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第1章
<62話>不触の剣
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「結城?
ああ知ってるよ、知り合いの部下だ。
この前も遊びに来たばっかりだよ。
そうか、あいつが潜入捜査に・・・。」
電話口で、
三好さんは楽しそうにそう話す。
「そうですか。
ところで、
『暗殺者』というコードネームの、
シンジュウをご存知ですか?
『透明になる』能力らしいんですが。」
考えるように沈黙した後、
「いや、知らないな。
悪いな、力になれなくて。」
と三好さんは続ける。
僕は簡単にお礼を言って電話を切った。
時刻は18時。
家に帰った僕は、
まず先生の話が事実かどうかを、
確認することにした。
あの三好さんの話し方なら、
信用してもいいだろう。
それよりも、
あの転校生、上杉エリナの正体の方が、
僕の心に重くのしかかっていた。
いきなり話しかけてくれたのも、
親しくしてくれたのも、全部演技だった。
シンジュウは見えなかったけれど、
透明になるという
加護を使って見えなくなっている、
というのが妥当だろう。
悲しむな、悲しむなよ、僕。
仕方のないことじゃないか、
人生こんなこといっぱいあるぞ。
沈む心を奮い立たせて、
僕はもらったメモに書かれた番号に、
ダイヤルする。
ほどなくして、相手は出た。
「やあ、信用してくれたみたいだね。
それじゃ、作戦会議と行こうか。」
結城先生は、溌剌とそう言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まずは、気絶させて無力化する。
そして、
周りに被害の出ない場所に運んだ後、
説得してみる。」
先生の意外な提案に、僕は驚く。
「凄腕の殺し屋なんですよね?
そんなもの応じてくれるんでしょうか?」
先生は苦々しい笑い声を出す。
「望みが薄いのはわかってるんだけどね、
平和的に解決できるなら、
その方がいいじゃない。」
成る程、僕達は失敗した時の
保険というわけか。
割と雑な作戦だけど、
まあ、現実はこんなもんなんだろう。
しかし、ここで一つ問題がある。
「上杉は、『透明になる』能力を
持っているんですよね?
その力を使われたら、
あっさり逃げられるのでは?」
「その心配は無い。
透明になると言っても、
体温まで消せるわけじゃ無いからね、
サーモグラフィー機能のついた、
ゴーグルを用意してある。」
流石は警察、布石は万全のようだ。
あとは僕達が、この人を、
信用できるかどうか。
「決行は、次の月曜日。
細かい時間なんかは、また送るよ。
それじゃ、今日はこれで・・・。」
電話は切れた。
僕はベットに横になる。
さて、どうしたもんか・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
来たる月曜日、
僕がいつものように登校すると、
すぐにエリナは僕のそばに来た。
「ねえねえ、義経クン!
この前出た作文のシュクダイ、
手伝ってくれマセンカ?
私日本語カケナイ・・・。」
「え、あ、うん、い、いよ。」
今一度じっくりと見てみたが、
やっぱりシンジュウは見当たらない。
もし、間違えていたら・・・。
落ち着け、平静だ、平静。
ここで僕が怪しまれたら、
先生の計画はもれなくパーだ。
『おい、赤斗、
ちょっと話しておきたいことが・・・。』
「黙って僕の心でも覗いてろ。」
『なんだよそれ・・・。』
「・・・何ブツブツ言ってるんデスカ?」
「い、いやぁ、何も!?」
するとここで、
クラスの女子の1人が上杉に話しかけた。
「上杉さん。
木曽先生が職員室に来てって。」
その声で、上杉は入り口の方へ駆けていく。
文庫本でも読もうかと取り出したけど、
緊張でロクに進まず、諦めた。
果たして、これでいいのかどうか。
放課後、
先生は作戦通りに、
理由をつけて上杉を音楽室に呼び出した。
僕は予め隠れていた隣の倉庫部屋で、
2人の行方を見守る。
先生の部下の人達は、
上杉が逃走した時のために、
周りを固めているのだそうだ。
おそらく、合図で突入、
といった言ったところなのだろう。
「・・・あの、何でサンスウのホシューを
音楽室でやるデスカ?
わざわざここにいた人まで、
居なくなってモラッテ。」
「ああ、それはね。」
眼鏡をかけた先生は慣れた手つきで、
内ポケットに手を突っ込み、
拳銃を彼女に突き付けた。。
「ここが一番、音が漏れにくいからな、
『暗殺者』。」
次の瞬間、
先生は驚愕の表情の上杉に向けて発砲した。
放たれた玉は、
上杉の太腿に当たり、彼女は床に倒れ込む。
「その弾は、
あるシンジュウ能力者の協力のもと作った、
特製の麻酔弾だ。
しばらくは動けない。
無駄な抵抗はやめるんだな。」
そう言って首を締めだした。
上杉が苦しそうな声を上げるが、
先生はお構いなしに締め続ける。
「ちょ、ちょっと、ストップ!」
僕が飛び出すのと、
上杉が暴れるのをやめ、
がっくりと動かなくなるのは、
ほぼ同時だった。
先生は上杉に手錠をかけながら、
笑顔を僕に向ける。
「大丈夫、死んじゃいない。
気絶させただけだ。
ほら、よくみてご覧。」
視線を下に落とすと、
確かに、息をしていることは確認できた。
麻酔弾というのも本当らしく、
彼女の太腿には、
針のようなものが刺さっていた。
「それより、
このままじゃいくら何でもまずい。
準備室の方に移動させるから、
ちょっと手伝って!」
そう言って手招きする先生に、
僕は
「わかりました。」
と一言だけ言って先生に近づいた。
「・・・ところで、義経くん。
これは、どう言う意味かな?」
先生は、僕に向かって言った。
『世離』の切っ先を自分に突きつける、
僕に向かって。
「まさかとは思うけど、疑ってるのかい?
俺は確かに君の味方だぜ?
ワンちゃんも、何か言ってやってくれよ。」
「今、フセが見えてるんですよね?」
僕は先生の目をじっと見つめたまま、
ポケットからある物を取り出した。
それは、
先生が持っていたのと同じ、白い箱。
「先生が持ってたコンタクト、
別のにすり替えておいたんです。
先生が今つけてるのは、
何の変哲もない普通の物の筈ですが?」
『赤斗、大丈夫。
この子、しばらくは起きないぜ。』
フセのその一言に、
僕はホッと息をついてから、
再び先生ににじり寄った。
「さて、質問に答えて下さい。
アンタ誰だ。」
いや、聞かなくても答えはわかっていた。
周りにシンジュウの類はいない、
しかしシンジュウは見えている。
ならば自ずと答えは1つ。
突如、先生が僕に銃口を向ける。
僕は咄嗟に体を逸らし、その直後、発砲音。
尻餅をつきそうになるのをなんとか踏ん張り
僕は刀を薙ぐ。
「喰らえ!」
『世離』の刀身は、
先生の身体を横に両断・・・しなかった。
凄まじい衝撃と共に、
『世離』がはじき返される。
🗒肉体に食い込まなければ、
非物質化は発動しない。
「大人シク従ってオケば、
もう少シ長生キできタモのを・・・。」
この口調、アイツと一緒!
先生の拳が迫ってくる。
僕はなんとか避けると、
上杉を引きずりながら距離をとる。
「言い訳もせずに攻撃するとは、
随分と頭に血が昇ってますね、」
挑発するようにそう言うけれど、
内心はかなり焦っていた。
これ、夏休みと一緒じゃないか!
「痛ってエナ・・・。」
先生だった男が顔を歪ませている間に、
彼の皮膚を、
何か銀色のものが覆っていく。
『くそ、またあの時みたいに、
物理攻撃無効のタイプか?』
「ありがたいことにそうじゃないっぽい。
けど、尋常じゃなく硬い・・・。」
痺れる手を握り締めながら、僕は唸る。
『自分の皮膚を、
鋼鉄みたいにしたのか!』
「スライムの次はアイ◯ンマンか。
勘弁してくれよ全く・・・!」
僕は刀を拾うと、上杉の前に立ち塞がる。
「その刀なラ、キカないぞ?
今の俺の身体ハ、まサシく鎧ダ。」
「だろうね。」
僕はそのまま奴に突っ込む。
奴の拳を掻い潜り、狙うは・・・!
「ここだ!」
僕は奴の右膝に向けて刀を突き出す。
鎧には、人体の構造上、
どうしても鉄で覆えないところがある。
早い話が、関節だ!
倒せなくったっていい、
動きさえ封じれば、
ひとまず上杉を逃がせる。
あとはこの近くにいるであろう
北畠姉弟の力を借りて、
炎や氷で攻撃してもらうのだ。
物理攻撃しかない僕じゃ、
こいつとは相性が悪すぎる!
「・・・だから、一刻も早く、
距離を取りたいのに!」
変わらず手に伝わってきた固さに、
僕は舌打ちをする。
何で関節までこんなに硬いのに、
スムーズに動けんだよ!
一瞬たじろいだ僕とフセに、
奴は容赦なく鋭い蹴りを放つ。
両方仲良く吹っ飛ばされ、
窓を突き破って中庭に落下した。
残された上杉を思い出し、青ざめたが、
幸か不幸か、上杉には目もくれず、
奴もすぐに窓から飛び降りる。
一瞬ホッとしてから、
僕達は痛み顔を歪ませつつ、逃げ出した。
「もともと、
無関係な上杉に注意を向けさせて、
無警戒な僕らを奇襲する算段だったのか!
ていうか、
なんであんな鉄の塊みたいな身体なのに、
普通に動けるんだよ!」
『覆ってるんじゃなくて、
多分身体の構成物質そのものが、
鉄になってるんだ!』
「刃が通らないんじゃ、勝ち目ないぞ!」
路地裏まで逃げた時、
僕の右耳の数ミリ先を通り過ぎた何かが、
壁に着弾した。
小さな弾痕ができる壁。
「・・・今のどっち!?」
『実弾。』
「くそったれ!」
汚い言葉を吐きながら、
僕は後ろを振り返る。
奴はニヤニヤ笑いながら、
挑発するようにくいくいと指を曲げる。
僕は『世離』を構え、
再び奴に向けて突っ込んでいく。
「学習能力ノ無いガキダ。」
奴が突き出した拳を、
僕はひたすら、避ける、避ける、避ける。
そのうちの何発かが、僕の頬をかすめる。
当たった時のことなんて、
想像もしたくない。
狙うは一点!
「ここなら、どうだ!」
僕は奴の右目に向かって、剣を突き出す。
しかし、僕の手に伝わってきたのは、
硬い感触だった。
「いい加減にしろ・・・!」
すかさず奴が繰り出してきた右ストレートを
僕は剣で受け止める。
しかし、続け様に左。
脇腹に直撃、鈍痛、再び吹っ飛ぶ僕。
「諦めロ、お前ハ私ニハ勝てナい。
お前ヲ殺し、私ハ、
あの方ニ認メていただくノダ!」
荒い呼吸をする僕を嘲笑うように、
奴は語りかける。
やっぱり外からじゃ、
あいつを傷つけることはできない。
やっぱり、アレしかない。
(体力的に、1日1回しか使えないし、
狙い通りのところに、
発生させられる保証もない。
だけど、うまく機能すれば、
形勢がひっくり返るかも。)
どうせこのままなら、
撲殺されるのも時間の問題なんだ、
死ぬならせめて、切り札を切ってから!
『おい赤斗、お前!』
フセが怒鳴るのと同時に、
「終わリだ!」
僕の目の前で、奴が拳を振り上げる。
頼む、うまくいってくれよ!
「ねじれろ!」
僕が叫んだ瞬間、奴の左腕が宙に舞った。
「な!?」
絶対の防御力を誇る自身の体が、
いきなり切断されたのを見て、
奴は動きを止めた。
逃すな、今だ!
「がああああああ!!」
僕は絶叫と共に、
刀を奴の左腕の切断面へと押し込んだ。
一瞬気持ちの悪い感触が伝わるが、
すぐに消える。
「あ、カ・・・。」
奴は地面に倒れ込み、
ブクブクと泡を吹いている。
刀の長さ的に、
おそらく大動脈や肺が非物質化され、
要をなさなくなっているのだろう。
かすれた声を精一杯だしながら、
地面をのたうちまわっている。
僕は息を切らしながら、
引きずるように、
その身を奴の方へ持っていく。
「ナ、何故だ!?
おマ・・・刀・・・ノカ・・・二・・・、
かスリ・・・できな・・・。」
「これは斬撃じゃない。」
甚右衛門との鍛錬の中で、
僕は彼に剣術を習うと同時に、
本来の力、次元の力を、
どうにか憑依なしで使う方法は無いか、
模索していたのだ。
その結果、夏休みにフセが使った、
次元を歪めて対象をねじ切る技も、
不完全ながら、
使うことができるようになった。
ただ、いかんせん扱いがピーキーすぎて、
自分を切らないようにするのが精一杯、
周囲に人や動物がいる場合なんか、
怖くてとても使えない。
倒れた奴の前で、
僕が息を切らしながら棒立ちしていると、
暗闇から、
「ストップ。
そいつは俺が預かる。」
という声がした。
声のした方を見ると、スーツ姿の眼鏡の男。
頭の上にはカエルが乗っている。
「俺は京極翔也、
三好が言ってた『知り合い』さ。
今まさに仕事してるはずの
部下の死体が発見されて、
大慌てで来てみれば・・・。
おい、心配すんな、俺は敵じゃない。
その刀下ろせ。」
「・・・。」
僕はそのまま構え続ける。
ついさっき裏切られたばっかりで、
信じろってのが無理な話だ。
京極と名乗ったその人は、
倒れている奴を一瞥し、ため息をつく。
「余計なことしてくれやがって、
これじゃ信憑性皆無じゃねーか。」
『・・・ひょっとしてショウちゃん?』
やおら発言したフセに、
京極さんは決まり悪そうな顔をする。
「ショウちゃんはやめてくれませんか?
もうすぐ40なんですから。」
「・・・知り合い?」
『赤斗、安心しな。
ショウちゃんは、
私が良太郎に憑いていた時に出会った、
善坊の友人でね、
私達をずっと支援してくれていたんだよ。』
嬉しそうに発言するフセを見て、
僕は刀を下ろす。
「どうも、ありがとう。
さて・・・。」
京極さんは懐から3枚の紙を取り出し、
床にばら撒く。
次の瞬間、
それは燃え盛る3頭の犬に変わった。
「監視してろ。
許可なく動いたら、殺せ。」
淡々とそう言い放ってから、
京極さんは再び僕の方を向く。
「ありがとう、後は俺達が連行する。
もうすぐ部下が・・・。」
「先輩!」
声がした方を向くと、
そこには京極さんの部下らしき、
コートを羽織った男性と、
それに連れられた・・・。
「上・・・杉!?」
驚く僕の方に、
彼女は猛スピードで飛びついてきた。
「良かった、良かった!
生きてたんデスネ!!」
ワンワン泣きながら抱きつかれて、
一気に心拍数が早くなる。
ヤバイヤバイ、
この刺激は僕には強すぎる!
「あ、あり、ありあとう!
しん・・・ぱいしてくれて!」
僕は大慌てで彼女をひっぺがす。
あと2秒遅かったら、
高血圧でぶっ倒れてたかも・・・。
「加藤!なんで民間人を連れてきた!?」
「すみません!!
でも、彼を探すっていって聞かなくて。
解毒剤を打った瞬間に、
飛び出していっちゃって・・・。」
「お前、
情報統制も俺達の任務の1つなんだぞ!」
横でガミガミ怒られる加藤さん。
僕がホッとため息をついた時、
ふっと周りが暗くなった。
後ろを見ると、僕と上杉は影の中。
「!?」
『赤斗君、奴が起き上がっています!』
蛙の叫び声に、その影の主は、
起き上がり、犬に噛みつかれながら、
最後の力で
拳を振り上げた奴だということに気づく。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
奴の拳が、
僕たちに向けて振り下ろされる。
京極さんも呪符を投げるが、間に合わない。
僕は思わず目を瞑った。
しかし、一向に拳は降ってこず、
かわりに聞こえる、呻き声。
恐る恐る目を開けると、
そこには、必死に喉を掻き毟る奴がいた。
次の瞬間、
「おぼ。」
という奇妙な声とともに、
奴の喉は、切り裂かれた。
「・・・!!」
声も出せない僕の前に、
何かが落ちる音、そして奴が倒れる。
血溜まりの中に倒れる奴の死体。
そして周りには、血塗られたメス。
これが奴の喉を切り裂いたっていうのか!?
「キャァァァァァ!!!」
上杉の甲高い悲鳴を皮切りに、
警察官2人が一斉に身構える。
「赤斗君、その子を守れ!
加藤、警戒しろ!
何者かの襲撃を受けているぞ!」
京極さんが叫ぶ。
しかし、追撃はこないままだ。
すると、突然、
「あれ!」
加藤さんが指さした先には、
一枚の紙が落ちていた。
鉄の匂いのする、赤色の文字が書かれた。
「You are next!」
ああ知ってるよ、知り合いの部下だ。
この前も遊びに来たばっかりだよ。
そうか、あいつが潜入捜査に・・・。」
電話口で、
三好さんは楽しそうにそう話す。
「そうですか。
ところで、
『暗殺者』というコードネームの、
シンジュウをご存知ですか?
『透明になる』能力らしいんですが。」
考えるように沈黙した後、
「いや、知らないな。
悪いな、力になれなくて。」
と三好さんは続ける。
僕は簡単にお礼を言って電話を切った。
時刻は18時。
家に帰った僕は、
まず先生の話が事実かどうかを、
確認することにした。
あの三好さんの話し方なら、
信用してもいいだろう。
それよりも、
あの転校生、上杉エリナの正体の方が、
僕の心に重くのしかかっていた。
いきなり話しかけてくれたのも、
親しくしてくれたのも、全部演技だった。
シンジュウは見えなかったけれど、
透明になるという
加護を使って見えなくなっている、
というのが妥当だろう。
悲しむな、悲しむなよ、僕。
仕方のないことじゃないか、
人生こんなこといっぱいあるぞ。
沈む心を奮い立たせて、
僕はもらったメモに書かれた番号に、
ダイヤルする。
ほどなくして、相手は出た。
「やあ、信用してくれたみたいだね。
それじゃ、作戦会議と行こうか。」
結城先生は、溌剌とそう言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まずは、気絶させて無力化する。
そして、
周りに被害の出ない場所に運んだ後、
説得してみる。」
先生の意外な提案に、僕は驚く。
「凄腕の殺し屋なんですよね?
そんなもの応じてくれるんでしょうか?」
先生は苦々しい笑い声を出す。
「望みが薄いのはわかってるんだけどね、
平和的に解決できるなら、
その方がいいじゃない。」
成る程、僕達は失敗した時の
保険というわけか。
割と雑な作戦だけど、
まあ、現実はこんなもんなんだろう。
しかし、ここで一つ問題がある。
「上杉は、『透明になる』能力を
持っているんですよね?
その力を使われたら、
あっさり逃げられるのでは?」
「その心配は無い。
透明になると言っても、
体温まで消せるわけじゃ無いからね、
サーモグラフィー機能のついた、
ゴーグルを用意してある。」
流石は警察、布石は万全のようだ。
あとは僕達が、この人を、
信用できるかどうか。
「決行は、次の月曜日。
細かい時間なんかは、また送るよ。
それじゃ、今日はこれで・・・。」
電話は切れた。
僕はベットに横になる。
さて、どうしたもんか・・・。
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来たる月曜日、
僕がいつものように登校すると、
すぐにエリナは僕のそばに来た。
「ねえねえ、義経クン!
この前出た作文のシュクダイ、
手伝ってくれマセンカ?
私日本語カケナイ・・・。」
「え、あ、うん、い、いよ。」
今一度じっくりと見てみたが、
やっぱりシンジュウは見当たらない。
もし、間違えていたら・・・。
落ち着け、平静だ、平静。
ここで僕が怪しまれたら、
先生の計画はもれなくパーだ。
『おい、赤斗、
ちょっと話しておきたいことが・・・。』
「黙って僕の心でも覗いてろ。」
『なんだよそれ・・・。』
「・・・何ブツブツ言ってるんデスカ?」
「い、いやぁ、何も!?」
するとここで、
クラスの女子の1人が上杉に話しかけた。
「上杉さん。
木曽先生が職員室に来てって。」
その声で、上杉は入り口の方へ駆けていく。
文庫本でも読もうかと取り出したけど、
緊張でロクに進まず、諦めた。
果たして、これでいいのかどうか。
放課後、
先生は作戦通りに、
理由をつけて上杉を音楽室に呼び出した。
僕は予め隠れていた隣の倉庫部屋で、
2人の行方を見守る。
先生の部下の人達は、
上杉が逃走した時のために、
周りを固めているのだそうだ。
おそらく、合図で突入、
といった言ったところなのだろう。
「・・・あの、何でサンスウのホシューを
音楽室でやるデスカ?
わざわざここにいた人まで、
居なくなってモラッテ。」
「ああ、それはね。」
眼鏡をかけた先生は慣れた手つきで、
内ポケットに手を突っ込み、
拳銃を彼女に突き付けた。。
「ここが一番、音が漏れにくいからな、
『暗殺者』。」
次の瞬間、
先生は驚愕の表情の上杉に向けて発砲した。
放たれた玉は、
上杉の太腿に当たり、彼女は床に倒れ込む。
「その弾は、
あるシンジュウ能力者の協力のもと作った、
特製の麻酔弾だ。
しばらくは動けない。
無駄な抵抗はやめるんだな。」
そう言って首を締めだした。
上杉が苦しそうな声を上げるが、
先生はお構いなしに締め続ける。
「ちょ、ちょっと、ストップ!」
僕が飛び出すのと、
上杉が暴れるのをやめ、
がっくりと動かなくなるのは、
ほぼ同時だった。
先生は上杉に手錠をかけながら、
笑顔を僕に向ける。
「大丈夫、死んじゃいない。
気絶させただけだ。
ほら、よくみてご覧。」
視線を下に落とすと、
確かに、息をしていることは確認できた。
麻酔弾というのも本当らしく、
彼女の太腿には、
針のようなものが刺さっていた。
「それより、
このままじゃいくら何でもまずい。
準備室の方に移動させるから、
ちょっと手伝って!」
そう言って手招きする先生に、
僕は
「わかりました。」
と一言だけ言って先生に近づいた。
「・・・ところで、義経くん。
これは、どう言う意味かな?」
先生は、僕に向かって言った。
『世離』の切っ先を自分に突きつける、
僕に向かって。
「まさかとは思うけど、疑ってるのかい?
俺は確かに君の味方だぜ?
ワンちゃんも、何か言ってやってくれよ。」
「今、フセが見えてるんですよね?」
僕は先生の目をじっと見つめたまま、
ポケットからある物を取り出した。
それは、
先生が持っていたのと同じ、白い箱。
「先生が持ってたコンタクト、
別のにすり替えておいたんです。
先生が今つけてるのは、
何の変哲もない普通の物の筈ですが?」
『赤斗、大丈夫。
この子、しばらくは起きないぜ。』
フセのその一言に、
僕はホッと息をついてから、
再び先生ににじり寄った。
「さて、質問に答えて下さい。
アンタ誰だ。」
いや、聞かなくても答えはわかっていた。
周りにシンジュウの類はいない、
しかしシンジュウは見えている。
ならば自ずと答えは1つ。
突如、先生が僕に銃口を向ける。
僕は咄嗟に体を逸らし、その直後、発砲音。
尻餅をつきそうになるのをなんとか踏ん張り
僕は刀を薙ぐ。
「喰らえ!」
『世離』の刀身は、
先生の身体を横に両断・・・しなかった。
凄まじい衝撃と共に、
『世離』がはじき返される。
🗒肉体に食い込まなければ、
非物質化は発動しない。
「大人シク従ってオケば、
もう少シ長生キできタモのを・・・。」
この口調、アイツと一緒!
先生の拳が迫ってくる。
僕はなんとか避けると、
上杉を引きずりながら距離をとる。
「言い訳もせずに攻撃するとは、
随分と頭に血が昇ってますね、」
挑発するようにそう言うけれど、
内心はかなり焦っていた。
これ、夏休みと一緒じゃないか!
「痛ってエナ・・・。」
先生だった男が顔を歪ませている間に、
彼の皮膚を、
何か銀色のものが覆っていく。
『くそ、またあの時みたいに、
物理攻撃無効のタイプか?』
「ありがたいことにそうじゃないっぽい。
けど、尋常じゃなく硬い・・・。」
痺れる手を握り締めながら、僕は唸る。
『自分の皮膚を、
鋼鉄みたいにしたのか!』
「スライムの次はアイ◯ンマンか。
勘弁してくれよ全く・・・!」
僕は刀を拾うと、上杉の前に立ち塞がる。
「その刀なラ、キカないぞ?
今の俺の身体ハ、まサシく鎧ダ。」
「だろうね。」
僕はそのまま奴に突っ込む。
奴の拳を掻い潜り、狙うは・・・!
「ここだ!」
僕は奴の右膝に向けて刀を突き出す。
鎧には、人体の構造上、
どうしても鉄で覆えないところがある。
早い話が、関節だ!
倒せなくったっていい、
動きさえ封じれば、
ひとまず上杉を逃がせる。
あとはこの近くにいるであろう
北畠姉弟の力を借りて、
炎や氷で攻撃してもらうのだ。
物理攻撃しかない僕じゃ、
こいつとは相性が悪すぎる!
「・・・だから、一刻も早く、
距離を取りたいのに!」
変わらず手に伝わってきた固さに、
僕は舌打ちをする。
何で関節までこんなに硬いのに、
スムーズに動けんだよ!
一瞬たじろいだ僕とフセに、
奴は容赦なく鋭い蹴りを放つ。
両方仲良く吹っ飛ばされ、
窓を突き破って中庭に落下した。
残された上杉を思い出し、青ざめたが、
幸か不幸か、上杉には目もくれず、
奴もすぐに窓から飛び降りる。
一瞬ホッとしてから、
僕達は痛み顔を歪ませつつ、逃げ出した。
「もともと、
無関係な上杉に注意を向けさせて、
無警戒な僕らを奇襲する算段だったのか!
ていうか、
なんであんな鉄の塊みたいな身体なのに、
普通に動けるんだよ!」
『覆ってるんじゃなくて、
多分身体の構成物質そのものが、
鉄になってるんだ!』
「刃が通らないんじゃ、勝ち目ないぞ!」
路地裏まで逃げた時、
僕の右耳の数ミリ先を通り過ぎた何かが、
壁に着弾した。
小さな弾痕ができる壁。
「・・・今のどっち!?」
『実弾。』
「くそったれ!」
汚い言葉を吐きながら、
僕は後ろを振り返る。
奴はニヤニヤ笑いながら、
挑発するようにくいくいと指を曲げる。
僕は『世離』を構え、
再び奴に向けて突っ込んでいく。
「学習能力ノ無いガキダ。」
奴が突き出した拳を、
僕はひたすら、避ける、避ける、避ける。
そのうちの何発かが、僕の頬をかすめる。
当たった時のことなんて、
想像もしたくない。
狙うは一点!
「ここなら、どうだ!」
僕は奴の右目に向かって、剣を突き出す。
しかし、僕の手に伝わってきたのは、
硬い感触だった。
「いい加減にしろ・・・!」
すかさず奴が繰り出してきた右ストレートを
僕は剣で受け止める。
しかし、続け様に左。
脇腹に直撃、鈍痛、再び吹っ飛ぶ僕。
「諦めロ、お前ハ私ニハ勝てナい。
お前ヲ殺し、私ハ、
あの方ニ認メていただくノダ!」
荒い呼吸をする僕を嘲笑うように、
奴は語りかける。
やっぱり外からじゃ、
あいつを傷つけることはできない。
やっぱり、アレしかない。
(体力的に、1日1回しか使えないし、
狙い通りのところに、
発生させられる保証もない。
だけど、うまく機能すれば、
形勢がひっくり返るかも。)
どうせこのままなら、
撲殺されるのも時間の問題なんだ、
死ぬならせめて、切り札を切ってから!
『おい赤斗、お前!』
フセが怒鳴るのと同時に、
「終わリだ!」
僕の目の前で、奴が拳を振り上げる。
頼む、うまくいってくれよ!
「ねじれろ!」
僕が叫んだ瞬間、奴の左腕が宙に舞った。
「な!?」
絶対の防御力を誇る自身の体が、
いきなり切断されたのを見て、
奴は動きを止めた。
逃すな、今だ!
「がああああああ!!」
僕は絶叫と共に、
刀を奴の左腕の切断面へと押し込んだ。
一瞬気持ちの悪い感触が伝わるが、
すぐに消える。
「あ、カ・・・。」
奴は地面に倒れ込み、
ブクブクと泡を吹いている。
刀の長さ的に、
おそらく大動脈や肺が非物質化され、
要をなさなくなっているのだろう。
かすれた声を精一杯だしながら、
地面をのたうちまわっている。
僕は息を切らしながら、
引きずるように、
その身を奴の方へ持っていく。
「ナ、何故だ!?
おマ・・・刀・・・ノカ・・・二・・・、
かスリ・・・できな・・・。」
「これは斬撃じゃない。」
甚右衛門との鍛錬の中で、
僕は彼に剣術を習うと同時に、
本来の力、次元の力を、
どうにか憑依なしで使う方法は無いか、
模索していたのだ。
その結果、夏休みにフセが使った、
次元を歪めて対象をねじ切る技も、
不完全ながら、
使うことができるようになった。
ただ、いかんせん扱いがピーキーすぎて、
自分を切らないようにするのが精一杯、
周囲に人や動物がいる場合なんか、
怖くてとても使えない。
倒れた奴の前で、
僕が息を切らしながら棒立ちしていると、
暗闇から、
「ストップ。
そいつは俺が預かる。」
という声がした。
声のした方を見ると、スーツ姿の眼鏡の男。
頭の上にはカエルが乗っている。
「俺は京極翔也、
三好が言ってた『知り合い』さ。
今まさに仕事してるはずの
部下の死体が発見されて、
大慌てで来てみれば・・・。
おい、心配すんな、俺は敵じゃない。
その刀下ろせ。」
「・・・。」
僕はそのまま構え続ける。
ついさっき裏切られたばっかりで、
信じろってのが無理な話だ。
京極と名乗ったその人は、
倒れている奴を一瞥し、ため息をつく。
「余計なことしてくれやがって、
これじゃ信憑性皆無じゃねーか。」
『・・・ひょっとしてショウちゃん?』
やおら発言したフセに、
京極さんは決まり悪そうな顔をする。
「ショウちゃんはやめてくれませんか?
もうすぐ40なんですから。」
「・・・知り合い?」
『赤斗、安心しな。
ショウちゃんは、
私が良太郎に憑いていた時に出会った、
善坊の友人でね、
私達をずっと支援してくれていたんだよ。』
嬉しそうに発言するフセを見て、
僕は刀を下ろす。
「どうも、ありがとう。
さて・・・。」
京極さんは懐から3枚の紙を取り出し、
床にばら撒く。
次の瞬間、
それは燃え盛る3頭の犬に変わった。
「監視してろ。
許可なく動いたら、殺せ。」
淡々とそう言い放ってから、
京極さんは再び僕の方を向く。
「ありがとう、後は俺達が連行する。
もうすぐ部下が・・・。」
「先輩!」
声がした方を向くと、
そこには京極さんの部下らしき、
コートを羽織った男性と、
それに連れられた・・・。
「上・・・杉!?」
驚く僕の方に、
彼女は猛スピードで飛びついてきた。
「良かった、良かった!
生きてたんデスネ!!」
ワンワン泣きながら抱きつかれて、
一気に心拍数が早くなる。
ヤバイヤバイ、
この刺激は僕には強すぎる!
「あ、あり、ありあとう!
しん・・・ぱいしてくれて!」
僕は大慌てで彼女をひっぺがす。
あと2秒遅かったら、
高血圧でぶっ倒れてたかも・・・。
「加藤!なんで民間人を連れてきた!?」
「すみません!!
でも、彼を探すっていって聞かなくて。
解毒剤を打った瞬間に、
飛び出していっちゃって・・・。」
「お前、
情報統制も俺達の任務の1つなんだぞ!」
横でガミガミ怒られる加藤さん。
僕がホッとため息をついた時、
ふっと周りが暗くなった。
後ろを見ると、僕と上杉は影の中。
「!?」
『赤斗君、奴が起き上がっています!』
蛙の叫び声に、その影の主は、
起き上がり、犬に噛みつかれながら、
最後の力で
拳を振り上げた奴だということに気づく。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
奴の拳が、
僕たちに向けて振り下ろされる。
京極さんも呪符を投げるが、間に合わない。
僕は思わず目を瞑った。
しかし、一向に拳は降ってこず、
かわりに聞こえる、呻き声。
恐る恐る目を開けると、
そこには、必死に喉を掻き毟る奴がいた。
次の瞬間、
「おぼ。」
という奇妙な声とともに、
奴の喉は、切り裂かれた。
「・・・!!」
声も出せない僕の前に、
何かが落ちる音、そして奴が倒れる。
血溜まりの中に倒れる奴の死体。
そして周りには、血塗られたメス。
これが奴の喉を切り裂いたっていうのか!?
「キャァァァァァ!!!」
上杉の甲高い悲鳴を皮切りに、
警察官2人が一斉に身構える。
「赤斗君、その子を守れ!
加藤、警戒しろ!
何者かの襲撃を受けているぞ!」
京極さんが叫ぶ。
しかし、追撃はこないままだ。
すると、突然、
「あれ!」
加藤さんが指さした先には、
一枚の紙が落ちていた。
鉄の匂いのする、赤色の文字が書かれた。
「You are next!」
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