蠱毒なヒロイン

miyumeri

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おや あんたまたここにきたのかい?
ここは相当な怨みや妬みを持つ者しか入ってこれない魔女の家なんだよ。
なんでそう何度も訪ねて来れるかねぇ。
本当にそんじょそこらの魔女よりタチが悪いさねぇ。

で、今回はどんな毒が欲しいんだい?
あんたの旦那の元婚約者を殺した猛毒かい?
それとも、あんたを脅してきた愛人に使った血を吐いて死ぬ毒かい?
はたまた、旦那にすり寄ったメイドに使った肌が爛れ崩れる毒かい?
あぁ、側妃に使った堕胎させる毒かい?
どの毒もとっても効いただろ?
まぁおかげで、毒を飲まされた者の上質な怨みのこもった魂を
回収させてもらったからね。
こっちとしても、おいしい仕事だったよ。

で?今回は誰に毒を飲ませるんだい?
・・・おやまぁ、旦那に飲ますのかい?
あんたら真実の愛ってやつで結ばれてるんだろ?
その相手に毒飲ませていいのかい?
ひゃひゃひゃ、随分と薄っぺらいもんだねぇ真実の愛ってもんは。
もう旦那に見限られたのかい。
そりゃ、マナーも教養もない 気品も知性も感じない 
あげくに不貞を働く妻なんかいつ捨てられてもおかしくないさ。
ちょっと見た目がいいのだって、老けりゃ二束三文の価値に成り下がるってもんさ。
あんたいいとこ無しだねぇ、ひゃひゃひゃ。

王族は、を受けてるから並大抵の毒じゃ殺す事なんかできやしないよ。
どうしても殺したい?だったら刃物で刺し殺すのが手っ取り早いさね。
まぁ、近衛共がいつも守ってるだろうからねぇ。剣の訓練を励むんだね。
え?すぐ殺したい?わがままだねぇ・・・まぁ、手が無いわけじゃないよ。
だげど、今までみたいに毒飲まされた者の魂を報酬にするんじゃ見合わないねぇ。
追加でなにを対価にもらおうかねぇ。
今まで手にした怨みのこもった魂を全部使わなきゃ作れない毒だからねぇ。
蠱毒こどくって言うんだよ。あの怨魂を毒虫にのり移らせて
小さな甕に詰め込んで殺し合いをさせるのさ。
そして最後に残った1匹の虫の毒腺を煎じて作った毒が
どんな解毒の加護も効かない 最強の毒になるんだよ。
本当は5匹分の魂が欲しいところだが、手持ちは4匹分だからね。
少し効果が弱くなるかもしれないよ。とはいっても解毒できないのは変わりないさ。
ん?もう1匹分の魂を回収させてやるだって?どうするつもりだい?

ははーん、そういうことかい。
しかしいいのかい?あんたのためにいろいろ手を汚してきた実の父親だろ?
そんな男を毒殺するなんて、えらい親不孝な娘だねぇ。
上質な怨みを持たせるためには苦しんで死んでもらわなきゃならないんだよ?
そうだねぇ・・・これがいいかね。
水も食べ物も口にできず、干からびで死ぬ毒だよ。
濃い酒にでも混ぜて飲ませりゃ一発さね。
魂はうちの使い魔にすぐ回収させるから、鮮度は心配ないよ。
回収出来たら、すぐ作り始めるからね。
出来上がりは・・・半月後だね。それぐらいは待つんだね。
その間に処刑されるかもしれない?あんた、いったい何やらかしたんだい。
しょうがないね。あんたには、死ねない呪いまじないを掛けておいてやるよ。
それなら処刑されて首が飛ぼうが、餓死させようと飯を抜かれようが
どうあがいても死にやしない。
客が契約を終わらせる前に死んじまっちゃ商売あがったりだからね。
ほら、これがあんたの父親用の毒だよ。
陰、しっかり回収しておいで。途中で怨みをつまみ食いするんじゃないよ。
質が下がっちまうからね。
その代わりすべてが終わったら、極上の怨を喰わせてやるよ。



陰かい?
おや、おかえり。はやかったねぇ。えらい色が濁っているけど何かあったのかい?
・・・そりゃまたひどい殺しかたしたんだねぇ。
毒飲ませた後に、刃物で体中に穴開けて血抜きするなんて、えらい鬼畜な女だねぇ。
ありゃ悪魔だね。
さぁ、依頼の品を作るとするかね。
この蠱毒の甕を使うのは何十年ぶりかねぇ。
人間って言うのは、どんな時代でも変わらないんだねぇ。
え?あたしも人間だろって?
ひゃひゃひゃ、魔女を人間だと思ってるのかい、おまえ。
あたしら魔女はとっくに人間やめてるよ。
生きる糧は人間の怨。そんな生き物が人間なわけないだろ?
さぁ、無駄口叩いてないで手伝っておくれ。この魂を毒虫に入れこまないと。

さぁ、準備ができた甕の蓋を閉めるよ。
13日間ほっときゃ蠱毒の素の出来上がりさ。
ん?あの女が気になるって?そうさね。蠱毒ができてもそれを受け取りに来れなきゃ
どうにもならないからね・・・そら、カラスにおなり。
その姿であの女の様子を見はってくるんだよ。
なんかあったら戻っておいで。さぁさ、文句言ってないで仕事をおし!



そろそろを甕を開けようかねぇ。
おぉ、出来てるねぇ。この毒虫は・・・ひゃひゃ、あの女の父親だねぇ。
そりゃ、あらゆる手を尽くして娘の悪事の手助けともみ消しをしてきたのに
あっさりと毒の素にされたんだから並々ならぬ怨さねぇ。
おや?甕に怨嗟母心がこびりついているねぇ。こりゃ陰が喜びそうだ。
採っておいてやるかね。
さぁ、この毒腺を取り出して・・・これを入れて煎じれば・・・
ふぅ、うまくいったよ。こりゃどんな加護にも負けない猛毒だ。
陰を使ってあの女を呼び出すかね。



おやおや、あんたボロボロじゃないかい。
地下牢から脱獄してきた?そりゃご苦労なこった。
だが、死なずの呪いまじないを掛けてあるんだからどってことないだろ?
ほら、これが蠱毒だ。どんな加護も効きやしないよ。
飲ませるなり、ぶっかけるなり、好きにおし。体につけばすぐ効果が出始めるから。
でもね、くれぐれも気を付けな。側にいるやつらにも影響が出るからね。
害したくない奴が側にいるときは蓋を開けちゃいけないよ。
出てきた煙に触れただけでも、毒に侵されるからね。
え?皆殺しにしてやる?あんた相変わらず業が深いねぇ。
じゃ、確かに渡したからね。今回は蠱毒に侵された魂たちが報酬だ。
おまけで、あんたの死なずの呪いまじないはそのままにしておいてやるよ。
旦那を殺す前に、あんたがやられちまっちゃ意味がないからね。
陰、ご苦労だが怨魂の回収に行っておいで。おやつにこの怨嗟をやるからさ。
頑張るんだよ、けっけっけっ。



陰はお疲れ様だね。
あの女の事だ、王宮の人間全部を殺るつもりだろうよ。
自分は死なないんだから、お構いなしさね。
こりゃ、対価以上の怨魂が回収できそうだねぇ。楽しみだ。
まぁ陰は大忙しだろうけど、極上の怨嗟母心を喰わせてやったんだから
文句はないだろうさ。
さ、届く怨魂で作る毒でも考えながらトリカブト茶でも飲もうかねぇ。




~魔女新聞を読みながら~
なるほどねぇ、あの女を処刑した後 隣国の王女を嫁にもらう手筈だったんだねぇ。
あの旦那王太子もなかなか業が深い人間だったんだねぇ。
婚姻式後の披露宴で、あの蠱毒をぶちまけたんだね?すごいことやらかすねぇ。
いったい、何人毒されたんだか。こりゃ怨魂、大量だったろうねぇ。ひゃひゃひゃ。



陰かい?お疲れさん。大量に採れたかい?
こりゃまたすごいねぇ・・・あの女は魔王サタンも慄く生き物になっちまったね。
これで、契約は終了だ。いい仕事だったよ。
ん?あの女の呪いまじないを解かないのかって?
あの女は上客だからねぇ。まだまだいろんな人間を怨むだろうよ。
そしたらまた怨魂が手に入る依頼をしてくるはずさ。
そのためにも、呪いまじないはそのままにしておくよ。先行投資ってやつさ。

ところで、あんたはそろそろ消滅したいかい?
あんたの母親側妃はもう蠱毒の素になっちまったんだ。
それに、あの女はこれから死ぬより苦しい未来しかないんだ。復讐は遂げただろ?
あたしが心配?馬鹿を言いでないよ。魔女を心配する奴がどこにいるんだい。
気にせず消滅しちまいな・・・なんだ、ばれてたのかい。
そうさ、あんたのことは浄化させるよ。善良な魔女から浄化の玉を買ったからね。
あんたにそれを埋め込んで、来世はまっとうに生まれてくるんだよ。
こんな薄汚いところにいつまでもいちゃいけないよ。はやく浄化されちまいな。





はぁ、いままでいた奴がいなくなるっているのも寂しいもんだねぇ。
客も来やしないし、トリカブト茶でも飲んでゆっくりしようかね。
ん?誰か来たのかい?
でも、こんなお奇麗な魂はここには来れないはずだけどねぇ。

・・・馬鹿だねぇ、あんたは。こんなとこに来ちゃいけないよ。
さっさと生まれたところに戻りな。は?弟子になりたい?
それなら善良な魔女に手紙を書いてやるからそっちを訪ねな。
いやだ?ここにいる?馬鹿かいおまえは。あたしゃ毒の魔女だよ。
あんたなんか弟子にとっても何にも役にたちゃしないんだ。
ごくつぶしを飼ってやる余裕はないよ。
・・・バカだねぇ。確かに毒は使い方で薬にもなるよ。
だけど、人間たちは助けられたことなんかすぐに忘れて
悪し様にあたしらを罵ってくるんだよ。
お前みたいな人間に、耐えられるわけないじゃないか。
あたしと一緒ならそれでいい?はぁ・・・わかったよ。
ならちゃきちゃき働きな。
毒草の水やりをして、虫小屋に落ち葉を入れておくれ。ほら、さっさとおし!

はぁ、惚れた男の生まれ変わりだと思ってちょっと甘やかしすぎたかね。
ほんとに・・・ばかな子だねぇ。
悔しいから若返りの毒でも飲んでやろうかね?
あの子にも長寿の呪いまじないを掛けなくちゃね。
今度こそ置いて逝かれるのはごめんだからね。








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