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第二十二話 小さな翼のためのミートボール
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雛がスープを飲んでくれたことに安堵したのも束の間、レトの悩みはまだ尽きないようだった。
「スープは飲んでくれるようになったの。でも、固形物は相変わらずで……。このままじゃ、丈夫な翼が生えてこないわ」
翼を作るには、良質なタンパク質が必要不可欠だ。レトはそう言って、また深いため息をついた。
確かに、スープだけでは栄養が偏ってしまう。肉を食べさせたい。しかし、まだ幼い雛にとって、固い肉は食べにくいのだろう。ならば、挽き肉のように柔らかくしてやればいい。湊は、日本でよく作っていた「鶏団子」をヒントに、新しい料理を考えることにした。
湊はまず、シチューにも使った「森ドリ」の胸肉を用意した。この肉は脂肪が少なく、柔らかいのが特徴だ。これを包丁で丁寧に、何度も叩いて粘りが出るまでミンチ状にする。フードプロセッサーなどないこの世界では、全てが手作業だ。しかし、この手間こそが、料理に心を込めるということだと湊は知っていた。
ミンチ状にした肉に、つなぎとして、この世界のパンを細かく砕いたパン粉と、栄養価の高い卵を一つ加える。味付けには、すりおろした香味野菜と、ほんの少しの塩だけ。それを、手でよくこね合わせた。肉の粒がなくなるまで、滑らかになるまで、丁寧に。
次に、この肉だねを、雛が一口で食べられるくらいの、小さなボール状に丸めていく。そして、それを沸騰したスープストックの中へ、そっと落としていく。肉団子は、スープの中でくるくると回りながら、ゆっくりと火が通っていく。表面が白く固まり、ぷかぷかと浮かんできたら、茹で上がった証拠だ。
これだけでも十分に美味しいのだが、湊はもうひと手間加えることにした。茹で上がったミートボールを、別のフライパンに移し、そこに、虹色ベリーを軽く煮詰めて作った、甘酸っぱいソースを絡めるのだ。照り焼きのような、艶やかな見た目。そして、甘酸っぱい香りが、子供の食欲をそそるに違いない。
「小さな翼のための、森ドリミートボール」の完成だ。
湊は、出来上がったミートボールを、小さな串に三つずつ刺して、レト親子の元へ運んだ。
「レトさん、これならどうでしょう。とても柔らかく煮てありますから」
雛は、目の前に出された、つやつやと輝く小さな肉団子を、興味深そうに見つめている。その鼻先を、甘酸っぱいベリーの香りがくすぐった。
雛は、小さな嘴で、ミートボールの端を、つん、と突いてみた。すると、驚くほど柔らかい感触。雛は、意を決したように、ミートボールを一つ、ぱくりと口に入れた。
もぐ、もぐ。
その瞬間、雛の目が、驚きで丸くなった。
なんて柔らかいんだろう。噛むと、ほろりと口の中で崩れ、肉の優しい旨味が溢れ出す。甘酸っぱいベリーのソースが、その味をさらに引き立てていた。今まで食べていた、固くて味のない餌とは、全く違う。
雛は、我を忘れたように、ミートボールを次々と頬張り始めた。母親が心配していたのが嘘のように、その食欲は旺盛だった。あっという間に串は空になり、雛は、もっとくれ、と言わんばかりに、母親の腕を翼でぱたぱたと叩いている。
「まあ……! こんなこと、初めて……」
レトは、我が子の変わりように、ただただ驚いていた。そして、その驚きは、やがて、深い感謝と喜びに変わっていく。彼女は、湊に向かって、何度も、何度も、深く頭を下げた。
その日から、雛は、湊の作るミートボールが大好きになった。毎日、陽だまり亭にやってきては、ミートボールをねだるのが日課となる。
湊の愛情がたっぷり詰まった小さな肉団子は、やがて、雛の体に、力強い翼を育んでいくことになる。それは、まだ誰も知らない、未来の物語だ。
「スープは飲んでくれるようになったの。でも、固形物は相変わらずで……。このままじゃ、丈夫な翼が生えてこないわ」
翼を作るには、良質なタンパク質が必要不可欠だ。レトはそう言って、また深いため息をついた。
確かに、スープだけでは栄養が偏ってしまう。肉を食べさせたい。しかし、まだ幼い雛にとって、固い肉は食べにくいのだろう。ならば、挽き肉のように柔らかくしてやればいい。湊は、日本でよく作っていた「鶏団子」をヒントに、新しい料理を考えることにした。
湊はまず、シチューにも使った「森ドリ」の胸肉を用意した。この肉は脂肪が少なく、柔らかいのが特徴だ。これを包丁で丁寧に、何度も叩いて粘りが出るまでミンチ状にする。フードプロセッサーなどないこの世界では、全てが手作業だ。しかし、この手間こそが、料理に心を込めるということだと湊は知っていた。
ミンチ状にした肉に、つなぎとして、この世界のパンを細かく砕いたパン粉と、栄養価の高い卵を一つ加える。味付けには、すりおろした香味野菜と、ほんの少しの塩だけ。それを、手でよくこね合わせた。肉の粒がなくなるまで、滑らかになるまで、丁寧に。
次に、この肉だねを、雛が一口で食べられるくらいの、小さなボール状に丸めていく。そして、それを沸騰したスープストックの中へ、そっと落としていく。肉団子は、スープの中でくるくると回りながら、ゆっくりと火が通っていく。表面が白く固まり、ぷかぷかと浮かんできたら、茹で上がった証拠だ。
これだけでも十分に美味しいのだが、湊はもうひと手間加えることにした。茹で上がったミートボールを、別のフライパンに移し、そこに、虹色ベリーを軽く煮詰めて作った、甘酸っぱいソースを絡めるのだ。照り焼きのような、艶やかな見た目。そして、甘酸っぱい香りが、子供の食欲をそそるに違いない。
「小さな翼のための、森ドリミートボール」の完成だ。
湊は、出来上がったミートボールを、小さな串に三つずつ刺して、レト親子の元へ運んだ。
「レトさん、これならどうでしょう。とても柔らかく煮てありますから」
雛は、目の前に出された、つやつやと輝く小さな肉団子を、興味深そうに見つめている。その鼻先を、甘酸っぱいベリーの香りがくすぐった。
雛は、小さな嘴で、ミートボールの端を、つん、と突いてみた。すると、驚くほど柔らかい感触。雛は、意を決したように、ミートボールを一つ、ぱくりと口に入れた。
もぐ、もぐ。
その瞬間、雛の目が、驚きで丸くなった。
なんて柔らかいんだろう。噛むと、ほろりと口の中で崩れ、肉の優しい旨味が溢れ出す。甘酸っぱいベリーのソースが、その味をさらに引き立てていた。今まで食べていた、固くて味のない餌とは、全く違う。
雛は、我を忘れたように、ミートボールを次々と頬張り始めた。母親が心配していたのが嘘のように、その食欲は旺盛だった。あっという間に串は空になり、雛は、もっとくれ、と言わんばかりに、母親の腕を翼でぱたぱたと叩いている。
「まあ……! こんなこと、初めて……」
レトは、我が子の変わりように、ただただ驚いていた。そして、その驚きは、やがて、深い感謝と喜びに変わっていく。彼女は、湊に向かって、何度も、何度も、深く頭を下げた。
その日から、雛は、湊の作るミートボールが大好きになった。毎日、陽だまり亭にやってきては、ミートボールをねだるのが日課となる。
湊の愛情がたっぷり詰まった小さな肉団子は、やがて、雛の体に、力強い翼を育んでいくことになる。それは、まだ誰も知らない、未来の物語だ。
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