中学生が
果たしてつけるものなのだろうか?
僕はこの時、
よろめいた身体を修正しながら
『変わった服装だなあ』ということで、
彼女の事を何と無く覚えていたのだが、
その時に一瞬、違和感を感じた。
何というか、
『自分と似た容姿の人にあった』
という感じがしたのだ。
(断っておくが、
僕はボサボサ黒髪のメガネ、
その子は帽子をしていてもわかる
腕の関節くらいまで伸びた
茶色がかったロングで、
勿論容姿において共通点はあまりない)
まあ結果として、
一応その感じは当たっていたわけだが。
ーーー応接間に入ると、
そこには無精髭を生やし、
革ジャンにジーパンを履いた男性が
ソファーに踏ん反り返っていた。
そして僕の入室に気づき、
大慌てで座り方を整え、話しかける。
「いや~ごめんね、突然呼び出して。」
僕は黙って、
お前誰だよオーラを出しながら
その男を見つめる。
(しょうがないじゃん、
名乗ってもらってないんだもの。)
横ではフセも同じような視線を
男に投げていた。
自身が名乗っていないことに、
ようやく気付いたらしいその男は、
「あ、ごめんごめん、俺は三好善一、私立探偵だよ。」
と楽しそうに自己紹介した。
「・・・何のご用ですか?」
いや、聞かなくても分かっている。
小早川の件に違いない。
親が探偵を雇ったということは、
学校でも囁かれていたのだから。
そして三好探偵は、予想通り
「ああ、少し前に此処で起きた事件に
ついて少しばかり聴き取り調査をね。
怪事件だよねえ、発狂した少年、
現場には凶器なし、
目撃者がいたのに犯人は見つからず、
被害者の足には謎の紋様のような痣。
まあ、仕事とはいえ、
未だに病院のベットの上で
いつ来るか分からない
地獄の痛みに怯えて、
まともに会話すらできない、
哀れなイケメン君のためだ。
しっかりやらないとね。」
と笑顔で切り出した。
「君は特別だ。
いつも一緒にいて、
何せ目撃者で、
おまけに・・・別の目撃者、
えーと、
一条君と今川君とか言ったかな。
彼らは君が小早川君をあんな風にしたと
証言したそうだね。
つまり容疑者でもあるわけだ。」
僕は何を言っているのか、
というような顔をする。
「警察の人が調べても、
凶器なんて見つからなかったし、
そもそも被害者の小早川だって、
怪我なんか
してないらしいじゃないですか。
もう勘弁して下さい、
僕があいつといつも一緒にいたのは、
あいつが僕を
虐めの標的にしてたからなんです。
正直あいつの事は
思い出すのも嫌なんです。」
と僕はぶっきらぼうに吐き捨てた。
嘘はついていない。実際そうだ。
小早川は怪我なんてしていない
(痛みと衝撃を『貼り付けた』から、
僕が能力を解除するまで、
彼は肉体が切断される
痛みを再生され続け、
延々と感じていたはずだが)し、
後半も全て真実だ。
あいつに虐められた記憶
は思い出すだけで
軽く吐き気を覚える。
確か、誰かに嘘を信じさせるのに
効果的な方法は、
適度に真実を織り交ぜる事というのを
聞いたことがあるが、
どうやら本当なのかもしれない。
「・・・なるほどね。
どうやら君の話に
嘘はないみたいだね。」
探偵は納得したようで、
目を瞑ってウンウンと頷いた。
「うん、もうOKだよ、ありがとう。」
どうやら尋問は終了したようだ。
僕が席を立ち、部屋から出ようとした
その時、探偵は徐に口を開き、僕にある質問をした。
「あ、最後に一つ。
此処に来る途中、
女の子とぶつからなかった?
鹿撃帽かぶってる子。」
勿論僕にはその記憶があった。
「ああ、はい。」と答えると、
探偵は
「やっぱり~!
ごめんね、今日姪を連れてきててさ、
どっかいっちゃったと思ってたら、
校舎内徘徊なんてしてたのか~!
まあ、トイレに行くっていってから
戻ってきてないから、
大方道に迷ったんだろうな。」
と大声で教えてくれた。
なるほど、あの子はこの人の姪か。
しかし仕事に姪を連れてくる意味とは?
「は、はあ・・・。」
僕は反応に困ったまま、応接間を出た。
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誰もいなくなった応接間で、
三好はポツリと呟いた。
「よし、あいつこれで全員に触れたな。
もうあいつ犯人突き止めてるな。」
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出口で待機していた教頭先生と
二言三言話したのち、
僕は自教室に戻るべく足を動かした。
そして20歩くらい言ったところで、
突然僕の前を人に立ちふさがった。
その人は、さっきの女の子だった。
ただ、少し違うのは、
寝ていたはずの鹿撃帽についたうさ耳が
重力に逆らって、
ピンとたっていた。
彼女は鼻同士がぶつかりそうな
超至近距離で、
僕のことをじっと見つめている。
「・・・あの、なんですか・・・?」
僕は空気に耐えきれずに
また、彼女の奇行の意図を探るべく
なんとか口を開く。
するとその大人しそうな外見を
裏切るように、
活発な口調の言葉が飛び出した。
「お前義経赤斗だよな?
ようやく見つけたと思ったら
すぐどっか行っちまうんだから、
何事かと思ったら、
三好のおっさんのとこか。
はん、相変わらず事情聴取なんか
しょーもないことやってやがるぜ。
僕ならそんなのやらなくても
一発だってのにさ。
なあ、お前ちょっとこいよ。
そんで話聞かせてもらうぜ。
だってこの事件の犯人お前だろ。
あと、そこの犬も一緒にこい。」
この時、僕は3つの衝撃を受けた。
『名乗っていない名を当てられた衝撃』
『僕が犯人だと一瞬で見抜かれた衝撃』
そして何より、
『見えないはずのフセに
話しかけた衝撃』である。
僕は激しく動揺しながらも、
何とか口を開く。
「き・・・君は一体・・・。」
何者、と言う前に
向こうがまくし立てる。
「え?みてわかんないわけ?鈍いなあ。
『僕』の名はピノで、
『私』の名前は斯波葉月。
シンジュウ探偵ってやつさ。
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聞かせてもらいたいな。」
そう言って『彼女』とおそらく『彼』
は、柔らかく微笑んだ。
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